第34話 想像すると痛~い修行
色々な事がありながらもリザードマンと対峙した森に到着した俺は早速修行を開始しようと意気込んでいたのだが。
(マスター、修行の集中力の妨げになってしまいますので周辺に居る魔物を討伐してしまいましょう)
(分かった。とりあえず俺の周囲200m以内に居る魔物の気配を読んでくれ。)
(暫くお待ち下さい・・・。マスターの前方100mの辺りにリュナイト3体と右に70mの辺りにワイルドウルフが4体居るだけです。どちらも此方の様子を木の陰から伺っています。)
(じゃあワイルドウルフを倒して、そのままの勢いでリュナイトを倒すぞ。)
(了解しました)
そして約1時間後、行き成り増えてしまったリュナイトとあわせて計10体の魔物を討伐した。
(マスター、お疲れ様です。御休憩なさってから修行を始めますか?)
(いや、たいして疲れても居ないし直ぐに実行しようか。)
(分かりました。とりあえず、湖の近くまで移動しましょうか?此処では血の匂いが強すぎます。)
それから5分後・・・。
(湖に着いたな。周囲に魔物や人の気配はあるか?)
(先程確認してみましたがマスターの周囲500m以内には魔物・人間・動物の気配は皆無です。)
(なら修行を開始するとするか?俺の能力を利用すると言ってたが、如何するんだ?)
(その前に武器屋で購入した銀のナイフを刃を下にして手に持ってください。)
俺は腰に装備している銀のナイフをルゥに言われたとおり剣を持っている逆の方の手で握り締めた。
(用意できたようですね。 では、これから修行の内容を説明いたします。マスターの身体は超人的な身体能力を発揮する時や怪我をした際の治癒時に膨大な魔力を発生します。)
確かに言われるとおり、そんな時のみ魔力が発生し通常時は全く魔力が無い状態だ・・・。
(そこで一時は平原で走り回ってもらおうと考えましたが、それではマスターの体力の限界が直ぐに来ますし、誰かに見られて大騒ぎになる可能性が予測されます。)
(確かにな・・・。そんな速度で走れる人間なんて存在しないわな。)
(だからと言って、森で全力疾走しようものなら確実に木が邪魔になります。)
(まぁ、俺だって木をなぎ倒しながら走りたくはないしな。)
(其処で思いついたのがマスターの治癒能力です。マスターは刺されても骨折しても痛みを感じる事はありませんよね?)
(ああ、最初は針で突かれたような鋭い痛みがあったが、成長とともに慣れてきた所為か痛みは全く感じない身体になってしまったな・・・。)
(それでマスターの身体にナイフを突き刺して治癒時の魔力の流れをマスターに掴んでもらおうという修行をしようと思いますが宜しいですか?)
(ああ構わない。自分で自分の身体を傷つけるのは少し怖い気もするが、痛くは無いから多分大丈夫だ。)
(ではマスター、湖の畔に座って精神を集中させてください。)
俺は黙って頷くと何も考えずに座っていたが、腹の減りが気になり始め・・・。
(マスター、集中してください。肉料理のことなんて考えないで)
俺は再び集中し始めた。何も考えず、精神を集中し始める。
(マスターの準備が整ったようですので修行を開始しましょう。ではナイフを自分の刺しやすい場所に突き刺してください。)
(刺しやすい場所ってな・・・。足で良いか。)
俺は意を決してナイフを自分の右太腿へと垂直に突き刺した。
だが、血も出なければ痛みすら微塵ほども感じる事はなかった。
(ではマスター、精神集中した状態のままナイフを引き抜いて魔力の流れを感じ取ってください。)
俺は目を瞑り、精神集中しながら足に刺したナイフを引き抜いた。
いつもの様に身体の奥底から何かが湧き上がってくるような感覚があるものの何にも感じはしなかった
(マスター、治療が完了しましたが何か感じましたか?)
(いや、いつものような何かが身体の中から湧き上がってくる感覚はあるものの、それ以外は何も感じないな。)
(身体の中から何かが湧き上がるって・・・それが魔力なんです。その魔力を常に維持できるようにしてください。)
(維持できるようにか、難しいな。)
(最初から上手く出来れば修行になりません。何回も何十回も繰り返し刺しましょう!)
(刺しましょうってお前な~~。まぁいいか、さて何回目で成功するかな?)
修行開始から4時間が経過・・・。突き刺した回数は80回
(マスター、身体の中で火をイメージしてください。そして治癒時には火炎になるイメージを)
(何とか・・・。)
修行開始から9時間が経過。突き刺した回数は延べ150回以上
(マスター、今のは少し惜しかったですよ。今の感覚を忘れないようにして次行ってみましょう~~)
(次って、お前はドリフのリーダーか?)
修行開始から12時間が経過。突き刺した回数は200回以上
(マスター、振り出しに戻りましたね。どうしたんですか!?)
ルゥはそう言うものの、腹が減って如何しようもなかった。
(婆さんや、飯はまだかいの?)
(御爺さん、さっき食べたばかりでしょ。・・・って何を言わすんですか!?誰が婆さんですか誰が!真面目に修行してください!!)
そして開始から15時間が経過して1日目が終了した。
地面で寝ていた時に魔物に襲われるのは嫌なので10mくらいの高さにある木の枝まで飛びあがった。
(マスター先程のは惜しかったですね。)
(そうだな、220回が過ぎた辺りから種火のような感覚が身体の中心にあるような感覚だもんな。)
(辺りも暗闇になりましたし、修行1日目は終了ですね。)
(しかし、俺が常人だったら最初の10回目くらいで発狂して死んでただろうな。)
(そもそも、普通の人間相手にこんな修行方法は出来ませんからね。)
(それにしても、会話してる時でも精神集中を怠るなとは無茶じゃないか?)
(ちゃんと出来てるじゃないですか、その感覚のまま今日は就寝しましょうか。)
(鬼ーーー!!)
(私は精霊ですってば!!それではオヤスミなさい)
俺は木の枝の上でルゥによって強制的に夢の中に誘われ軽い成果で眠りについた。
色々な面白げな修行を四苦八苦して考えながら、何とか更新する事ができました。