第50話 言い訳
この話しで『最強の錬金術士』の話数(部数)を突破し、文字数も超える事ができました。
自己紹介が終わり、此れからの事を色々と考えて気が付いて見るとSクラスの教室に残っているのは俺と未だに机に突っ伏しているマリアと、その隣に静かに座っているルシアと名乗った少女だけだった。
次の瞬間、マリアを挟んで不意にルシアが俺に話しかけて来た。
「貴方からは神秘的な何かが感じられるわ・・・。」
「そ、そうかな? そんな特別な事はないと思うけど。」
「ウフフ。此れからも宜しくね」
ルシアという少女は微笑するとゆっくりと教室の外へと歩いていき、振り返ることなく立ち去っていった。
なんだか分からないが、俺も寮の場所を探すために教室を後にした。
俺はマリアを気に掛けながらも魔力測定を行った場所の近くまで足を進めると後方から声を掛けられた。
「ミコトさん!!廊下で待ってるって言ったじゃないですか!?」
声のするほうに振り返ると腰に両手を当てて怒っているマリアの姿が其処にはあった。
「そうだったな・・・。腰は大丈夫か? 凄い音がしたようだが。」
「その事には触れないで下さい! 思い出したくありませんから」
「そうか、ところで俺に何の用だったんだ?」
「ミコトさんが此処にいる理由を知りたいんですよ! ミコトさんは学生じゃ・・・」
俺は周囲に人の気配をかんじたため咄嗟にマリアの口を手で塞ぎ、人目につかないところに移動した。
その直後、廊下の奥から歩いてきたのはミレイル先生で手には沢山の書類を抱えていた。
「行ったか・・・。ん?」
俺の腕の中では何故かグッタリとしたマリアの姿があった。
「ミコトさん、行き成り何をするんですか!? 私にも心の準備というものが・・・ゴニョゴニョ。」
「マリアの考えているような事は何も無いから心配するな。」
「そ、そんな事より此処にいる理由を教えてくださいませんか!?」
俺の目の前に居るマリアは何を緊張しているのか、額一杯に冷や汗をかいていた。
「此処では誰が聞いているか分からないからな、邪魔が入らない場所に移動したいんだが・・・。」
「それなら学生寮に行きましょう。同じSクラスですから寮も同じ塔だと思いますし。」
「塔?どういうことなんだ」
「学生寮は学園の敷地内に聳え立つ、一つ辺り地上30階もある塔のような建物です。
クラスによって待遇が違うんですが、魔力値の高いエリートが集まるSクラスの寮は他の寮の敷地と比べて2倍以上の面積の部屋が与えられます。」
「学生寮の鍵は何処で貰えばいいんだ?学園の事務所か?」
「ミコトさん、魔力検査の時に水晶から出た学生カードを持っていますか?」
マリアにそう言われ、懐から学生証を取り出した。
「それです! カードの裏にクラスと数字が書かれているはずです。 それが寮の部屋番号になります。因みに私の番号はS10802なのでS1寮8階の2号室という意味になります。」
「えっと、俺の番号はS10801だからマリアと同じ、8階の1号室って事か。」
「お隣さんですね、宜しくお願いしますね。そして学生カードを扉に差し込む事で鍵が開きますから失くさないようにしてくださいね。」
「失くしたらどうなるんだ?」
「私達のクラスの担任でもある理事長先生から有難いお説教と罰金として50リルが徴収されます。」
あの検査場で他の教師を怒鳴りつけた理事長先生のお説教か・・・。
「じゃそろそろ行きましょう。用も無いのに、校舎内にいるのも校則違反になってしまいますから。」
「そうだな、寮までの道案内を頼むよ。」
その後、俺はマリアとともに寮へと向かって歩き出した。
余談ではあるが、俺たちが去った5分後に機嫌の悪い理事長先生が通りかかり、その場で会話していたBクラスの女子2人がお説教の餌食になったという・・・。
マリアに連れられ20分ほど歩いて、やっと壁にS1と書かれた学生寮にたどり着いた。
「無駄に広いな、この学園は・・・。外に出てから20分も掛かるなんて」
「それはそうですよ。私達の学年から先輩方の学生数と各々の教師を入れて1000人以上がこの学園内で暮らしているんですよ? Iクラスの寮なんて、此処から更に10分以上はゆうに掛かりますよ?」
学園内なのに通園時間が片道30分以上の距離って一体・・・。
「それでは中に入りますよ。」
「あ、ああ分かった。」
マリアに連れられて建物内に入るが、学生寮はドーナツ状の建物で何処にも階段やエレベータが存在してはいなかった。
「どうやって上の階に移動すればいいんだ?」
「其処の吹き抜けのところに光る床がありますよね。」
確かにマリアが言うとおり、常に光を帯びている床と隣には全く光っていない床とがあった。
「光っていない床は、降り専門です。上がるためには光る床の中央で魔力を出しながら、自分の部屋の階数を頭に思い浮かべれば自動的に床が上昇して行き着くことができます。」
魔力式のエレベーターってことか。
「今回のように複数人いる場合は、片方の人が思い浮かべれば一緒に浮かび上がります。
ミコトさんは初めての体験みたいですし、試しにやってみましょう。」
俺はマリアと一緒に光る床の中央に足を進めると、心の中で魔力解放クラス1と8の字を思い浮かべた。
その直後、床からヴーンという音が聞こえ出し静かに床が上昇して行った。
数秒後、光る床は壁に大きく8と書かれた階で停まり俺たちが降りると床は跡形も無く消え去った。
「初めてにしては上出来ですね。降りる時は部屋の中にある転送ポッドで1階に降りる事ができます。」
「便利だが、慣れるまでが大変だな。」
マリアと会話しながら周囲を見回すと、吹き抜け部分を中心に“801”“802”“803”の3部屋の扉が円を描くように並んでいた。 更に扉の中央には何かを差し込む細長い穴が開けられている。
「それでは聞きたい話もあるので、ミコトさんの部屋にお邪魔する事にしましょうか。」
「俺の部屋でか? マリアの部屋で良いんじゃないか?」
「ミコトさん! うら若き乙女の部屋に同世代の男性が入ると色々と問題になりますよ!?」
それをいうなら男の部屋に女性が入るのも、問題になるような気もするが・・・。
「それじゃあ、学生証を扉の穴に入れてミコトさんの部屋に入りましょう~~~」
俺はマリアのノリの良さに根負けして部屋の扉を開いてマリアを部屋に招き入れた。
その様子を見られているとは思いもよらずに・・・。
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