表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
武道大会編
77/230

第74話 決勝戦前日の夜

武道大会会場を出て宿に戻る途中、殆んどの街の住民から拍手や声援で迎えられたが一部の住人からは親の仇を思わせる、恨みが篭った視線で向けられた。


(たぶんタルカスとフィンケルに賭けた奴らだな? 幾ら賭けたかは知らないけど・・・)


俺は恨みの目を気にしないように宿屋へと戻ると、酒場に集まっていた常連達に歓喜の声で迎えられた。


「おぅ兄ちゃん、決勝戦進出だってな! 期待してるぞ!!」


俺が酒場で顔を見回すと、1人だけ顔を青痰で腫らしているオジさんが目に入った。


「その顔は如何したんですか!? まさか喧嘩?」

「ちょっとな。 言うに已まれぬ事情って奴だ。イテテテテテ」

「そいつは生活資金を全額、兄ちゃんに賭けた事がバレて奥さんにやられたのさ」

「おい! それは言わないって約束しただろうが!」

「そうだったか? 憶えてねえや。ハッハッハ!!」


酒場に居る常連達は既に酔っ払っているらしく、笑いが途絶える事はなかった。

俺は酒場を通り過ぎ、宿屋のほうに向かうとせっせと働いているレイシアが目に入った。


「あ、ミコトさん!決勝進出おめでとうございます。 腕によりをかけて力のつく晩御飯を作りますので楽しみに待っててくださいね」


レイシアに挨拶を済ませると、ルゥに聞きたいことがあるので急ぎ足で自室へと向かった。

自分の部屋に辿りつくと同時にルゥと念話で会話をし始めた。


(ルゥ、確かめたい事があるんだが構わないか?)

(如何したんですかマスター? 私に答えられる事なら、何でも聞いてください)

(ルゥも俺の中で見ていたと思うが準決勝第1試合の戦いでレイモンドの攻撃で黒騎士の剣が砕かれただろ? ルゥの場合でも考えられると思うか?)

(一般的な剣では砕く事なんて不可能に近い事ですが、達人級の剣士が相手だと考えられますね)

(そうか・・・。 如何すればいいんだ?俺はこんな形でルゥを失いたくはないぞ)

(ありがとうございます。 マスター、砕かれるのを回避する方法は無い訳ではありません)

(如何いうことだ!? 勿体ぶらずに教えてくれ!)

(分かりました。 少し難易度が高い方法なんですがマスターならたぶん大丈夫でしょう)


ルゥは一旦おいて、その方法を口にした。


(それではマスター、潜在魔力を魔法という形で放出せずに掌に溜めるようにしてください。 魔力に覚醒するために行なった訓練を思い出していただければ宜しいです)


俺は言われたとおり訓練を思い出すようにして傷を治療する感覚で魔力を掌へと集中した。


(まさか1回で成功させるとは・・・流石ですね。 それでは掌の魔力を維持したまま剣を握り魔力を剣に流し込むようにしてください)

(魔力を剣に流し込む?)


綿菓子を作るようなイメージで剣を割り箸に、魔力を綿に換算して纏めてみると・・・。


(マスター、上手ですね。 これなら剣を砕かれる心配はありません)

(こんなもので構わないのか?)

(はい、マスターの剣に纏わせる魔力量によって、剣の威力も強度も此れまでの何十倍も強化されましたので折れる心配はほぼ100%ありえなくなりました。 それに慣れてくれば風属性の魔力や火属性の魔力を纏うことによって魔法剣として扱う事も出来ますから、かなり有利になりますよ)


剣に纏わせていた魔力を解除すると剣を元の鞘へと戻した。


(剣に魔力を纏わせる行為は最上級の難易度があるはずなんですが、簡単にこなしてしまいましたね)

(そんなに難しい事なのか?)

(習得するためには魔力の潜在値が多いことが必要不可欠なのですが、常に魔力を流していなければなりませんので一般の魔術師だと直ぐに魔力切れを起こしてしまいます。 マスターの場合は魔力の底が見えませんから仮に1日中、魔力を纏っていても大丈夫でしょう)

(なんか、俺ってますます人外になって行くような・・・)

(マスターは元々、人ではありませんから大丈夫ですよ)

(貶されている様な、そうでない様な複雑な気分だ)

(それに改めてマスターの魔力を測ってみましたが、1%たりとも魔力が減っていませんから1日中と言わず常時纏っていても大丈夫ですね)


ルゥと先程の事で会話していると、トントンと部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。


「ミコトさん、起きていますか? 御夕食の準備が整いましたので降りてきてください」

「分かりました。今行きます」


俺はその後、優勝の前祝とも取れる大量の食事で英気を養い、もう一つ試したいことがあり足早に部屋に戻ってきた。

試したいこととは準決勝第二試合が開始される前にフィンケルに聞いた、風の魔力を纏って空中に浮かぶ方法である。

先程の剣に魔力を纏わせることの応用で会得できないかと思っていたのだが宿屋の部屋では狭すぎて練習を行なえないので何時もの様に亜空間内で練習することにした。


「此処なら外界とは遮断されるし周囲に迷惑が掛からないだろう。 それに鍛錬の邪魔をする風などの大気もないから、より早く会得できるような気もするし」


そう言って実際に試してみたのだが、やはり聞くことと実践する事は全然違い何の成果も挙げられないまま、ルゥからの『翌日に支障が出るから』という苦言で修行は取りやめになり楽しみにしていた空中浮遊は延期となってしまった・・・。


そして数時間後、待ちにまった武道大会決勝戦が幕を開ける。


いよいよ次で武道大会編は終了です。


武道大会終了後、数話を挟んで次の異世界へ旅立ちます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ