表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
火の精霊編
63/230

第60話 魔法学園卒業

お待たせ致しました。

水晶を魔力のみで砕くという卒業試験がいよいよ開始された。

目の前に置かれているのは俺の髪や眼よりも深い漆黒の水晶・・・様子見でクラス10の魔力をぶつけてみたがビクともしなかった。


(これは厄介だな。クラス30ではどうだ?)

(マスターあまり強くしすぎますと面倒なことに・・・)

(ああ分かってる。必要最小限の魔力で砕いて見せるさ)


魔力を先程よりも多く放出し、掌を同じ様に水晶に翳すと10秒も経過しないうちに縦一列に罅が入り左右に分かれると、水晶が其処に存在していなかったかのように水晶の破片が綺麗に消え失せた。

水晶の置いてあった場所を見ると、何かの紋章が描かれているメダルのような物が光っていた。


「卒業試験開始から10分も経過せずに1人目の合格者が出ましたね。 ミコト君、そのメダルは卒業の証です。 水晶が割れる事で中に入っている卒業メダルを取り出すことができます」

「これが卒業の証・・・」

「卒業おめでとうございます」

「ありがとうございました!」


試験が終了した生徒は教室に残っても、寮に帰っても良いそうだがルシアとマリアが心配なため此処に残る事にした。

理事長先生の話しによれば、落第者が毎年少なくても50人以上は出るとの事で卒業式は数年前から執り行われないそうだ。

色々と考えていると試験が開始されてから1時間が経過し次々と水晶が割れ、メダルを手にし歓喜する声が続々と聞こえだしていた。


ルシアもその1人で、いつもは感情を外に出さない彼女も今回ばかりは嬉し涙を流しているようだった。

これで残るはマリアを含めた、4人だけとなっていた。

更に1時間半が経過した頃には教室には既に合格している俺とルシア、そして教壇には心配そうに見つめている理事長先生・・・3人の6つの眼が見ている先には未だに水晶と睨みあっているマリアの姿が。

そして制限時間の3時間経過まで秒読みになったところで漸く水晶が砕け、マリアもメダルを手にした。


「やった!卒業のメダルだーーーーー!」

「おめでとうございます。これでSクラス全員が卒業ですね」


理事長先生が言い切ると同時に教室内に卒業試験終了の合図となる大音量のチャイムが鳴り響いた。


「ホントにギリギリだったね。マリア、顔真っ赤だよ」

「ありがとうルシアちゃん、ミコトさん。 揃って卒業できましたね♪」

「ああ」

「そうね。帰ったら兄様にメダルを見せて自慢しなきゃ」

「ウフフッ、ルシアちゃんったら!」

「3人とも、改めて卒業おめでとう!あとは身支度を整え故郷にお帰りなさい」

「「「理事長先生、ありがとうございました!」」」


3人が3人ともメダルを手にぶら提げ、教室を出ると残りのクラスメイト7人から拍手で迎えられた。


「マリアも無事に卒業できたんだね」

「心配してたんだよ?」

「みんな・・・本当にありがとう」


元クラスメイトと会話を弾ませながら寮へと戻っていく途中、卒業できた事で俺達と同じ様に喜んでいる者、水晶が割れなかったのか廊下にうずくまり悔し涙を流している者と喜怒哀楽で染まっていた。

数分後、揃って寮に辿りついた俺達は学園寮の管理者に全員揃ってお礼を言い、其々の部屋に散らばって行った。


「折角ですから一緒に学園を出ませんか?」

「いいわね。じゃあ荷物を整理したら食堂に集合という事で良い?」

「ああ分かった。」


因みに風の噂で聞いた内容によれば、ライシャスも普通に卒業試験を合格したようだが取り巻きの連中は勉強する暇が無かったのか一人残らず落第したという事だった。


「身支度って言っても空間に放り込むだけなんだけどな。」


俺は部屋に散らばっているお菓子類や果物を異次元空間にしまうと代わりに剣と鎧をとりだした。


「鎧やルゥを装備するのも久し振りだな」

(そうですよ~1人で空間にいるのは寂しかったんですよ?)

(毎日のように心の中や、夢の中で会話していただろう?)

(それでもですよ)


頭の中でルゥに散々怒鳴られながら寮の廊下に出ると、其処には大きな鞄を持った2人が待っていた。


「ミコトさんの鎧姿を見るのは久し振りですねぇ~~~」

「へぇ、格好いいじゃない。」

「ミコトさんは荷物は無いんですか?」

「果物や飲み物も昨夜マリアたちが食べたのが最後だったし、食器類も次に部屋に来る生徒のために残しておく事にしたからな。」

「そうなんですか・・・。それでは名残り惜しいのですが行きましょうか」

「そうだな。散々な一年間だったが、ありがとうな」

「此方こそ!」

「ん・・・。」


俺達は3人で学園の門につくと此れからの事を聞いてみた。


「私は一先ず家に帰って家族に報告してから、次の事を考えます。」

「私も途中までマリアの馬車に乗せて貰って家に帰る。兄様に自慢しなきゃ」

「そうか。」

「ミコトさんは此れから如何するのですか?」

「俺か?俺は気儘に旅をしながら考えるさ。」

別の世界への旅だけどな。


「そうですか、また何処かで逢えることを楽しみにしていますね。」

「じゃサヨナラ・・・。」


俺は手を振りながら見送ると護衛とルシア、マリアを乗せた馬車が荒野を走っていった。

そしてふと眼を向けると明らかに一般の生徒が乗る馬車とは違う、人間が十字架に貼り付けにされているような薄気味悪い紋章が幌に描かれている、豪華な作りの馬車にライシャスが同じ紋章をつけた鎧を着込んでいる護衛とともに乗り込み出発するところだった。


(学園に在籍中は手を出せなかったけど今なら・・・。)

(マスター?何を考えていらっしゃるのですか?)

(ん? なぁに色々と仕返しが出来ないかと思ってな)

(お気持ちは分かりますが此処はまだイスラントール国の領内です。 たとえ相手が悪逆

非道な大悪党とはいえど、国際問題に発展してしまいますよ?)

(それが問題なんだよな・・・なら天災という事にすれば良いか)


幸い(?)にも俺の使う風魔法と此方の世界での風魔法とは形状が異なるみたいで、突風や風を刃状にして相手にぶつけるという風の魔法はあるが、竜巻を発生させるような魔法は無い様だった。


「自然災害なら誰も悪くないだろ?」


今ならライシャスの向かった方向に走る馬車はいないし絶好の機会だった。

俺は卒業試験の時と同じ様に魔力を放出し、風の中級魔法を4個ほどライシャスの乗る馬車に向けて打ち出す。


「ウワアァァァァァァーーーーー!?」

「な、なんだ!?何があったーーーー!?」

「何だ、この風はーーー!?」


其れにより、トルネード状の風が一直線に連続して襲い掛かり、馬車を3~4mほど浮かび上がらせると何事も無かったかのように場を通り過ぎ消滅した。

後には突然のことで何がなんだか分からない顔をした数人の護衛と壊れた馬車に寄り掛かる様にして座る放心顔のライシャスが居た。


「じゃあ、気が晴れたし火の精霊に会いに火山を目指すとするか。」

(少し道草になってしまいましたが、気を取り直して行きましょう)


魔法学園の門を警備している兵士に火山までの道順を聞き、俺はゆっくりと旅の続きを歩み始めた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ