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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
武道大会編
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第65話 武道大会予選

昨日は主に光の精霊・・・いやミラの御蔭で騒がしい夜になったが無事(?)に武道大会の朝を迎えられた。 ちなみに大騒ぎになったミラはというと、未だに応答が途絶えたままだった。


「あ、ミコトさん!おはようございます。

 今日から武道大会ですね。宿の仕事があって応援には行けませんが、頑張ってください。」

「ああ、ありがとう。1日目は何をするか、分からないんだけどね」


宿屋の看板娘であるレイシアと会話していると、酒場の厨房辺りから野太い声が響き渡ってきた。


「お~いレイシア、料理上がったぞーーー!!」

「は~い、今行きま~す!!それじゃあミコトさん、お気をつけて!」


俺は適当に酒場で朝飯を食べている客達に挨拶を済ませ、少し早いが大会受付の城の入口へと向かった。

2日前に大会出場受付をした場所は開始まで1時間近くはあるというのに既に沢山の剣士や魔術師で溢れかえっていた。 

不測の事態に備えてか青い鎧を着込んだ複数の騎士と思われる者達が人込みに目を光らせていた。


「お主も大会参加者か? 皆、ピリピリしておるからのぉ・・・。下手に話しかけないほうが身のためじゃぞ?」


俺が最後尾と思われる場所に並ぶと俺の前に居た初老の男性が話しかけて来た。

背の高さは俺と変わらないが、身体の大きさ、剣の大きさも俺の1.5倍はありそうな巨漢だった。


「あの、貴方は?」

「我か?我は少し寝坊した、ただの爺じゃよ。」


如何考えても、ただならぬ気配を持った歴戦のつわものといった感じなのだが・・・。

そう考えていると、予定よりも早いが大混乱になると予想したのか大会の受付が始まろうとしていた。


「只今より、大会の受付を致します。 参加する剣士、魔術師の方々は参加証を持って此方にお並びください。 順々に予選分けのクジを引いていってもらいます。」

「予定した時間より30分も早いのう。 市民の安全を考えての事だと思うのじゃが、混乱を招かねば良いのだが」

「混乱ですか?」

「うむ、例えば一番先頭に居る者と次に入る者とで、諍いがないとも言い切れぬしな・・・。」

「確かに考えられる事ですね、騎士の方々も配備されてるでしょうし考えすぎなら良いのですが。」

「お主も、我と同じ考えの様だの?」

「そうみたいですね。」


前にいる御爺さんと話をしながら順番を待っていると、受付開始から3時間が経過してやっと俺の順番まで残り3人という事になっていた。


「はい、参加証をお返しいたします。 それでは箱の中からクジを1枚引いてください」

「此れでいいのか?」

「『C』ですね。 城内へと入り、第2控え室と書いてある場所にお入り下さい。では、次の方どうぞ。」


受付を担当する騎士に呼ばれ、俺の前に居る爺さんが前に出ると途端に騎士の表情に変化が現れた。

「え、えっと受付をしますので・・・。いや、しますから参加証をお見せ下さい」

「固くならなくとも良い、我は武道大会の一参加者じゃ。 普段どおりの仕事をせい!!」


この爺さんは城の関係者か何かだろうか・・・。騎士の表情から見ると、絶対に一般人ではなさそうだな。


「失礼しました!参加証はお返しいたします。 クジをお引き下さい」

「うむ。 『H』か、第4控え室でよいのかのぅ?」

「はい、其方にお願いします。では次の方どうぞ・・・。」


やっと俺の番が来た。


「それでは、参加証を見せてください。」

「はい。」

「えっと、確認しました。では此方の箱の中に手を入れてクジをお引き下さい。」


俺は受付の横に置いてある木製の箱の中へ手を突っ込むと最初に手に当たったクジを手に取り、そのまま引き抜いた。


「『A』ですね、第1控え室に入ってください。全参加者の受付後、開会式終了後の第1試合になりますので用意をしてお待ち下さい。」

「分かりました。このクジは如何したら良いんですか?」

「控え室にて入室時に必要になりますので、失くさないようにしてください。 では次の方どうぞ」


受付を後にして城の中へ入っていくと、所々に騎士が並び厳戒態勢を整えていた。

騎士から目を離し奥のほうへと歩いていくと第1、第2、第3、第4控え室と書かれた板が置いてある4つの各部屋の前に、受付と書かれた看板を手に持っている騎士が疲れたような表情で立っていた。


「えっと、第1控え室だから此処だな。」


控え室に入ろうとすると、受付の看板を持つ騎士に止められた。


「控え室に入る前に入口受付で引いたクジを見せてください。」

「はい、これです。」


洋服のポケットに仕舞ってあったクジを騎士に手渡すと・・・。


「確認しました。 このまま進み、分岐点では左に進んでください。」

「わかりました。」


俺は騎士に一礼すると、前へと進んで歩いていった。

途中の分岐点には左の矢印にAの文字と右の矢印にBの文字が描かれていた。


「Aだからコッチだな。」


分岐点を左に曲がって進んでいくと、広い部屋へと辿りついた。


「此処がAの控え室で間違いないようだな。」


見ると、壁には大きく“A”の文字が描かれていた。

部屋に入った瞬間に背中に大きな斧を背負った大男に話し掛けられた。


「お前もAのクジを引いた剣士か、此れなら俺の予選突破は確実だな。」

「勝負は身体の大きさで決まるものではない! 生半可な考えは捨てる事だな。」

「なんだと!? この野郎!もういっぺん言ってみろ!!」

「聞こえなかったのか? 図体ばかり大きくて中身は空っぽの様だな。」

「て、てめえ!? 試合が始まったら真っ先に殺してやる!!」

「大会の規則も憶えていないほど馬鹿なのか? 俺を殺せばお前も失格になるぞ?」

「グヌヌヌゥゥゥ・・・! 武道大会終了後に何処に居ようとお前を見つけ出して、必ず殺してやる!」

「楽しみにしてるぞ、まぁ無理だと思うがな。」


頭から湯気が出そうなほど怒り捲くっている大男を尻目に奥へと歩いていくと、次にレイピアを手にしている男に話し掛けられた。


「先程のやり取りを見ていましたよ? 冷静さを欠いた所であの大男の負けは決まったような物ですね。」

「まだ分かりませんよ? 死に物狂いで向かってくるかもしれませんし」


あの短気な馬鹿男ならありえるな・・・。


「殺してしまったら負けですが、それ以外なら何をしても良いのですから注意しないといけませんね。」

「自分的にはあっさりと場外負けになってくれることを願っていますが。」

「そうですね。 おっ、開会式がいよいよ始まりますよ」


外に耳を向けると盛大な喇叭ラッパの音が鳴り始めていた。

これが終わればいよいよ、武道大会の幕が開く・・・。



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