第26話 護衛依頼③ 疑惑
前回の続きを悩みながら、なんとか形に出来ました。
かなり無理矢理な展開になってしまいましたが・・・・・・・・・。
ドレイクたちに傷が無い事を証拠に見間違いだと納得させるのに2時間ほどかかり、終わった頃には日が暮れ始めていた。
「こんな遅くに馬車を走らせるのは自殺行為だから今日は此処で一泊する事にするわ。」
「じゃあ俺は燃やせるような小枝を集めてくるとするか。ミコトはシルバード様とエフィルを守ってくれ。」
「分かった。此処はまかせろ!ドレイクも気を付けろよ。」
「俺は大丈夫だよ。」
そう言ってドレイクが暗い森の中へとランプを持って入っていった。
この時点で馬車の中に残っているのは、あれだけの説明をしたにも拘らず未だに納得していないのか俺のほうを睨みつけるシルバードと腕をシルバードに絡ませながら俺に視線をぶつけているエフィルが此処に居る。
『ドレイクの奴、小枝を集めに行くと言ってこの場から逃げたんじゃないだろうな。』
その頃、森に入っていったドレイクはというと・・・。
「あんなギスギスした雰囲気の中に座ってられるかよ!ミコトにも興味はあるが俺の心が持たないな」
ドレイクは愚痴を言いながらも、しっかりと薪を集めている姿は尊敬に値した。
此処で馬車の中に居る3人に話は戻る・・・。
「さて、私は確かにミコトさんの脇腹に刺さった魔物の角を見ました。それなのにどうしてミコトさんには傷跡すら残ってはいないんですか?説明してください!!」
「だから、それはさっきから何回も説明している通り、シルバードの見間違いだと・・・。」
「3人が3人とも幻覚を見ていたと仰るのですか?」
「それともミコトってば、実は人間じゃなく魔物が化けている姿だとか?」
「そうなのですか!?」
「そんなわけ無いだろ!!」
「じゃあ、どういうことなんですか!!」
『どうやって説明すればいいんだ・・・。不死身だなんて言えるわけがないだろうし』
(マスター、言ってしまいません?)
(うぁ!吃驚した、何時の間にか剣を掴んでたのか・・・。言える訳が無いだろ、不死身の人間なんて存在する筈が無いからな)
(いえ、そうではなく。魔力で自動的に回復するという事ですよ)
(あれはルゥのように魔力を感知できないと不可能だろ?)
(いえ、魔術師なら誰にでも感知する事は可能です。)
(魔術師なんて此処には居ないぞ!ルゥの存在も信じてくれないだろうし)
(あのエフィルって人なんですが上手く隠せては居ますが、あの方から魔力を感じます。おそらくは魔術師ではないかと・・・。)
(エフィルが魔術師?そうは言っても杖なんて見当たらないぞ。)
(エフィルさんの正体については分かりかねますが、上位魔術師なら杖無しでも魔法を使う事が可能です)
(とは言っても証明できるか?)
(思い切って賭けに出ましょうか?『こちらも話すから其方も秘密を話せ』と・・・。)
(魔術師であるという理由はどうする気だ?)
(適当にでっち上げでも良いですから『エフィルから魔力を感じる』とでも言えば良いじゃないですか)
俺がルゥと話している間は馬車の中は沈黙だったのだが、遂に耐え切れなくなったのかエフィルが声を大にして話しかけて来た。
「いいから!あんた、さっさと喋っちゃいなよ!!」
「エフィルさん、強要してはなりません! 此処はミコトが話してくれるまで待ちましょう。」
「でも~~~。」
「おっ? 話は済んだのか?」
と、其処へ小枝を山ほど抱えたドレイクが馬車へと戻ってきた。
「まだよ!!全然喋ってくれないのよーーー!」
エフィルが返事するや否や、ドレイクは『しくじった!』というような表情を見せていた。
「ミコトさん、誰にも言いませんから話してくれませんか?お願いします」
こうなったら一か八かだ!ルゥの提案を試してみるか。
「分かったよ、話すよ話せばいいんだろ!?」
「最初から、そう言えばいいのよ!!」
「エフィルさん、静かにしてください。落ち着いてミコトさんの話を聞きましょう?」
「は~い」
「俺から話す前にエフィルに聞きたいことがあるんだが良いか?」
「私に聞きたいこと?構わないけど・・・。今の話と関係あるの?」
「ああ、これがハッキリすれば俺の秘密が証明できるからな!」
「分かったわ。どんな事を聞きたいの?」
「エフィルの正体が知りたい。」
「「「!!?」」」
あからさまに自称商人の3人の表情が一転した。
その中でも特にエフィルは蛇に睨まれた蛙のように、額に汗を浮かべていた。
「な、なんの事よ!?私はただのシルちゃんに仕える商人よ!他に何があるっていうの?」
「いやエフィルが商人だというなら、その膨大な魔力の秘密を聞かせてくれ!」
あの一言で形勢逆転したようだ。見るからにドレイクとシルバードに落ち着きが無くなったようだ。
「なんで魔力のことなんて分かるのよ!?ミコトはただの剣士でしょ?魔力なんて関係ないじゃない」
「その事が俺の秘密の一つなんだよ。俺は剣士だが微量な魔力も持ってるんだ、だから魔術師の魔力が見て取れるってわけだ。」
「私の魔力が漏れ出してミコトに伝わったって事?そんな馬鹿な話はないわよね」
「エフィルがそう言っても、シルバードとドレイクの様子を見たら一目瞭然なんだが?」
「え!?ちょっとシルちゃん、どうしたのよ震えちゃって・・・。」
「そうか、3人ともに秘密があったんだな? それなのに俺を尋問するとは、諦めて全てを話せ!!」
「そ、そんな事無いわよ・・・。ほ、ほらドレイクってば!」
「エフィルさん、もういいです。隠していても何時かは、ばれる事ですから・・・。」
「でも秘密だって。」
「構いません!責任は私が取ります。」
「エフィル諦めな! でもま、ミコトに魔力があったなんてな予想外だぜ!」
「今から話したいのですが、日が完全に落ちてしまいました。今日は此処までにして続きは明日ゆっくりと話しましょうか。ではエフィル?」
「はい。」
エフィルは返事をすると馬車の荷台をカーテンのような物で仕切り2分割にした。
「こっちは女性の寝床だからね!あんた達は入ってこないでよ!!」
そう言ってエフィルとシルバードは姿を消した。
「ってちょっと待て!シルバードは良いのか?」
「ミコト、シルバード様は良いんだ・・・。」
俺は何か分からないまま、その日は眠りについた。
御感想・御批評など、お待ちしています。