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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
穏やかな出会い
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第6話 禁句

翌朝、宿屋の自室で目覚めた俺は『全て夢であって欲しかった』と思いながら起き上がった。

そして朝食時に女将のレインに長期滞在の事を伝え、銀貨1枚を支払った。

レインの話では、ギルドの依頼などで宿に帰ってこなかった場合は宿代を請求しないとの事だった。

まだ町の外に出るつもりは無いので、大剣は部屋に残し一緒に購入した細剣のみを腰に装着して宿屋を出ようとするとレインに声を掛けられた。


「おや、今から仕事かい?」

「いえ、少し町を散歩しようかと思いまして。」


昨日、エミリアとギルド・武器防具屋・道具屋・宿屋と色々なところを歩いたが、そんなものは町全体の極一部で、周りにはまだまだ行っていないところが沢山あった。


「散歩は良いけど、城の陰になっている場所にはなるべく近づかないほうがいいよ!」


この町の中心部分には城がそびえ立っており、宿屋や武器防具道具屋がある場所は日の当たる、町の表門から城へと繋がる城下町に面しているが、レインが言う場所は前後を城と山に囲まれており、昼夜関係なく常に薄暗い雰囲気を醸し出していた。


「向こうの町の住民はならず者ばかりさ。もし、仕方なく近づく時はスリに気をつけなよ。」


レインに軽く手を振り、宿屋を後にした。

宿屋を出て少し歩くと、焼き鳥のような串を売る屋台が見えてきたので、串を2本買って食べながら散策を開始した。


「この世界に牛とか豚とかって居るのかな?そもそも、この肉って魔物のじゃないだろうな。」


露天で売られている魔道具を見ながら歩いて行くと、レインから近づくなと言われていた場所の入口にに差し掛かった。

好奇心が芽生えてきて少しくらいなら問題ないだろうと考え、問題の場所へと足を進めた。

其処は一歩踏み出した途端に別世界に入ったんじゃないかと思うくらい荒れていた。

木で出来た掘立て小屋のような家は所々に穴が空いて中が丸見えになっているし、街道には寝ているのか死んでいるのか区別がつかない奴らが横になっていた。


「なるほど、近づくなと言われた意味が足を踏み入れた瞬間に分かるほど危険なところだ。」


更に進んでいくと、街道の奥からナイフを手にした髭面の男達が5人ほど近づいてきた。


「おい、命が惜しかったら金を出しな!命までは取らねえからよ。」

「そんな事を言って、金を出しても殺すつもりじゃないんですか?」


俺がそう言うと男達は盛大に笑ったかと思うと、左右に広がり間合いを詰めてきた。


「おっ?いい勘してるじゃねえか。その通りだよ!」

「見た感じお前は剣士みてえだが、この人数相手に勝てるとでも思っているのか?」

「今更、逃げ出そうとしても遅いぜ!」

「能書きはいいから、さっさとかかって来い!ただし俺を一撃で倒さないとお前らが死ぬ事になるかもしれんぞ?」

「舐めやがって!!おい一斉にかかれ!」

「「「「おう!!!」」」」


5人が一斉にナイフを握り締め、俺に襲い掛かってきた。

俺はまず、2人の間をすり抜けてカウンターとしてパンチを顔に叩き込むと2人は勢いで後方の家屋にめり込み微動だにしなかったため、殺してしまったかと思ったがピクピクと痙攣している様子を見て安心した。そのまま振り向きざまに別の2人を蹴り飛ばし、先程の2人と同じ様な目に合わせたところで、死角から別の男にナイフで腹を刺された。


「よし!手応えあった!!舐めた口を利きやがって。あとは死体から身包み剥いで・・・!?」

「誰が誰を殺ったって?」

「そんな!?確かに急所を刺した手応えがあったのに・・・」

「折角忠告したのに俺を一撃で殺せなかったな!覚悟はいいか?」

「てめえ化け物か!?」


化け物・・・バケモノだと!?男の発した一言を聞いてから俺の意識は途切れた。

あれから、どれだけの時間が流れたのだろう・・・。

俺が意識を取り戻すと両肘、両膝の関節が不可能な方向へと折れ曲がり、男は涙と鼻水でグシャグシャになった顔を何度も下げて俺に許しを扱いていた。地面には黄色い水溜りが広がっていて先に倒した4人は何時の間にか居なくなっていた。

その間、何があったのか分からない俺は話を聞くために倒れている男に近づこうとしたところで男は悲鳴とともに気を失ってしまった。

見るからに重傷な男をそのままにはしておけず、城へと歩いて行き俺も世話になった(?)衛生兵にエミリアを間に挟んで治療を依頼した。

連れて行った直後、城の門の警備を行っていた兵士に『こ、この男は!?』と驚かれたが突然の来城にも拘らず快く治療を応じてくれた。 

十数分後、治療し終えた男は帰されると思ったのだが、何故か城の牢屋へと収監された。しかも帰り際にはエミリアを始めとして、城の門を警護していた兵士にまで礼を言われ、銀貨5枚を貰った。

わけも分からずに宿屋へと戻るとレインさんからも『散歩じゃなかったのかい?どっちにしろお手柄だったね』とねぎらいの言葉を頂戴して、もう何がなにやら・・・。

後日聞いた話では、俺が城へと連れて行った男は裏町を牛耳る強盗団のボスでマルベリアの城下町全域に指名手配されていたことが明らかになった。それを俺が捕まえた事に対してのお礼だそうだ。

ちなみに男はCランク級の手配書だったため、ギルドのランクアップの経験値には満たなかった。



一瞬、二重人格かと思われる行動を取ったミコトでした・・・

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