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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
穏やかな出会い
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第5話 エミリアの厄日

話の展開に思うところがあり、メインタイトルを『異世界に渡りし者』から『異世界を渡りし者』に変更しました。


メインタイトルの意味がわかるのは、ず~っと後の事になる予定ですので気長にお待ち下さい。

前回に引き続き、武器屋にて大剣と一般的な大きさの剣を両手に持って悩んでいる俺の姿があった。

その様子を声を出せずに見つめている武器防具屋店主のハイドやマルベリアの騎士エミリア、更にはミコトと同じ目的で武器を選んでいた傭兵たちも、一見してかなりの重量のある両手持ちの大剣を片手で軽々と振り回す様子を見ていて驚愕していた。


「ようし、悩んでいても仕方ない」


そう言って両手に剣を持ったままハイドさんの座る場所へと歩いていった。


「ハイドさん、この大剣と細剣と先程の鎧で値段は幾らになりますか?」

「こりゃたまげた、両方とも買うのか!?」

「はい、散々悩みましたが2本とも買う事に決めました。」

「それじゃあ、鎧が銀貨2枚と銅貨50枚に細剣が銀貨3枚、大剣が銀貨5枚だな。占めて銀貨10枚と銅貨50枚だが、沢山買ってくれた御礼だ銀貨10枚で売ってやろう!」

「ありがとうございます。」


腰の袋から銀貨10枚をハイドさんに手渡したあと、購入した鎧を装備して細剣は腰へと装着し、大剣は腰に着けると引き摺ってしまうので背中に斜めにして背負う事になった。


「エミリア、次に行こうか。エミリア?エミリアってば!!」

「な、なにミコト!?どうかした?」


どうやら俺が声を掛けるまで目を見開いて固まっているようだった。


「装備は買い終わったから次は何処に行くのかなって。」

「じゃ次は道具屋に行きましょうか」


エミリアとともに武器防具屋を後にして、約50m離れた道具屋へと足を踏み入れた。


「此処は旅の必需品の薬草や毒消し、魔術師用の魔力回復薬なんかが売られてるけどミコトは剣士みたいだから、強いて言うなら薬草と毒消しくらいの物ね。」

「そ、そうだね」


う~わ~、一番俺に縁の無い物だな。かといって何も買わなかったら不審がられるだろうし・・・


「どうしたの?何か気になる事でもあった?」

「いや、何でもない。それじゃあ、薬草と毒消しを5個ずつ貰おうかな」


薬草・毒消し1個とは言っても、一個当たり紐で2つ結わえてあるから正確には10個ずつ買ったような物だが・・・。


「まいどありぃ~、薬草は1個銅貨2枚、毒消し1個銅貨3枚なので合計で銅貨25枚です。」


財布(腰の布袋)から銀貨1枚を手渡し、釣銭として銅貨75枚を受け取った。


「では此れが品物です。またのご利用をお待ちしていますね」


品物を受け取った時、横で見ていたエミリアが話しかけてきた。


「ちょっと、ちょっとミコト!道具袋一つも持ってないじゃない!?なんで?」


道具袋?そんなのが必要なのか?『一つも』と言う事は最低でも2個は必要なのかな?



「汚れが目立ってきたから、途中で捨てちゃったんだ。」


俺がそう答えるとエミリアからは「なるほど」という相槌とともに店員が割り込んできた。


「道具袋は一つ銅貨10枚ですが、どうなさいますか?」

「じゃあ2個ください」と言って店員に銅貨20枚を手渡して道具屋をあとにした

「それじゃあ、最後に宿屋の案内ね。」


今まさに道具屋から出ようとした時、道具屋の店主がエミリアに話しかけてきた。


「ちょっと、エミリアちゃん。ハンクスさんが探してたわよ?」

「え!?何か言ってましたか?」

「ええ、『出てったっきり中々戻って来ない』って愚痴を言いながら歩いてたわよ。」

「ええーーー!?でも、此れが最後だから、もうちょっとだけ待っててもらうわ。」

「知らないよ、どうなっても」


横目でエミリアの顔を見ると、青い顔で冷や汗を流しながら引きつった笑いを浮かべていた。


「エミリア、俺なら構わないから城に戻ったほうが良いんじゃないか?」

「いいの、いいの!さあ、次は宿屋よ」

「いいのかなぁ~~」


エミリアは俺を引っ張って、早足でギルドの真向かいにある宿屋へと歩いていった。

宿屋に到着する頃には空が夕焼けに染まり始めていた。


「此処が案内最後の酒場兼宿屋よ、女将さんのレインさんと契約をすれば長期滞在も可能だから利用してね。」

「騒がしいと思ったらエミリアじゃないか。隊長さんが探してたよ」


奥から出てきたのは偉丈夫(婦?)というような体格の良い女性だった。


「おや、こっちは初めて見る顔だね。髪も眼の色も見たことの無い黒だし・・・」

「はじめまして、ミコトといいます。」

「あいよ、私の名はレインだ。よろしくなミコト!」

「よろしくお願いします。レインさん」

「あっはっは!呼び捨てでも構わないよ。うちの宿は一泊二食で銅貨5枚さ、お金が払えれば何日いても構わないからゆっくりして行きなよ。」

「じゃ私はこれで城に戻るから、困った事があったら何時でも会いに来てね。」


エミリアはガチャガチャと鎧を揺らしながら城への道を全速力で走っていった。

俺はというと、レインから『7』の番号が刻まれている、部屋の鍵を受け取り宿の廊下を歩いていた。


「飯が出来たら呼ぶから、部屋でくつろいでいるといいさーー!」

「分かりました。」


宿屋の2階を歩いていると1から順番に10枚の扉が並んでいた。

そのうちの扉に大きく『7』と書かれている部屋の扉を手渡された鍵で開けて中に入ると、畳10畳分くらいの部屋に木製のテーブルと2個の椅子、部屋の奥にはベッドが置かれていた。


「へぇ~~想像してたよりも、ずっと良い部屋だな。」


部屋についた俺は早速、腰に装着している剣と背中に背負っている大剣を取り外して壁へと立て掛け、着ていた鎧を剣の傍へと置いて、椅子に座りこれからの事を考えていた。


「どうにかして、元の世界へと帰る方法を探さなきゃな。」


まぁ俺には心配してくれる家族はいないし、万が一帰る方法が見つからなかったとしても此処で楽しく暮らせばそれで良いか・・・。


「お客さ~ん、飯ができたよ。降りといで~~!」


色々な事を考えていると、下からレインの声が聞こえてきた。


「まずは、腹ごしらえだな!」


その後、見たことの無い奇妙な色の料理が目の前に並べられたが、見た目とは裏腹に美味しい食事を食べて、その日は眠りについた。

余談ではあるが、城へと全速力で帰ったエミリアはハンクス隊長から2時間もの説教を喰らっていた。


「隊長~~、もう許してぇ~~」

「駄目だ!!まだまだ話は残っている!」

「そんなぁ~~!」


その後、城の一室は一晩中明かりが灯っていたという・・・。




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