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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
光の精霊編
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第43話 魔族を統べし者 <前編>

魔力が備わった事で更に強くなった俺は、前回の森での戦いとは比較にならないほどのスピードでリザードマンを倒した。

リザードマンの討伐証明部位である、口元の黒い牙を採取した俺は街に戻ろうとその場を後にしようと思っていたが、前方の山道から今まで感じたことの無い、重圧な気配(プレッシャー)が感じられた。


(この気配は何だ!? 気配を読むことが苦手な俺でも違和感を感じるぞ!?)

(マスター、気をつけてください。 この気配は並大抵な実力の魔物じゃありません!)


その重く圧し掛かるような気配は、幾ら不死身の俺であろうと緊張せざるを得なかった。


(マスター! 既に何時の間にか300m先にまで近づかれています。ご注意を)


300mだと!? それくらいなら俺の目で確認できる筈・・・。

目の前にあるのは木が1本も生えていない浅黒い山肌に、遙か遠くに見える海のような景色のみ。

だが、見えていないとはいえ強大な気配がヒシヒシと感じるのは事実!


(一体、何処から来るんだ!?)

(マスター左の山肌からとてつもない気配です! ・・・来ます!!)


ルゥから忠告を受けた直後、ソレは山肌を跨ぐ様にして現れた。


「な、なんというデカさだ・・・。」


現れた魔物は聳え立つ塔のような大きさで片手に棍棒のような木を丸ごと一本引き抜いたようなものをしっかりと握りしめていた。 

更に魔物に付き従うように3つ首の魔物と翼竜のような魔物が空を飛んでいた。


「ぬう・・・。なんだお主は? 部下の気配が途切れたから急いで帰ってきてみれば!

 其処にいたのはリザードマンでもアークデーモンでもなく、ただの一人の人間だと!?」

「御屋形様、アチラをご覧下さい!リザードが首から血を流し息絶えております。」


3つ首の魔物が逸早くリザードマンの死体を確認し、翼竜までもがアークデーモンの死体を見つけた。


「御屋形様、森の手前にてアークデーモンの死体を確認しました。 

此方は胴体部分に深い傷が見られましたので腹を切り裂かれ、絶命したものと思われます。」

「そうか・・・。 其処の人間!オヌシがあの2人を殺したのか!?」


部下の報告を黙って聞いていた巨大な魔物は顔を強張らせると殺気の篭った声で問いかけてきた。


「そうだ! 行き成り襲われたんでな、自己防衛として斬らせてもらった。」

「あ奴等も人間が相手で油断していたのもあるであろうが、お主の強さも気に入った

 よって、我自らが部下の弔いとしてオヌシの相手を勤めさせてもらおう!!」


巨大な魔物から発せられる殺気の篭った目に襲われながら、俺は剣を構えた臨戦態勢を整えたが。


「御屋形様、たかが人間一人などの相手に貴方様が動く事はありません!」

「そうです、この場は私達にお任せ下さい! 軽くしとめて見せます。」

「む~~、其処まで言うなら相手を任せる。 が、あの人間は無傷でリザードとアークを倒したほどのつわものだ。 心して掛かれ、決して油断はするな!!」

「「はっ!!」」


2体の空を飛ぶ魔物は会話を終えると俺の目の高さまで降りてきた。


「人間よ、冥土の土産に教えておいてやろう! 我はキメイラ、3つの属性を同時に扱う事が出来る魔獣キメイラだ!」


3つ首は其々、ライオンのような首と鹿のような首、鷲の様な首が別々に一言ずつ喋っていた。


「更に、我はワイバーン。 この翼で空中を駆け回り、相手に一切の隙を与えずに仕留める邪竜ワイバーンだ!」


此方は一瞬、竜と見間違えたが御伽噺に出てくるような姿ではなく、どちらかというと蜥蜴に黒い翼が生えたような形状で口元には犬歯のような鋭い牙が何本も見て取れた。

ちなみに本人(?)は邪竜だと言っているが、鱗のような物は何処にも見当たらなかった。


「「我々をリザードやアークのような魔族(小物)と一緒にしない事だ。 では行くぞ!!」」


2体の魔物は言うや否や、上空から俺に向かって真っ直ぐに飛び掛ってきた。


(マスター、キメイラの口から複数の魔力属性を感知しました。)


ルゥが口にした直後にキメイラから火と氷のブレスが同時に俺へと襲い掛かり、体勢を崩しかけたところにワイバーンが低空飛行で俺の脚を、手の鋭い爪で切り裂きに掛かってきた。


「ハハハッ防戦一方ではないか!? 我らの攻撃に太刀打ちできまい!!」

「ワイバーンよ、もう一度だ。次でとトドメと行こうか!」

「承知!」


更に追い討ちを掛けようと、2体の魔物が上空へと移動した。

次の瞬間、又もやキメイラがブレスを吐きながら低空飛行で突っ込んできたが、俺はあえてかわさずに剣を垂直に前方へと構えた。キメイラも逸早く異常に気づいたが、加速中で避ける事が出来ずに自ら剣先へと飛び込んで、あえなく左右に両断され息絶えた。

未だに俺の周りにはキメイラの吐いたブレスの影響で土埃が舞っていた。

ワイバーンもキメイラが既に倒された事など知る由も無く、奇声とともに上空より飛来した。

俺はキメイラの時と同じ様に剣を構えて待っていたのだが・・・。

野性の勘だろうか、ワイバーンが軌道変更した事により胴体の両断には至らず、片方の翼のみを切り裂いて魔物は何も出来ないまま、山肌へと突進していった。


「な、なんだ!? あの人間は何処に消えた?キメイラは?」


俺はワイバーンの死角から静かに近づき、一瞬で魔物の首を胴体と切り離した。


(マスター、お見事です。)


ようやく土埃が静まった頃には左右に両断されたキメイラと、首を刎ねられたワイバーンの姿が巨大な魔物の眼前へと晒しだされた。


「おおおぉぉーーー!? キメイラ、ワイバーン!あれほど油断するなと申したであろうに・・・。」

「残るは貴様だけだ!」


俺はこの世界での締めくくりである、最後の戦いを始めようとしていた。



もう少しで1部目が終了する予定です。

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