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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
火の精霊編
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第49話 クラスメイトの中に

俺の魔力測定が大混乱のもと終了してから数十秒が経過した頃、一人の年配者の声によって女性と教師達は我に返った。


「貴女達は生徒をほったらかしにして何をしているのです!?

 測定が終了したのなら、直ちに生徒達を各クラスの教室に誘導しなさい!」

「はっ!? 申し訳ありません理事長先生。直ぐに行ってまいります」

「分かったなら駆け足駆け足! あら?貴方は?」

「少し前に測定が終わったんですが、何処に行けばいいか分からずに・・・。」

「教師の方々にも困ったものですね。学生証を見せて御覧なさい、わたくしが案内いたしますわ。」


学生証?そんなもの貰ったっけ?


「水晶の台座からカードを取り出したのでしょう?」

「これが学生証なんですか?」

「そうです。学生証の裏にあるクラスは何と書かれていますか?」

「えっと・・・。Sクラスです。」

「優秀なのですね。 御案内いたしますわ、着いて来てくださいね。」


俺は前を颯爽と歩き出した年配の女性に着いて行き、東側の最奥にあるSと書かれた扉の前に行き着いた。


「此処が魔力測定で最優秀の実力と認められた生徒が勉学を学ぶ教室です。」

「あ、ありがとうございます!」


俺は行儀よく目の前の女性に頭を下げると、相手も同じ様に頭を下げてきた。


「私はこの教室の担当教師であるミレイルといいます。此処で会話していても始まりませんし、中に入りましょうか。」


ミレイル先生が教室の扉を開いて中に入り、俺も後を追って教室内に入ると入園式に見たような人数ではなく、10人しか教室内には居なかった。

それでもキョロキョロと見ていると良く見知った顔の少女が此方を凝視しながら指差して固まっていた。


「其処の貴女! 行儀悪いですよ。人を指差すんじゃありません!」


俺よりも先に教室に足を踏み入れたミレイル先生が人差し指を伸ばして固まっているマリアを一喝していた。

その直後に教室中から笑い声が聞こえだしていた。


「マリアさん、そろそろ指を戻した方が良いんじゃありません?」

「え!? 申し訳ありませんでした!」


少女マリアは赤面し俯いてしまった。


「それでは貴方は空いている席にお座りなさい。これから朝会を始めたいと思いますから」

「はい。分かりました」


俺は教室内を見回しながら歩いていくと、ちょうどマリアの隣の席が空いていた。


「どうやら席に着いたようですわね。それでは最初に自己紹介を致します、私の名はミレイルと申します。知っている方もいらっしゃると思いますが、アメリトス魔法学園の理事をさせて頂いております。」


俺は机に肘をついて理事長の話を聞いていると、先程まで俯いていた隣の席のマリアが肘で小突きながら小さく折りたたんだ紙を俺に手渡してきた。 俺は渡された紙を静かに開封し、中身を見ると・・・。

『なぜミコトさんがこの学園に居るのですか? 休憩時間に教室の前で待っていてください』

と書かれていた・・・。

俺がマリアと机の下でやり取りをしている間もミレイル理事長先生の話は続いていた。


「朝会はこのぐらいにして次はこの学園の事を説明いたしますね。

皆さんは入園式を終えてから直ぐに検査水晶による魔力の潜在値の調査をされたと思いますが、その結果によって授業を受けるクラスに分かれます。」


それで水晶での身体検査を一番最初に執り行ったわけか・・・。


「魔力量によって上はSクラスから下はA~Iクラスまでの10クラスに分かれております。皆さんのいる、このSクラスは最低でも5万魔力値はないと入室する事ができません。」


俺の場合は5万どころか、魔力量測定不能で既に水晶を1個粉砕してるしな。


「それでは、次に皆さんに名前と趣味や特技を発表してもらいましょう。では其方の方から順番にどうぞ。」


この教室は授業を受けやすくするためか教師の立ち位置を中心とした半円形な机の並べ方になっていた

そのため机に向かって座っていても、前の生徒の背中など遮る物は一つも無く全員が教師と目を合わせて座っていた。

教室の一番左端に座っていた大人しそうな顔つきをしている男子生徒が立ち上がり、会釈したあと自己紹介を始めだした。


「えっと・・・。僕の名はアレン=Gといいます、特技はなく趣味は本を読む事です。」


ん? “G”ってなんだ!?


「私はモニカ=Aです。特技は特に無く、趣味はお裁縫です。」


まただ。今度は“A”だったな・・・。 それに出身とかは言わなくてもいいのかな?

俺が頭に?の文字が何個も浮かんできそうな顔で考えていると隣にいたマリアが気づいたのかノートを1枚ちぎって何かを書き込んでいた。

そうしながらも、どんどんと自己紹介が進んで行き、残り5人になろうとしていた。

それまでに聞いたアルファベットはGとかAとかSとかD・・・。バラバラだった。

そんな折、マリアが鉛筆を置いたと思ったら俺の身体を肘で小突き、四つ折にした用紙を手渡してきた。

俺が極力、音を立てずに用紙を広げると其処に書き記してあったものは!?

『名前の横にあるのは家名の頭文字で貴族や他国が入園する事もあるから、混乱をきたさない様に家名を隠して出身地が分からないようにする対策が施されたの。』


「其方の貴方達は何をコソコソとしていらっしゃるのですか?」

「い、いえ何でもありません!」

「それなら宜しいのですが次の次は貴女の番ですよ。」


俺は用紙に気を取られていた所為か、俺とマリアとその隣の少女以外の自己紹介は既に終了していた。

3個隣の席の男子が自己紹介を終えて椅子に座るとすれ違い様にマリアの隣の少女が立ち上がった。


「私、ルシア=W。 特技はなし、趣味はお菓子作り。」


少女は必要最低限の事柄のみを口にして、即座に椅子へと腰掛けて此方に笑いかけていた。


「自己紹介も残り2人になりましたね。時間も残り僅かになりましたので速やかに行きましょう。」


マリアは緊張しているのか自分の胸に手を当てて気分を落ち着かせていた。


「わ、私はマリア=Rと言います。特技はありません、趣味は読書です。」


マリアは言い切ると額に汗を浮かばせながら静かに腰を下ろしたが、立ち上がる時に勢い良く立ったため椅子は後にガタンと倒れこみ、それに気づかないマリアは教室の床に勢い良く倒れこんだ。


「キャウ!!?」 


俺も咄嗟に手を差し出したが間に合わず、マリアは尻餅をつき周囲から笑い声が聞こえだしていた。


「マリアさん? 大丈夫ですか!?」

「大丈夫れす~~~」

「では気を取り直して最後の方の自己紹介をお願いいたします。」


俺は未だに倒れているマリアの方を気にしながらも、そっと立ち上がった。


「俺の名はミコト=Mといいます。 特技は剣技で、趣味は身体を鍛錬する事です。」


俺は言うだけ言うとマリアに手を差し伸べながら着席した。


「魔術師の弱点は身体の脆さですから鍛錬する事はとても良い事ですね。」


キーン、コーン、カーン、コーン・・・・

ミレイル先生が話し終えた直後に学校のチャイムのような音が響き渡った。


「今日は此処までのようですね。それでは各自、寮に戻って明日の本授業に備えるように。」


先生が教室から退出して行った瞬間に緊張の糸が途切れたかのように教室内は騒然となった。

マリアはというと赤面した状態で顔を机に突っ伏し「恥かいた恥かいた」と繰り返し戯言のように言っていた。

初日から大変な1日だったな・・・。まさか学園生活になろうとは。


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