第63話 武道大会参加
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肉串と宿代が間違えていたので訂正いたしました。
街の大きさに圧倒されながらも街に足を踏み入れると、王都というだけあって活気に溢れていた。
「お~い、其処に居る兄ちゃん肉串喰わねえか、肉串! 今なら5本で20リルだよーーー!!」
「おっ美味そうだね。 貰うよ」
「へへっ、まいど。 安いが味には自信があるからな、ゆっくり味わって喰ってくれ!」
俺は上半身裸という屋台の親仁から串に刺さったサイコロ状の肉に齧りつくと、その美味さに絶叫した。
「これは美味いな! 親仁、あと10本追加だ!」
「まいどあり!」
俺は延々と食べながら、屋台の親仁と会話していた。
「兄ちゃん旅人には見えねえが、何処からきたんだい?」
「俺は・・・モグモグモグ、魔法学園からきたんだ。」
「ほう、魔法学園からかい。それなら兄ちゃんは魔術師かい?」
「いや違うな。俺は剣も使えるから言うなれば魔法剣士だな」
「魔法剣士ねぇ~。やっぱり此処に来た理由は国への仕官が目的かい?」
屋台の親仁はよっぽど世間話が好きなのか、肉串を手際よく焼きながら口だけで俺と会話している。
「おっと悪いな、込み入った事まで聞いちまって・・・。」
「構わないよ。俺は仕官をする気は全く無いさ、少し足止めを食ってしまって立ち往生してるだけさ。」
「立ち往生ねぇ~~ほら、次焼けたよ。」
「おっ?美味そうだな頂くよ」
結局、親仁と話をしている間に合計50本もの串を喰ってしまい、日が暮れようとしていた。
串を食べている最中、何故か城のある方向へと何人もの剣士や魔術師が歩いていき、数分後には来た道を戻ってくるという意味深な行動が目に入っていた。
「もうこんな時間か・・・。親仁さん、この街で美味い食事を出す宿屋に心当たりはないか?」
売り物の串ほぼ全てを俺1人によって食い尽くされ、いそいそと店じまいを始めている屋台の親仁に話しかけた。
「この辺りにある美味い食事を出す宿か、それなら城の入口近くに宿屋を構えるミディルの酒場兼宿屋が良いんじゃないか?」
「ミディル?」
「誰にでも愛想が良く、元気で可愛い看板娘が居るっていう、街で評判の宿屋さ。」
「とりあえず行ってみるよ。親仁さん、串美味しかったよ!ご馳走様。」
「また来ておくれよ!!」
俺は親仁さんと別れると城の方面へと向かって歩き出した。
「おっ?あれが屋台の親仁が言っていた宿屋だな?」
見てみると宿屋の横に立っている酒場からは美味そうな匂いと入りきれない大勢の人が溢れていた。
「あれだけ繁盛しているのは看板娘の存在と料理の美味さが物語っているからだろうな・・・。」
(マスター、宿も良いのですが騎士から借りた方位石を返しに行かなくても良いのですか?)
(あ!そうだった・・・。串に夢中になってすっかり忘れてたよ。)
思い出したかのように服のポケットに入れたままになっていた方位石を取り出すと、宿屋を通り過ぎて城へと向かって歩いていった。
城へ着くと、山道で見たのと全く同じ色と形の鎧を着た騎士が門を警備していた。
「其処の者!!何者だ!?」
「すいません、実は荒野で道に迷った時に此方の騎士の方に助けてもらいまして、その時に方位石なる物をお借りして返しに来たのですが・・・。」
「そうだったのか。方位石は俺が責任を持って預かろう」
「はい、これです。」
そう言いながら俺は手に握っていた方位石を目の前の騎士へと手渡した。
「ふむ、間違いなく騎士隊専用の方位石だな。」
「それでは俺はこれにて失礼します。」
俺は踵をかえし、今度こそ宿屋に行き美味い食事に有り付けると思いながら歩き出そうとすると、先程の門を警備する騎士に話しかけられた。
「君は見た感じ剣士のようだが、武道大会に興味はないかね?」
「武道・・・大会ですか?」
「大会参加の申し込み期日は今日の日没までなんだが、参加する気はないかと思ってね。」
俺は少し考えた後、火山道が通行できるようになるまでは暇だから参加する事にした。
「大会の規約はありますか?」
「えっと確か、武器は自由だけど対戦相手を殺したりしたら即失格で、相手の武器を壊すか戦意喪失させるか場外に突き落とすかをすると此方の勝利となる。」
なるほど剣でも魔法でも使って、場外に落としさえすれば此方の勝ちという訳か・・・。
「分かりました。参加要請をお願いいたします。」
「あ、そうそう参加費用として前金で500リル貰うけど構わないかな?代わりに優勝すれば5万リル、準優勝でも3万リルが贈られるから頑張って」
「分かりました。それでは500リル手渡しますのでお受け取り下さい。」
俺は腰に装着している道具袋から500リル取り出し、目の前にいる騎士へと手渡した。
「それじゃあ最後に参加者である君の名前を聞かせてくれるかな。
おっと、色々と面倒になるから家名は言わなくてもいいよ。」
「俺はミコトです。」
「えっと、・・・ミコトと。はい、これが参加証だよ。 言うのを忘れてたけど、大会参加者には特別に開催中は参加証を宿屋の受付に見せれば、宿代は無料という事になっているから」
「そうなんですか!?」
「それじゃあ武道大会は2日後の朝9時からだ。 遅れないようにね。」
「分かりました。では失礼します」
俺は思いがけずに宿代が無料になる証を手に入れ、スキップでもしそうな足取りで宿屋へと向かった。
「いらっしゃいませ~~ミディルの酒場へようこそ~お一人様ですか? 其方のテーブル席へどうぞ」
俺が宿屋へと辿りつくと屋台の親仁が言っていた看板娘だろうか・・・。
酔っ払いが数多く居る、酒場の雰囲気に合わないような少女が客引きをしていた。
「悪いけど酒場の客じゃないんだ。宿は空いてるかな?」
「あ、宿泊のお客様でしたか・・・。失礼しました!
宿代は1泊、朝晩2食の食事つきで1000リルになりますが宜しいでしょうか?」
「またしてもゴメン。 武道大会の参加証で宿代が無料になるって聞いたんだけど・・・」
「大会参加の方でしたか、大歓迎ですよ! お部屋に御案内致しますから此方にどうぞ」
「ありがとう。でも、なんで大歓迎なんだ?儲けにならないのに」
宿の奥へと歩いていく、看板娘のあとを歩きながら聞いてみると?
「参加者の方を泊める事によって国からお金が払われますし副業の酒場も賑わいますから、お客さんが大会を勝ち進める事で此方の儲けも増えるという事なんです」
「なるほどな・・・。」
「それでは此方がお部屋になります。申し遅れました、私はレイシアといいます。
武道大会終了までお世話をさせていただきますので、よろしくお願いしますね」
「ああ、ありがとう。」
「はい。 此れから忙しくなるぞーーー!」
レイシアは気合を入れながら宿屋のカウンターへと戻っていった。
「噂に違わぬ、元気な看板娘だな・・・。」
その日、色々な事があったせいか酷く疲れたせいで夕食を食べて直ぐに眠ってしまった。