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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
火の精霊編
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第51話 寮での暮らしと・・・

俺が部屋に入って最初に思ったのは学生の部屋にしては考えられないほどの広さのある空間だった。


「これはまた・・・。元の世界の俺の部屋が最低でも5個は入る広さだな。」


部屋の中に置いてあるテーブルや椅子も見た感じで高価なものと分かるし、部屋の隅には浴室まで完備されていた。 現代で言うならばマンションではなく、億ションとでもいうような部屋だった。


「ミコトさん?部屋を見て感激しているところ悪いのですが、そろそろ聞かせてください。 なぜ学生ではないミコトさんが、この魔法学園に入学してきたかを・・・。」

「それは・・・少し長い話になるが構わないか?」

「はい。」


俺は道を聞こうと女性に問いかけた話や無理矢理に引っ張られて入園してしまった事を話すと・・・。


「なんですかそれ! ミコトさん、格好悪すぎですよ~~~。」


話し終わった途端に目の前に座って、真面目に話を聞いていたマリアが手を叩きながら盛大に笑い出した。


「笑う事無いだろ? 女性とは思えないほど強かったんだよ」

「ひーひー・・・。」

「まったく。」

「で、でも変ですね。 この学園は1期の生徒数が300人と決められているはずなんですが。」

「300人に決められている?」

「はい。事前に出身の村や町で学園入園許可証を受け取った方しか入園できないんです」

「その数が300か・・・。ん?そういえば一緒に入園する予定だった賊に襲われた幼馴染の分の許可証はどうしたんだ?」

「あ、アイツの分なら失くさないように私の許可証と一緒の入れ物に入れて学園に提出しま・・・。」


マリアも自分の行動が何を意味するのかに気づいたらしく口に手を当てていた。


「どうやら、それが原因だな。許可証が300枚あるのに人数が299人なら残りの一人は学園内で道に迷って入園式の会場に辿りついていないことになる。 偶々、残り一人を探している教師が俺を見つけて無理矢理引っ張っていったと考えるのが妥当だが、そう考えると悪いのは・・・。」


俺はギロッとマリアに目をやると、マリアも気づいたのか引きつった笑いを浮かべていた。


「え、え~と。ごめんなさい」

「まぁいいさ、此処の魔法にも興味あったからな・・・。楽しい学園生活をするさ。」

「スイマセンでした。 あ!そろそろ晩御飯の時間ですよ。1階にある食堂に移動しましょうか」


マリアに言われて外を見ると夕焼けから暗闇に差し掛かろうとしていた。

まてよ? 食事は良いが、俺はこの世界の金を手に入れてはいないぞ


「如何したんですか、ミコトさん?早く行きましょうよ」

「行きたいのは山々なんだが、金が無くてな・・・。」

「お金ですか? それなら大丈夫ですよ。寮内の食堂に限り、学生証を見せれば無料になりますから」

「無料!? そういえば、学費ですら払ってないんだけど良いのか?」

「それも大丈夫ですよ。先程も言いましたが1期が300人と決められているのは国が300人分の学費を代わりに払ってくれるからですから。」


なるほど。国が学園で魔術師を育てて卒業後は国のために働いてもらおうという事か。


「ほら、早く行かないと御飯なくなっちゃいますよ。 私は自分の部屋の転送ポートで食堂に行きますから、ミコトさんも直ぐに来てくださいね」


マリアはそれだけを言うと懐から学生証を取り出しながら、慌ただしく出て行った。


(マスター、なにやら面白い事になってきましたね。)

(面白い事ってな・・・。巻き添えとはいえ、無料で勉強できたり飯が食えるのは有難い事だな。)

(世界の滞在期間の5年のうちの1年を魔法学園で過ごすのですね? 楽しみです)

(火の精霊の居場所も分かっているんだし、気長に学園生活を楽しむさ。)


俺はルゥとの念話を終わらせるとマリアの言ったとおりに転送用ポートに乗って1階へと移動した。

1階に到着すると先に降りてきていたマリアと合流して食堂へと向かって歩いていく。

先の朝会で顔を合わせたクラスメイトが各々、食事を楽しんでいた。

行儀良くフォークとナイフで肉のような物を切り分けて口に運ぶ者や、周囲を気にせずに手づかみで果物に齧り付いている者、そして優雅にワインを飲む者・・・ってちょっと待て!!


「おいおい、学生が酒を飲んでも良いのか?」

「何言ってるんですかミコトさん? お酒なんて皆さん子供の頃から飲んでますよ?可笑しいですか。」

「子供の頃からって・・・俺の居たところでは、20歳未満の飲酒は法律で禁じられてて」

「変わってますね。此処では歳に関係なく飲酒は可能ですよ?」


どっちが変わっているんだか。ああ、飲んでもいないのに頭が痛くなってきた。


「ほら呆けてないで料理を貰いに行きましょうよ!」

「あ、ああ、そうだな。」


マリアは何も考えずに食堂の奥のカウンターに勢い良く駆け込み料理を頼んでいた。


「オバちゃん。私、このヒルゲンの丸焼きとマルゴワインね」

「あいよ! 直ぐに作ってやるから少し待ってな」

「じゃ、俺も同じものを2人前で宜しく~」

「はいよ!ってそんなに食べきれるのかい? 残したりしたら許さないからね」

「ミコトさん、ヒルゲンって結構、量が多いですよ?」

「大丈夫だよ。この時間まで一つも口にしてなかったから腹が減ったんだよ。」

「だからって・・・。」

「お~し、ヒルゲン丸焼き3人前とマルゴワイン3本上がったよ!!」


マリアとカウンターで会話していると料理が出来上がったようで取りに行ってみると、其処には鶏よりも一回り大きな形の鳥がジュウジュウと美味そうな音を立てて皿に盛られていた。


「要望にあったとおりに作っちまったけど、大丈夫かね~~~」


俺は意気揚々と料理の皿を受け取ると、周囲の驚いた目を気にすることなく齧り付いた。


「うめえ! 何ともいえない絶妙な焼き加減と食べた事の無い味付けで・・・。」

「そりゃそうさ~~私の一番の得意料理だからね!」


俺はその後、40分ほど掛けて料理を食べつくし、ワインをビンから直接一気飲みして食事を終えた。


「やっぱり健康のために腹八分目で止めとかないとな。じゃご馳走様!」


鳥骨が山積みにされた食器をカウンターへと返し、俺は部屋に戻るべく食堂をあとにした。


「あれだけの量が何処に消えたんだろうね。それに、あの量で八分目とはどんな食欲をしてるんだい。」


俺が食堂から立ち去ったあとでも、混乱は続いていた。

ちなみに小柄なマリアが完食した事でも周囲は驚きに包まれていた。



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