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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
光の精霊編
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第45話 忘れていた事・・・

その後、ゆっくりと時間を掛けてマルベリアへと戻ってきたが良い答えは考え付かなかった。

辺りが暗闇に閉ざされていても、関係無しに歩いてきた結果、町に着いたのは昼近くの事だった。


(何の考えも浮かばないまま街に戻ってきてしまったな・・・。)

(マスターいっその事、全てを晒しだしませんか?)

(でも大騒ぎになるって言ってたのはルゥだろ?)

(ですから、騒ぎが大きくなる前に全ての準備を整えて次の世界に旅立てば良いのですよ。)


俺がそれでも決めきれずに悩んでいると・・・。


(それに異次元空間に入れた討伐証明部位を取り出さなくてはいけませんから、どっちみち証明する事になってしまいますよ?)

(そうだったな、あんな複数の大きい物を持って歩くのは無理だろうからな。)


散々考えた結果、ルゥのアイデアを起用してギルドへと向かって歩いていった。

俺が足を踏み入れると、何時もは沢山の冒険者が溢れかえっているギルド内は何故か一人も居なく静まり返っていた。


「なんで誰も居ないんだ!? 何かあったのか?」


俺が独り言のようにつぶやくと、ギルドの窓口横にある職員専用出入り口から疲れた表情のローラが溜息とともに姿を現した。 ローラは俺の姿を見つけるなり、飛び掛ってきた。


「ミコトさん!待ってましたよ。」

「ど、どうしたんだ? 少し落ち着け!」

「ミコトさんが依頼で出かけてから、連日のようにシルヴィア様が押しかけて来て『ミコトさんは帰って来た?』って、私も『如何したんですか?』って聞いたんですが大事な話があるとかで・・・。」


そうか、シルヴィアが。ん?シルヴィア?


「ああーーーーーーーーー!!?」


行き成り大声で絶叫した俺を見て、散々に疲れ果てていたローラが倒れそうになっていた。


「どうしたんですかミコトさん、行き成り大声で絶叫したりして。」

「すっかり忘れてた・・・。そういえば説明してって頼まれてたんだったっけ。」

「説明ですか? あ!もうそろそろ、シルヴィア様がいらっしゃる頃ですよ?」

「な、何!? 直ぐに逃げなきゃ!!」


俺が逸早くギルドの外に出ようと扉を開けると、待ち構えていたかのようにシルヴィアが立っていた。


「ミ・コ・ト・さ・ん? 何処に行こうというのですか?」

「遅かったか・・・。」

「魔力の修行の事を説明してくれるって言ったから私、待ってたんですよ?」

「な!?此処で魔力の話なんてしたら」


シルヴィアは咄嗟に自分の口を手で押さえるが、時既に遅く・・・。

幸いにも冒険者が一人も居なかった事で混乱には陥らなかったが、ローラは目が点になっていた。


「ミコトさん、魔力ってなんですか?ミコトさんは剣士ですよね?」

「い、いや少し前に分かった事なんだけど、俺にも魔術師の才能があったみたいで・・・。」

「それじゃあ、ミコトさんは魔法剣士なんですね!?」

「そういう事になるのかな。」


シルヴィアは『しまった!』という顔で暫く固まっていたが、立ち直って説明を求めてきた。


「それで、魔力の修行の結果はどうだったのですか?」

「とりあえず色々と試してみた結果、全属性魔法を使う事ができたよ。」

(マ、マスター、2個か3個の属性しか使えなかったという事にしてって言ったのに!)

(構わないさ、直ぐにこの世界を発つんだからさ。)

「全属性ですか!? 私の近衛隊のフィルでさえも3属性しか使えないのですよ。」


俺は心底驚いているシルヴィアを置いといて、ローラに討伐証明部位の換金をお願いする事にした。


「ローラ、討伐してきたから報奨金をもらえるか?」

「それは構いませんが証明部位は何処にあるんですか? 何も持ってないように見えますが・・・。」

「今取り出すから少し待っててくれる?」

「は、はい。取り出す?」


俺はクラス1の魔力を発生させた後、ギルド窓口横の空間に手を広げ『ルーム』と唱えた。

異次元空間の扉は作成した本人か、半径2m以内に近づいた者しか見えない事になっているのだが、ローラは自分の目と鼻の先に立っているし、シルヴィアは自分の真後ろで固まっているため扉がはっきりと見えていた。


「ミコトさん・・・この扉はなんですか? パッと現れたようにみえましたが。」

「これは空間魔法だよ。この中に討伐証明部位を入れてあるんだ、少し待ってて。」


俺はローラとシルヴィアを待たせると扉の中へと入って行った。

直後、ローラとシルヴィアは雁首並べて異次元空間の中を覗き込んでいる。

先程も説明したが、半径2m以内に近づかなければ、扉自体は目に見えないので傍から見れば『あの2人は何をしているんだろう?』と変な目で見られる事は間違いない。

その頃、空間内へ部位を取りに来た俺はというと・・・。


「アレとコレとソレとコレにあとコイツもか、此れで全部だな。」


俺が振り向いて出口に向かおうとすると空間内を覗き込んでいた2人と目があった。


「ミコトさん、この場所は一体・・・。」

「これも属性魔法の一つで空間属性って奴だよ。伝説上の魔法らしいけどね」


そして外へ出ると同時に扉は音も無く閉まり、直後には扉自体も掻き消えた。


「これが証明部位ね。換金宜しく」

「そ、それでは拝見いたしますね。 え~っと黒い牙はリザードマンの物ですね、本当に討伐してきたんですね!? 次は、こ、この尻尾はアークデーモンの!!?」

「リザードマンにアークデーモンって、どちらもSS級の魔物じゃないですか!?」

「ちょっと待ってください! 次のキメイラの歯とワイバーンの翼って此れもSS級の魔物ですよね!?」

「え、SS級をたった一人で4体も討伐するなんて・・・。ミコトさんて何者なんですか?」


ちなみに上から俺⇒ローラ⇒シルヴィア⇒ローラ⇒シルヴィアの発言だ。

たかがSS級魔物で大騒ぎするものだから、最後の一つが出しにくい状態になってしまった。


「あれ?ミコトさん、まだ何か持ってますね? その背中に隠したものを出してください。」

「えっと、これは討伐時に損傷してしまって・・・。換金できるかどうか怪しいんだよ」

「原型さえ残っていれば、鑑定して換金する事が出来ますから見せてください。」


なんとか出し渋って幾つかの言い訳をしてみるが、ことごとく言いくるめられ結局提出する事になってしまった。


「ほら、これだよ・・・。」

「それでは拝見しますね。魔物のブレスの影響でしょうか?少し表面が溶けていますね。

えっと、表面の装飾や大きさ、形から推測するに此れはグラシャラボラスの指環!?」


俺は大騒ぎになる事は目に見えて分かってたので咄嗟に両耳を手で塞いだ。


「グラシャラボラスって、SSS級の特別指定魔族じゃないですかーーーーーーーーー!!」


これから数時間、俺はローラとシルヴィアから質問攻めにさせられた・・・。



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