第40話 真実
やっと物語の核心です。
ものすごく前置きが長くなりましたが御了承下さい。
その日の夜、ルゥに呼ばれてもいないのに俺は夢の世界にルゥとともに佇んでいた。
「如何したルゥ?何か話し忘れた事柄でもあったのか?」
「いえ?マスター、私は呼び寄せてはいませんよ」
「じゃあ誰が・・・。」
「主様、ようやく出会う事が出来ました。この日をどれだけ待ちわびた事か。」
虚空から光り輝く衣装を見に纏った、ルゥとは異なる印象をもつ一人の女性が話しかけて来た。
ルゥを見ると、金魚のように口をパクパクさせて声にならない言葉を発していた。
「君は誰だ!? 如何して俺のことを『主様』と呼ぶ?」
「主様は主様にございます。魔力に目覚めてはいなかったとはいえ、お待たせしてしまった事を心より謝罪いたします。」
「マ、マスター! 此方の方は私達、精霊の長であらせられる光の精霊様でございます。」
「其方にいる剣の精霊・・・いや『ルゥ』という名を貰ったのでしたわね。 ルゥ殿の紹介にあったとおり、私は闇の精霊とともに全ての精霊の長である光の精霊でございます。」
「光の精霊様、私なんかに殿とは恐れ多い次第でございます。」
ルゥは更に平伏し、光の精霊に頭を下げている・・・。
「それで、その光の精霊が俺に何の用があったんだ?」
「はい。一時はレグリスの皇女と間違われるといった不手際もありましたが、主様を此方の世界に呼び寄せたのは私でございます。」
俺は無意識に精霊に掴みかかろうとしてしまったが姿は目の前にあるものの手を触れることは出来なかった。
「お前が俺を呼び寄せたのか!?どうして俺なんだ?どうして・・・。」
「それは若かりし日の主様に先代の神が後継者として、白羽の矢を立てたからでございます。」
「俺が神の後継者だと!?ふざけるのも大概にしろ!!」
「ふざけてなどおりません。出生時より神に選ばれていた貴方様が不慮の事故で亡くなられそうになったとき、神は最後の力を振り絞り主様に特殊能力を授け亡くなられました。
享年、5無量大数飛んで3964億9238万1962歳でした。」
そうか・・・神といえども不老不死ではないんだな。
「これから主様には神の試練として複数の世界に渡っていただき、全ての上級精霊と会って頂きます」
「全ての精霊に出会う旅だと!?」
俺は衝撃の事実に混乱しルゥの方を見るが、ルゥも此方を向いて「マスターが神様?」と呟いていた。
「この世界を管理するは私、光の精霊でございます。そのため、一番最初に主様に来ていただきました。」
「俺は世界を渡る方法なんて知らないし、この世界は如何するつもりだ?」
「其れについては最初にお渡しするものが御座いますので左手をお出し下さい。」
俺は少し考えてから左腕を目の前の精霊へと突き出した。
「一瞬で済みますので動かさないで下さいね。」
差し出した左手首が目も開けられないほど眩い光に包まれた瞬間、光る腕輪が嵌っていた。
腕輪には10個もの何かが嵌るような穴が刻まれており、外そうとしても外れなかった。
「な、なんだこの腕輪は!? クッ!外れない。」
「その腕輪は我ら精霊と対話するための物です。まず手始めに私と対話したという証拠として、私の精霊の証である光の精霊玉を装着させていただきます。」
光の精霊の手が、そっと腕輪に触れると腕輪の台座の一つに光の玉が収まった。
「この腕輪に意識を集中し『光』と念じてくだされば私が答えます。同様に他の精霊と出会い精霊の玉を授かる事により『闇』や『火』と念じる事によって、各々の精霊と会話する事ができます。」
先程まで俯いていたルゥが行き成り顔を上げ、潤んだ目で俺を見つめてきた。
「マスターは神様だったのですね。そのような方にお仕えできたとは夢のようです。」
「最後にこの世界は如何するのかという問いですが、この世界の管轄は私、光の精霊ですので何時旅立っても構いませんが・・・。一度別世界に旅立たれると、とある御方に会われるまで以前の世界には戻る事はできません。人間という立場なら世界に干渉しても問題ありませんが、神になられると特殊な事情が無い限り、関与できなくなりますので今のうちに精一杯楽しんでください。ちなみに一つの世界における最大滞在期間は5年とさせていただきます。それ以下でも構いませんが、1日でも過ぎた場合は強制的に次の世界へと旅立ってもらいます。」
まてよ、俺が異世界に行った後エミリアやシルヴィアの頭の中から俺の存在は消え失せるのか?
「ちょっと待て!その場合、俺が此処にいたという記録はどうなるんだ?」
「残念ですが、主様が拘った出来事は全ての方達の記憶から消去されてしまいます。
といっても私達、精霊に関しては関係ありませんからご心配なさらないでください。」
「誰かを連れて行くことは?」
「それは出来ません!世界の調和が崩れてしまいます。ただし道具や魔法などに関しては制限は掛かりませんから新しい世界に行くために硬貨を使い切って武器や道具・装飾品を買い込んでおき、新しい世界で売却してお金に変換する事をお勧めします。 それでは、私はそろそろ失礼します。」
そう言いながら、目の前に存在していた光の精霊は元から存在していなかったかのように光を発しながら掻き消えた・・・と思ったら再び目の前に出現した。
「すいません、一つだけ言い忘れたことがありました。腕輪なのですが主様の魔力によって可視状態にありますので魔力の放出を止めると見えなくなります。注意してください。それでは・・・。」
光の精霊は言うだけ言うと姿を消して今度こそ戻ってくる事はなかった。
「マスターは神様だったのですね・・・。」
「俺はこれから如何したらいいんだ?」
誰からも答えが聞けないまま時間だけが過ぎて行き、朝を迎えてしまった。
物語に登場した無量大数という単位ですが、一・十・百・千・万・億・兆・京・垓・譲・講・澗・正・載・極・恒河沙・阿僧祇・那由他・不可思議・無量大数とあります。
(垓と譲の間にもう一つ単位がありますが漢字が表示されませんでした。)
ちなみに無量大数という単位を使ったのには深い意味はありません