第28話 護衛依頼⑤ 到着
やっと商業都市ガルデアに到着です。
マルベリアを出発して3日目、秘密を明かしあった俺達は色々な事を話し合っていた。
この頃にはフィルの刺々しさもなくなり和気藹々と会話を楽しんでいた。
「シルヴィア様、商業都市ガルデアが幽かに見えてまいりました。」
「やっと着きましたか、それでは私は着替えます・・・。覗かないで下さいね」
「大丈夫ですよ。私が見張っておくからシルヴィア様は安心して着替えてね。」
街道で馬車を停めてしまっては周囲に不振がられる為、俺とグレイは御者席に移動しシルヴィアとフィルは荷台で着替えを始めた。
数分後には商業都市ガルデアに到着し、馬車は街の門を潜り停留所に停止させた。
到着したと同時に荷台の幕が開かれ男装姿のシルヴィアが姿を見せた。
「シルバード様、街に到着したので此れからガルデアの中を見て周ろうと思います。」
「はい、どんなものを扱っているのか武器屋や防具屋を覗いて見ましょうか。」
「俺はどうするんだ?一応護衛として着いて来ているわけだが・・・。」
「ミコトさんは自由に街を探索なさって下さい。そうですねぇ~約6時間後に此処で待ち合わせする事にしましょうか。」
「分かりました、ちょっと見てみたいものがありますので失礼します。」
「ミコトさん、あまり騒ぎ起こさないで下さいね。」
「いえシルバード様、寧ろ騒ぎを起こしてもらった方が情報を収集しやすくなります。」
「分かりました。しかし、俺はどういう風に見られているんだ? 決して喧嘩っ早い性格ではないぞ。」
俺はブツブツと言いながらその場から立ち去り路地の奥へと姿を消した。
「では私達も参りましょうか。」
「「はい。」」
~SIDE ミコト~
シルヴィア達と別れた俺はハイドさんに事前に教えてもらっていた武器屋を梯子していた。
「やっぱり竜の鱗なんて見当たらない物なんだな~」
(マスター・・・まだ諦めてなかったんですか!?)
(いや剣はルゥだけで十分だよ。気になるのは、一体幾らで売られているのかって事だけだよ。)
(鱗の希少価値の高さから言っても最低でも金貨5枚は見ておいたほうが良いと思いますよ。)
(金貨5枚!?幾らなんでも高すぎないか?)
(店によっては客をみて値段を吊り上げる業者もいますからね・・・。それよりもマスター、後方から頻りに後をついてくる男が物陰から此方を伺っています。)
(やっぱり食いついてきたか・・・。)
俺はシルヴィアに言われた騒ぎを起こすためにワザと色々な店で銀貨を道具袋から零してみたり、地面の凸凹で蹴躓いて財布の中身を散乱させたりと人込みの多い場所で数回にわたって繰り返し行ってきた。
その都度、周囲から楠見笑いが聞こえてきたりもしたが、ほんの数人だけは耳打ちして此方の様子を伺っている男達が常に数人見受けられていた。
「おぅ兄ちゃん、羽振りが良さそうじゃねえか。少し貸しちゃあくれねえか?」
「お前らは何者だ?何の用で俺を付け狙う。」
「そんな事はどうでもいいんだよ。 テメエはさっさと有り金を全て差し出せばそれで良いんだ。今なら命までは取らねえで置いてやるよ。」
「断るといったら?」
「馬鹿な奴だ。おい、お前ら出て来い!」
男の掛け声を合図にして路地の細道からゾロゾロと柄の悪そうな男達が手に各々の武器を持って集まってきた。その数、凡そ100人。
「此れだけの人数を前にまだ軽口を叩けるか!?」
「頭、それは無理でしょ?ほらコイツ怖くて震えてますぜ。」
「全くだ、身の程知らずが。俺達の縄張りに入った時からテメエを狙ってたんだよ、覚悟しな!!」
「此れだけか?」
「ああ!?なんだって?もう一度言ってみな?」
「たった此れだけの人数で俺に勝てるとでも本気で思ってるのかと聞いたんだ。」
「舐めやがって・・・。野郎ども完膚なきまでに痛めつけてやりな!!」
「さて、やるか。うまく殺さないように手加減しないとな・・・。」
(マスターの力で言えば百分の一ぐらいならギリギリ殺さないで済みます)
(わかった、うまく惹きつけてシルヴィアの仕事をやり易くするぞ)
「何をブツブツ言ってやがんだ!?命乞いならもう手遅れだぜ。」
四方八方から手にナイフを持ったゴロツキが俺に向かって襲い掛かってきた。
一方その頃のシルヴィア達はというと・・・。
~SIDE シルヴィア~
「ご主人、もう少しまけて貰えませんか?」
「そうは言うがね、此方もギリギリな価格なんだよ?あんたは俺に首を吊れというのかい?」
「分かりました。他の店でもっと安く仕入れしたいと思います。」
「何処の店も似たような物だと思うよ。何せ、あいつ等に脅されている店が多いからな・・・。」
「『あいつ等』とは何の事なんですか?」
「それは言えねえ。言ったら何をされるか考えただけでも恐ろしい・・・。」
「シルバード様、そろそろ行きましょうか。エフィルも痺れを切らせております。」
「分かりました。ではご主人、失礼しますね。」
私達は十数件もの武器屋や防具屋・道具屋を回ったが何れの店の店主も最後には『あいつ等』という単語を残して絶句してしまうほどだった。
「一体『あいつ等』とは何なのでしょうか?何に怯えているのでしょう?」
「シルバード様、お疲れ様です。お飲み物をどうぞ」
「ありがとうございます、ドレイクさん。」
ドレイクが持ってきた紫色の一見、飲み難そうな飲物は見た目とは裏腹にとても美味しく疲れが吹き飛ぶような感覚さえ憶えた。
「ミコトさんは如何しているのでしょうか?怪我などしてなければ良いのですが・・・。」
「シルバードさま~~その心配は要らないと思うよ?だってミコトの能力がアレだから。」
「そういえばそうでしたね。問題なのは寧ろ襲い掛かっている人たちの方でしたね。」
「まあ、そのうち何らかの騒ぎが起こると思いますので気長に待っているとしましょう。」
私達が寛いでいる正にその時、裏路地で騒ぎが起きているとは思いもよりませんでした・・・。
いつのまにやら総合評価ポイントが2000を突破していました。
読者の皆様方の御愛読、まことに嬉しく思います。
これからも「異世界を渡りし者」をよろしくお願いいたします。