第69話 本戦に進む8人の猛者
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昨日の強盗騒ぎが街で話題となっているが、そんな事など関係なしに武道大会の本戦の開催となった。
宿屋にて起床後、朝食を済ませた俺は装備を整えると城の入口へと足を運び受付の兵士に話しかけようとすると其処には今まさに鬼気迫る表情をしている剣士や魔術師が其処で受付をしていた。
「おっ?お主も予選を通過したのか。人は見かけによらないものじゃの」
俺も列に並んで順番を待っていると、予選の時にも話しかけて来た爺さんから話し掛けられた。
「貴方も無事に予選を抜けられたみたいですね。」
「運が良かったのじゃよ。そうでなければ、こんな年寄りが本戦に進めるわけがなかろう?」
「またまた、ご謙遜を・・・。」
目の前の爺さんと話をしながら受付のほうを見てみると、予選の時と同じ様に参加証を騎士に見せて箱の中から数字の書かれたカードを引いているようだった。
丁度見ていると、全身真っ黒な鎧を着込んだ人物が『3』と書かれたカードを騎士に見せていた。
「それでは、次の方どうぞ~~~」
「おおっ!我の番じゃな。えっと・・・参加証は何処に仕舞ったっけの?」
爺さんは慌てたように服のポケットから靴の中からと、至るところを探し回っている。
(おいおい、いくらなんでも靴の中にはないだろう・・・。)
「おおっ、あったあったこれじゃ!!」
「はい。確認しました、それでは箱の中からカードをお引き下さい。といっても1番か7番しか残されていませんが」
「ほう、どれどれ・・・。」
目の前に居る爺さんが箱の中から手を引き抜くと、其処には『1』という数字が書かれていた。
「レイモンド様、1番ですね。 第1試合ですので準備をお願いいたします。」
はて?レイモンド?何処かで聞いたような気がするが、何処だったっけ?
「それでは、次の方どうぞ!」
「あっ、はい」
「参加証を見せてください。」
「はい。これです」
俺は大切に仕舞っておいた参加証を受付の騎士に手渡した。
「確認しました。ミコト様は最後ですので自動的に7番になります。第4試合ですのでお待ち下さい」
「分かりました。」
俺は7番のカードを持ちながら城の中へと入っていくと廊下の一番奥に『本戦控え室』と書かれた扉が目に入った。
「ここが控え室か・・・。」
そっと扉を開けて中に入ると先程の爺さんや壁に寄りかかって両腕を前で組んでいる黒騎士、胡坐をかいて瞑想している魔術師の姿があった。 控え室に入ると同時に爺さんが話し掛けてきた。
「お主は残り物じゃったから7番だったな。 対戦を楽しみにしておるぞ!」
「貴方との対戦って決勝戦のことじゃないですか!」
「何故か勝ち進んでくるような気がしての。」
「大胆な発言ですね。」
ふと見ると壁際で腕を組んでいた黒騎士が真っ直ぐに爺さんの方を向いていた。
黒騎士は剣も鎧も真っ黒でフルアーマーな上にフルフェイスな防具を付けているので、男か女かも当然の如く分からないし、視線も何処を見ているのか分からなかったが何故か視線を感じた。
「其処の黒騎士、何処を見ている? 貴様の相手はこの俺だぜ?」
黒騎士はチラッと話しかけて来た男を見たが、興味がなさそうに元通り、壁を背に佇んでいた。
「ちっ、不気味な野郎だな・・・。なんとか言ったらどうなんだ!?」
今にも襲い掛からんとする中で闘技舞台のほうから声が聞こえてきた。
「それでは只今より武道大会本戦第1試合を始めたいと思います!!」
「「「「「「「「ワアァァァァァァァァ!!!!!!!!」」」」」」」」
開始を宣言する声とともに観客席から盛大な拍手と歓声が聞こえてきた。
「それでは予選を勝ち残った8人の強者達の入場です。 皆様、盛大な拍手でお迎え下さい!!」
司会の声と同時に控え室から舞台へと続く扉が解放され次々と外へ出て行った。
「まずは前回・前々回の優勝者でもある、皆様ご存知の近衛隊名誉顧問レイモンド様!! 齢70を超える御高齢でありながら予選で剣を抜く事もなく秒殺で突破いたしました」
あの爺さんが盛大な拍手と歓声を浴びながら舞台中央へと足を進めていく・・・。
そうか、爺さんが酒場で噂になっていた前回の覇者であるレイモンドだったのか。
「続きまして、騎士隊見習いのバルック殿の登場です!!此方は危なげな場面が予選開始から多々ありましたが、運も味方してか無傷で決勝に勝ち進む事が出来ました」
身体にサイズがあっていない鎧を着込んだ少年が歓声を浴びながら舞台に歩いていくが・・・
『ズベシャッ!!』
舞台に続く階段で蹴躓いて石の舞台に顔面を強打し、拍手とともに湧き上がる盛大な歓声が瞬時に笑い声と心配する声へと変化した。
「思わぬハプニングがありましたが、続きまして謎の黒騎士の登場です。その全身を覆う鎧とは裏腹に俊敏な動きで相手を翻弄し、対戦相手ほぼ全ての武器を砕いての勝利となりました」
黒騎士は不気味な佇まいからガシャガシャと足音を立てながら舞台へと登っていった。
そのあまりの不気味さに観客は歓声を上げることなく静まり返っている。
「え、えー、続いて数少ないギルドランクS級であるガルザード殿の入場です。 ガルザード殿の二つ名は『破壊神』であり、その名の通り一切の手加減をせずに予選の対戦相手を叩きのめす試合でした」
先程、黒騎士に喧嘩腰になっていた男が大鉄鎚を頭上に抱え『ウオォォォォオオオーーー!!』と意味不明な言葉を叫びながら舞台に上がって行った
「続いて予選を秒殺・・・いえ瞬殺で突破したギルドランクA級魔術師のログナート殿の入場です! 予選では開始早々周りにいる全ての選手を強力な風で場外に吹き飛ばし勝利を収めました」
ログナートは風の魔法で自分の身体を浮き上がらせると音もなく静かに舞台へと飛んで行った。
(へぇ~風の魔法にあんな使い道があるんだな)
(マスターも後で試して見ましょうか?)
(そうだな、少しは旅が楽になるかもな)
「続いて近衛魔術師隊所属のフィンケル殿の入場です。 此方は慎重に慎重を重ねた戦い方で惚れ惚れするような戦いを見せてくれました!」
先程まで瞑想していた魔術師も胡坐をかいた状態のまま、先程のログナートと同じ様に飛んでいった。
という事は2人とも風の魔術師ってことか。
「さて次は俺だな?度肝を抜いた登場にしてやりたいが」
「続いては旅の剣士ミコト殿の入場です。 最後の最後で予選とは思えぬ激闘を見せてくれました」
司会はこう言っているが、果たして完膚なきまで叩きのめしたアレが激闘と言えるのだろうか・・・。
色々と考えながらも俺は颯爽と舞台への道を歩き、階段を使わずにジャンプして舞台に上がった。
高さにして3mの高さをひとっ飛びした俺に、観客や他の選手から奇異の目が向けられる。
「それでは最後に騎士隊隊長タルカス殿の入場です! 前回はあと一歩で優勝を逃してしまいましたが、今回も頑張って頂きたいものです」
爺さんに次ぐ盛大な歓声をBGMに余程自信があるのか、左胸だけをガードする胸当てを身に着け、槍を構えた隻眼の男が舞台に上がってきた。
「それでは此処に居る8人の戦士による武道大会本戦を此処に開幕いたします!!!」
最後に盛大な歓声と拍手を浴びながら俺達8人は舞台を降り、舞台の壁際に設置してある8箇所の椅子へと腰をおろした。
その中で騎士見習いのバルックだけは落ち着かない様子で立ったり座ったりを繰り返していたが、爺さんから檄が飛ばされていた。
「しっかりせんか!オヌシが此処まで来られたのは間違いなく実力があっての事じゃ!! 胸を張って、シャキっとしろシャキっと!!」
「は、はい!!」
いよいよ始まる世紀の一戦に、誰もが固唾を呑んで開始の合図を待っていた・・・。
ミコトを除く7人の設定を如何するか最後まで悩みましたが、なんとか形にすることが出来ました。
次話は順調に行けば3日、遅くても5日以内には更新しようと思っております。