第61話 国境に行く前に・・・
ユニークアクセスが30万人に到達しました!
御愛読ありがとうございます。
ユニークアクセス、PVアクセス数の伸びを励みにこれからも頑張っていきます。
さて火山に向かおうと警備の兵に道を聞いたのだが・・・。
「火山ですか? 此処からだと馬で休みなく飛ばしたとしても、5日はゆうに掛かりますよ?」
「5日・・・か」
「もし良ろしければ、馬をお貸ししましょうか?」
「いや、いいさ。 急ぎの用があるわけでもないし、ゆっくりと歩いて行くさ」
「歩きだと10日以上は掛かりますよ?」
「構わないから、どの方向に進めば良いかだけ教えてくれるか?」
「そうですか? それなら学園の門を背中にして左手の方向へ只管歩き続ければ着きます」
「分かった。ありがとう」
「気休めかもしれませんが、お気をつけて」
俺は手を振って兵士に礼をいうと教えてもらった方角に足を進めた。
その頃、道を教えてくれた兵はというと・・・。
「ああは言ったけど、如何考えても長距離を歩くには服装が軽微過ぎるだろ。 命知らずなのか余程の馬鹿なのか。 どちらにしても荒野にいる魔物の餌食になることは間違いないな」
警備の兵にそんな事を言われている事など露ほども知らない俺は魔法学園の門から肉眼でギリギリ見えるかどうかの位置まで足を進めていた。
「兵士の心配も分かる気がするが、俺の走る速度は馬以上だし疲労感すら感じることもない。 馬なんて邪魔になるだけだ」
(マスターの身体能力が異常すぎるだけなんですよ! 一般の人から見たら命知らずも良いとこですよ?)
(でもなぁ・・・。火山に行って精霊とあって、別の世界に飛ぶ前に馬を返しに来なければならないだろ?面倒じゃないか)
(それは確かにそうなんですが今頃はさっきの兵士の方、荒野に死体が1体増えたと思ってるかもしれませんよ?)
(大丈夫だよ、俺は不死身なんだから。 おっ?そろそろ走っても良いんじゃないか?)
(そうですね。 人間の視力では見えないほどの距離まで歩きましたし、周囲に人の気配も感じられませんから、大丈夫だと思います)
(じゃあ行くか! 目標は5時間だ)
(さすがにそれは無理だと思いますが・・・。)
ルゥとの会話を打ち切ると、俺は火山に向かって全速力で走り続けた。
途中で何かを轢いた様な気もしたが、ルゥからは人の気配はしなかったという事で気にしない事にした。
馬が走る速度の十数倍のような速度で荒野を走っていたのだが、不意にルゥから『巨大な魔物の気配がする』と言われ荒野の真ん中で立ち止まった。
(マスター、何やら強力な魔物の気配がマスターの事を狙っているかのように近づいてきています)
(本当なら無視して走っても良いんだが腹が減ってきたからな、飯にするとしよう)
(もしかして・・・、食材は魔物ですか!?)
(此処最近は少量の果物や肉ばかりだったからな、久しぶりに大量の肉が食える)
(はぁ、凶暴な魔物とはいえマスターに掛かればただの食材ですか・・・)
俺は口元の涎を腕で拭いながら剣を構えて魔物を待ち構えると遙か前方から土煙と一緒に巨大な何かが突進してきた。
「おっ?ようやく到着したみたいだな、俺の昼飯」
改めて見てみると土煙を上げながら突進してきた魔物は牛のような角に獅子のような身体、6本の足を持つ全長5メートル近くもある魔獣だった。
「う~ん、あんまり美味そうにはみえないな・・・。」
魔物はそう思われている事など露知らず、前足(?)で俺を横薙ぎにしようとしてきた。
『ズバッ!!』
俺は前足をあえてギリギリで交わしながら剣を振るい、前足を斬り飛ばした。
「まずは1本!!」
魔物も咄嗟の事で訳が分からないような顔をしていたが、攻撃を繰り出した前足が胴体の付け根からなくなっていることに気づくと暴れ始めた。
「ギャオオオオゥゥゥ!!?」
「遅せえよ!」
俺は襲うつもりが逆に襲われて、混乱して暴れまわる魔獣に剣を構えて飛び掛った。
一瞬のうちに剣で切り刻み、残りの5本の足を全て足の付け根から切り離した。
当然6本の足、全てを切り離された魔物は達磨状態となって胴体から地面に落下する。
「このまま放っておいても出血多量で死んでしまうとは思うが、情けだ楽にしてやろう。」
剣を構えながら魔物の頭に近づき、脳天に剣を突き刺すと先程まで咆哮を上げていた魔物が物言わずに静かに地面に横たわっていた。
「さ~て、運動して腹が減ったからな。 昼飯にするとしようか」
俺は先程斬り飛ばした俺の身体の少なくても5倍はありそうな足に近づき、火の魔法で焼き始めた。
「血も滴るステーキとは良く言うが、実際に見ると気分が悪くなるな・・・。 此処はやっぱり、生焼けにはせずに確りと中まで火が通ったウェルダン風にしよう」
火加減(?)に注意しながら焼き続ける事、凡そ30分。外は真っ黒焦げだが、剣を包丁代わりにして肉を切り開くと、中から程よく蒸し焼きにされた肉汁たっぷりな桃色の肉が姿を現せた。
「おっ?我ながら良い焼き具合だな。それじゃ頂きま~す!」
(・・・マスター、味はどうですか?)
(香辛料は何一つ使っていないはずなんだが、口に残るピリッとした酸味と焼きすぎによる香ばしさが、何ともいえないハーモニーを呼び起こしているな。)
(憶測ですが、マスターの言うピリッとした酸味というのは魔物の血液に流れる毒だと思います。 マスターは不死身なので大丈夫ですが、普通の人が食べた場合は一口目で確実にあの世行きです)
(まぁ、毒だろうが何だろうが美味いものには変わりないからな。 次の足に行ってみよう)
(まだ食べるんですか!?)
(当然だ。俺の胃はまだ八分目にも達していないぞ?)
(本当にマスターの身体の何処に、あれほどの質量が消えていくのか・・・一度解剖してお腹の中を見てみたいです)
(それは無理だな。 切ったそばから再生してしまうしな)
(マスター、例え話に相槌を打たないで下さい)
ルゥと冗談話に華を咲かせながら瞬く間に4本の足を食べつくし、食休みをしたあと火山へと足を進めた。
余談だが、食べ残した2本の足や魔物の胴体を別の魔物が啄ばみ、魔物の大量死が確認されたのは別の話だ。