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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
武道大会編
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第64話 精霊の名

大会を翌日に控え昼近くに起き、朝食(昼食?)を食べた俺は部屋へと戻り精霊と会話することにした。

光の宝玉が埋め込まれている腕輪に意識を集中させて、ルゥと交えての会話をする。


(なぁ光の精霊、武道大会とか通行止めなどの色々な理由で火の精霊に会いに行くのが遅れるが構わないだろうか?)

(・・・・・・・・・)

(光の精霊?)

(光の精霊様? どうかなさったんですか?)

(・・・ズルイです。)


何故か光の精霊は機嫌が悪くなっているようだった。


(どうしたんだ?)

(だって・・・ルゥ殿とは頻繁に話しをされてるのに私には、こういう時にしかお呼びが掛からないのですから)


そういえば、そうだったな・・・。

光の精霊に話すのは約1年ぶりだし、界渡りの時しか話しかけてないからな。


(それにルゥ殿だけ名前がもらえて、何で私だけ貰えないのですか!?)

((えっ??))


この光の精霊の発言には俺もルゥも目が点になるようだった。


(名前が欲しいのか?)


(はい! 主様に私にあった名を付けて頂きたいのです。)

(光の精霊は精霊の中でも最上級の階級を持っているんだろ? 俺が名付けて失礼に当たらないのか?)

(失礼なんてとんでもない! 主様は私など手も届かないほど上の立場の御人ですよ!?)


そういえばマルベリアにいた時に光の精霊は俺の事を“神の後継者”って言ってたっけ・・・。


(そういう事なら考えとくから、今は俺の質問に答えてくれるか?)

(絶対ですよ!? ・・・えっと、質問は火の精霊に会いに行くのが遅れるということでしたね。 簡潔に言いますと、問題ありません。 私達精霊は人間とは違い、半永久的な寿命がありますから会いに行くのが例え100年後だったとしても、精霊からしてみれば些細な時間にすぎませんから)

(そ、そうか・・・。)

(それにしても、主様が大会に出るのは反則的な気がしますね。)

(あ、私もそう思います。マスターは不死身な上に体力も無限な反則な方ですものね。)

(2人して一体、何なんだ?)

(だって、そうですよね大会ルールは場外に落ちるか戦意喪失で勝ちが決まりますよね?)

(主様は場外に落ちる事だけを注意してくだされば、どれだけ切り付けられようと関係ないのですから)

(そうは言うが斬りつけられて傷が残らないのは不自然だから、避けるつもりではいるが・・・。)

((当然です!!))


それはさて置き、あっさりと話し合いは終わってしまったな。

光の精霊に名前も考えてやらないといけないし。

精霊との会話を中断し目を開くと、然程時間が経っていないと思われたが外は夕焼けに包まれていた。


「もうこんな時間か・・・。体感時間では数十分だと思ったんだがなぁ~~」

(マスターが起きたのは昼過ぎでしたから、時間にして此れぐらいですよ?)

(そうか。それにしても光の精霊があんな事を言うとは、思いもよらなかったな)

(私も驚きです。 光の精霊様は私達、下級精霊や火や風の精霊様方、上級精霊を束ねる御方ですからね)

(名前か・・・。どんなのがいいかな)


必死に良い名前を考えていると、腹の虫が泣き始めていた。


(とりあえず腹も減ったし、晩飯を食いながら考えるか)

(朝食を食べてから4時間ぐらいしか経過していませんよ? どんな胃をしているのですか?本当に解剖してみましょうか)


ルゥと適当に相槌をかまし、食事をするために酒場へと向かうとレイシアと目が合った。


「ミコトさん、やっと降りてこられたんですね」

「ちょ、ちょっと明日の大会本番のために精神を集中していてね・・・。」

「そうなんですか! 明日は頑張ってくださいね。宿屋関係者一同、ミコトさんを応援していますから」

「はははは・・・・。 頑張るよ」

「明日に備えて特別に御馳走を用意いたしましたから、思う存分食べてください」

「兄ちゃん頑張れよ! 俺らも兄ちゃんに賭けるからよ!!」

「賭け?」

「はい、毎年武道大会では選手が8人に絞られた瞬間から賭けの対象になるんです。 

 各選手の今までの経歴から倍率が決められ、無名な選手ほど倍率が高く設定されます。」

「それじゃあ最終的に残る8人は、強力な相手ばっかりって事になるのか?」


精霊が言ったとおり、場外負けだけを頭に入れておけばいいかな。


「毎回、8人のうちの4人は騎士関係者になっていますね。」

「そういや、前回の覇者は元近衛騎士団長で名誉顧問のレイモンド様だったよな。」

「そうそう、誰も一撃すら与えられずに敗れていったしな・・・。」

「怖い事言わないで下さいよ~~~」

「まぁ気にすんな! 勝負は時の運だし、レイモンド様も結構な歳だから出場しないかも知れないしな。」

「余計気になりますよ。」

「違げえねえ!!」


その後、優勝の前祝いのような豪勢な食事を楽しみ、数十分後に部屋へと戻ってきた。

ちなみに光の精霊の名前を適当に思いついた“ミラ”という名前を名付けてやったのだが、その後が大騒ぎになってしまった。


(ミラですか!? 主様、ありがとうございます!!)


光の精霊ミラから歓喜の声が上がった直後、幾ら呼びかけようと応答が無い位に大騒ぎになってしまった


「たかが名前なんかで大袈裟な・・・。」

(『たかが』ではありませんよ?マスターは神様に最も近い存在なんですよ、その神様から名前を頂けるという行為がどれほどの物か。私も身体があったら飛び回っているところですよ!)

(まだ神様なんて実感、無いんだけどな。)


この名付け行為が後日、精霊の会話で混乱の元になることなど、この時の俺は思いも寄らない事だった。



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