第33話 朝霧の中で・・・・・・
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ギルドから何の収穫もなく宿屋へと帰って来た俺は早めの夕食を酒場で食べていた。
「あれだけの量を昼に食べて、よくそんな量を食べれるねぇ~~」
「育ち盛りですから、大量に食べて体力つけないと・・・。」
俺は食べながらも冗談半分にレインさんと話していた。
「レインさん、もうそろそろ銀貨1枚分の宿泊費がなくなる頃じゃないですか?追加として銀貨1枚を支払いますよ。」
「ああ、あれか。1ヶ月分の滞在費として受け取ったけど、まだ半分以上残ってるよ。」
「え!?でもあれから1ヶ月以上は経過してますよね?」
「確かにそうだけど、依頼とかで半月以上は宿に帰ってきてないんだから期限は早くても10日以上先だよ。」
「でも1部屋借り続けてるわけだし・・・。」
「宿の部屋が満室になったことなんて今まで一度だってないしね。気にしないでいいよ!」
「分かりました、ありがとうございます。」
夕食をレインさんとの会話とともに終了した俺は部屋に戻り、ルゥと会話する事にした。
(森行きの討伐依頼はなさそうだな・・・。この部屋で修行するのは不味いのか?)
(町の中だと何処に魔術師が居るか分かりませんよね? 下手したら隣の部屋に居る可能性だってあるんですから、此処で修行するのは不味いですよ。)
(魔術師が居ると不味いって言うのはどういうことだ?)
(忘れたんですか!?マスターの覚醒時の魔力は大きすぎるのですよ。)
(普通の魔術師で言うと何人分くらいだ?)
(普通の魔術師だと曖昧なので分かりかねますが、ガルデアに行った時のフィルさんっていう魔術師の方が居ましたよね。)
(ああ、ルゥが上級魔術師だと言っていた、あのフィルか?)
(そうです。マスターの覚醒時の魔力はフィルさんの1000人分以上です。)
(1000人以上!?流石に規格外だな・・・。)
(そんな魔力の持ち主が街中に居ると、大騒ぎになる事は目に見えて明らかですよ?)
(そういえばフィル達にはバレたけど、騒ぎになって無いところを見ると秘密にしてくれているようだな。)
(ちゃんと約束を守ってくれているようですね。まぁ、目の前で見せられない限り誰も信用してくれないとは思いますがね。)
(それにしても修行場所か・・・。依頼を受けずに森に篭って修行しようか?)
(そのほうが無難ですね。朝早くに宿を出発して森に行く事をお勧めします)
(じゃレインさんに朝食の断りを言ってくるわ。)
(あと森の果物以外の食物なら、今のうちに食料品店にて揃えといたほうがいいですよ~)
(分かった。それも買ってくるよ)
俺は剣を腰に挿すと宿屋の1階で後片付けをしているレインさんに明朝出かけるので朝食は要らないと言い、その足で食料品店へと足を運び、銀貨1枚で買えるだけの干し肉などの携帯食料を買い占めた。
『大体此れだけで4日分と言うところだな・・・。足りなければ果物で我慢するか。』
漫画的な泥棒が持つ袋のように、食料を抱えた俺は宿屋へと戻り翌朝のために早めの就寝となった。
(マスター、起きてください。そろそろ出発するとしましょう)
寝起きに自信の無かった俺は剣を握って眠りにつき、ルゥに起こしてもらった。
ちなみにハイドさんの店で買った銀のナイフは忘れないように反対側の腰に装備してある。
(おはようルゥ。じゃあ行くか!)
(はい。)
宿屋の入口から外へと出た俺は時間が勿体無いため、ルゥに周囲の気配を確かめて貰いながら森へと全速力で走っていった。
(マスター、目にも留まらぬ速さとは、まさにこのことですね。)
(このスピードなら森まで10分も掛からずに到着できるぞ。)
(そうですね。あ、マスター!1km先に人の気配がします。ゆっくり歩いてください)
この世界での距離の単位はエトがm、エルトがkmであるが、分かりにくいためルゥには現代の単位で表現してもらうようにお願いしている。
(分かった。)
俺は前方に吹き飛ばされそうな遠心力で急停止をかけた。
朝霧のために見通しが聞かない平原を、ルゥという名の剣の形をした気配発信機を使って注意深く進んでいった。
(マスター、前方300mに人の気配がします。殺気は感じられないので敵ではないと思われます。)
(分かった。一応は警戒しておくさ)
暫く歩いて行くと、前方から人型の黒い影が近づいてきた。
霧のためか輪郭くらいしか見えないが、黒い影のほうへと近寄っていくと身長が2m近くもあるガッシリとした体格の巨漢な男が巨大な斧を手に持って近づいてきた。
「ん、オヌシは冒険者か? この深い霧の中では見通しが利かんからな注意せえよ!」
目の前に現れた男は額から左目の上を通って顎までの印象的な傷がある大男だった。
「あの、あなたは?」
「人に名を尋ねるときは、自分が先に名乗るのが礼儀というものだぞ? まあいい、俺の名はガイアスだ宜しくな!」
「あ、失礼しました!俺の名はミコトと言います。よろしくお願いします、ガイアスさん」
「ミコトか、変わった名だな。おっと失礼した、人の名前に対して変わった名だとは失礼にも程がある行為だな。」
「いえ、構いませんよ。」
「そう言ってもらえると助かる。 此の先の森で凶暴な魔物が目撃されたとの情報が寄せられたからな、注意して進めよ?じゃあな!」
巨漢の男は顔に似合わず丁寧な物言いで俺に注意を促したあと、マルベリアの方向に歩いていった。
(マスター、先程の方ですが此方に対して一瞬たりとも隙を見せませんでした・・・。)
(でも、そんな悪い人には見えなかったな。丁寧で礼儀正しいし)
(それにしても、あの方はこのような場所で何をしていたのでしょう?)
(まあ、いいさ。森に急ぐとしようか)
ガイアスと名乗った男を気にしながらも森へと向かって歩いていった。
その頃、挨拶とともにすれ違ったガイアスはというと・・・。
「良い目をした青年だったな、いつか手合わせをしてみたいものだ。 おっと、こうしては居られんな早く帰らねば、またシルヴィアに小言を言われてしまうではないか!」
ガイアスは図体に似合わない理由で急いでマルベリアへと帰っていった。
此処に来て、謎の男出現です。