第27話 護衛依頼④ 秘密
秘密を如何いう風に暴露するか散々悩みましたが手っ取り早い方法を選択しました。
その日の夜、剣を握ったまま馬車に横になっている俺の姿に怯えてドレイクから呻き声のような声が聞こえたが気にしないでおこう。どんな夢を見ているのか予想はできるが・・・。
(マスター、思い切って賭けに出たんですね?)
(まさか、あそこまで分かりやすい反応を見せてくれるとは思わなかったけどな。)
(それにしても、魔力を指摘された時のエフィルさんの表情は忘れようにも忘れられませんね。)
(ルゥも人が悪いな。)
(私は人ではなく精霊ですから。)
(屁理屈だなぁ~~~)
(マスターはシルバードさん達の正体について予測できますか?)
(分からないけど、ドレイクの気配は最初から不自然だったのは分かってたよ。)
(確かに商人としては身体の鍛え方に無理がありましたからね。)
(明日が楽しみだな!)
(マスター、そろそろ朝です。起きてください)
ルゥに夢の中で起こされた俺は皆がまだ寝入っているうちに森の中へと入り、ルゥに教えてもらいながら森に自生している食べる事ができる木の実を大量に採取してきた。
「此れだけあれば足りるかな?さて、馬車に戻るとするか!」
俺が馬車へと戻ると既に起きていたエフィルとドレイクが俺を探していた。
「あっミコト!?何処に行ってたのよ、逃げ出したかと思ったじゃない!!」
「何処にって朝飯にしようかと思って木の実を採取してきたんだけど?」
「飯なら荷台に山ほどの肉が積んであったのに」
「朝から肉を食う気か!?」
「何か問題でもあるのか?」
俺がドレイクと朝飯の事で言い争いをしているとシルバードが起床してきた。
しかも格好はといえば、いつもの格好ではなく気が緩んでいるのか寝ぼけているのか、胸元に2つの膨らみがハッキリと分かるような薄着だった。
「シ、シルバード様!?目を覚ましてください!!」
「え?ええぇぇぇ!!?見ないで下さい!!」
ドレイクの呼びかけで覚醒したシルバードは絶叫とともに目にも留まらぬ速さで馬車に飛
び込んだ。
「シルバードって女だったんだな・・・。それで昨日の事に納得がいった。」
「すまんな。性別を偽ったほうが、旅をし易くて良いとシルバード様が仰られていたから・・・。」
待つこと数分後、顔を真っ赤に染めたシルバードが馬車の荷台から姿を現した。
男装は既に辞めており、柔らかな身体のラインを露にしてゆっくりと歩いてきた。
「私が寝ぼけていたばっかりに、こんな秘密までばれてしまって・・・。」
「まぁいいさ、朝飯を食って出発しようか。」
「変ですね。私は寝る時に男装を解いたつもりは無いのですが・・・。」
シルバードがエフィルに視線を当てると、そそくさと逃げるようにエフィルが離れていった。
「そうだったのですね!?エフィルが犯人でしたか!!」
「シルちゃん許してーーー!!」
「許しません!罰として朝食抜きです!!」
「そんな~~~」
十数分後エフィル以外が朝食を食べ終わり、ガルデリアに向けて出発した。
朝食抜きのエフィルにたずなを持たせるわけにはいかないと、今日はドレイクが御者席に座っている。
「お腹空いたよ~~~」
「若干一名、五月蠅いのが居ますが私達の秘密を明かすことにしましょう。」
「お腹~~~」
余りにも五月蠅いので朝食の残りとして置いといた林檎に似た果物を2個エフィルに手渡してやった。
「朝食ゥーーーー!!」
「ゴホン!さて話の続きですが、私達はマルベリア近衛騎士隊の者です。商人の護衛としてミコトさんを騙したのは謝ります。申し訳ありませんでした。」
「なんでギルドにそんな依頼を?」
「商人と冒険者の護衛という風にして街に入れば怪しまれる事は無いだろうと上層部が判断し私達が任に就くことになりました。」
「だが、雰囲気を見る限りではエフィルは良いとしても、ドレイクはとても商人には見えないぞ?」
「それは私も同感でしたが、上層部の決定は絶対で・・・。」
「その上層部が一番の問題じゃないのか?」
「その通りだと私も思います。それはそうと私達の秘密を明かしますね、私はマルベリア第三近衛騎士隊副隊長のシルヴィアと申します。偽名を使っていてすみませんでした。」
「ミコト!果物アリガトね。私はシルヴィア様の部下の魔法騎士フィルだよ、宜しくね。」
「で俺がフィルと同じく、シルヴィア様の部下のグレイだ。改めて宜しくなミコト!」
「この事はギルドのローラは知っていたのか?」
「勿論知っているわよ!知らないのは冒険者のミコトだけって言う事になってたのに・・・。」
「まさかミコトさんに魔力があるなんて思っても見ませんでした。」
「昨日も言ったけど、俺の魔力の事も含めて他の皆には内緒にしといてくれよ?」
「それは此方も同様です。ガルデリアに着いても、本名は出さずに偽名で呼んでくださいね。」
「ところでミコトの秘密って何なの?魔力が感知できれば分かるって言ってたけど?」
「ああ、俺がこれから『ある事』をするからフィルは俺の魔力を感知してくれ!」
「分かったわ。いつでも良いわよ!」
フィルは掌を俺に向けて俺の方を凝視し始めた。
「じゃあ行くぞ?」
「ええ、何時でも!」
俺は荷台に置いてある小型のナイフを手に取ると自分の腕へと突き刺した。
「ミ、ミコトさん!? 何を!!」
「此処からだフィル、見てろよ!」
俺が自分の腕からナイフを引き抜くと一瞬にして傷口が塞がり、フィルは驚愕の表情を見せた。
「フィルには分かったみたいだな。これが俺の秘密だ!」
「フィル?どういうことなんですか!?説明してください!!」
「ミコトに言われて魔力を測っていたんですが、ナイフを突き刺すところまでは極微量な魔力しか感知できなかったのにミコトがナイフを腕から引き抜いた瞬間に見たことも聞いたことも無い膨大な魔力がミコトの身体から発せられ、傷が癒されると同時に魔力も元の微弱なものに戻りました。」
「つまり、ミコトさんは魔力で傷を回復する事が出来るという事ですか!?」
「その通りだ。怪我に慣れてきた所為か痛みすら感じないんだがな。」
「これがミコトさんの秘密・・・。言えなかった訳がやっと分かりました。」
「くれぐれも他の人には秘密にしてくれよ?約束だからな!」
「分かっています!!貴方達も約束できますね?」
「勿論ですよ!それに話したとしても信じては貰えませんよ。実際にこの目で見ないとね」
「俺もわかりました!俺は魔力を感じる事は出来ませんがミコトは信用できる男ですから!!」
「俺もシルヴィア達のことは外部には絶対に洩らしません。拷問されても無意味ですしね!」
こうして俺達4人は秘密を明かしあい、ガルデリアへの道を只管進んだ。
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