第25話 護衛依頼② 襲撃
お待たせしました!! 第25話、完成いたしました。
俺がシルバードに護衛として雇われて、マルベリアを出発してから数時間が経過した。
護衛と入ってもまるで襲撃はなく、馬車の座席で紅茶を進められている状態だった。
いつ魔物や盗賊が来ても良い様にと常に剣の柄を片手で触っていた。
「ミコトさん、もう少し落ち着いたらどうですか?お茶でも飲んで気を静めてください。」
「あ、ああ。ありがとう、頂くよ」
「ミコト、護衛としてじゃなく友人という形で座ってても良いんだぜ!」
「シルちゃ~ん、ミコトに変なことされてない?ミコト!私の見えない所に居るからってシルちゃんに手を出さないでよ!?」
エフィルはというと俺達みたいに馬車の中に居るのではなく、シルバードから罰として御者席で馬のたずなを引いていた。
「安心しろ、俺は同性には興味はない!」
「同性って・・・。あぁ、そうだったわね。なら安心か」
「エフィルは何のことを言っているんだ?
「あの女性は時々変なことになるので、あまり気にしないで下さい。」
「シルちゃん、酷~~い。」
「・・・罰として4時間追加!」
「ひえぇぇぇぇぇ・・・・・・。ミコト!恨むわよ」
「ちょっと待て!此れは俺のせいなのか?」
「エフィル、頑張れよ!」
「人事だと思ってぇ!!」
この展開に付いて行けない俺は顔だけをシルバードの方に向けて、ルゥと会話する事にした。
(なぁルゥこいつ等、本当に商人だと思うか?)
(マスター、気持ちは分かりますが、危険な気配はしないので大丈夫ではないでしょうか?)
(まぁ今のところは商人に見えないだけで、それ以外に怪しいところは無いんだがな。)
(私的には商人という事よりもエフィルさんから流れている魔力の多さが気になりますが・・・。)
(それはエフィルが魔術師だということか?)
(見た感じでは杖を持っている様子はないので大丈夫だとは思うのですが・・・。)
(それはそうと俺が居る理由は護衛だからな。魔物や盗賊の気配を頼むぞ!)
(はい!お任せ下さい。・・・それはそうとマスター、呼ばれていますよ?)
(ん?)
俺は剣から意識を離し目の前に集中するとシルバードがしきりに声を掛けていた。
「ミコトさん、どうしたんですか?急に黙ってしまって、何かありましたか!?」
「ミコト、心配事があるなら相談に乗ってやるぜ?」
「大した事ではありません。俺の仕事は護衛ですからね、魔物の気配が無いか感覚を鋭くしていたんですよ。」
「大丈夫ですよ、いざという時にはドレイクさんもエフィルさんも居ますから。」
「えっと、この2人は商人ではないのですか?」
「あっ・・・! えっと、2人は商人ですが腕には自信があると思いますよ。」
「凄いんですね。普通の商人とは気配が違うのは、そのためですか。」
俺がシルバードと会話していると剣の柄を通じてルゥが話しかけて来た。
(マスター、前方400mのところに魔物の気配が3つほどあります。注意してください)
(分かった。馬車を止めてもらおう)
俺は何かに気づいたように御者席へと向かった。
「エフィル、注意しろ!近くに魔物の気配がする。」
「本当でしょうね!?何にも見えないわよ?」
(マスター、残り300mです。グランオークが3体確認できました。)
「ああ、間違いない。約300エト先で魔物の気配がする。」
「300エトって直ぐじゃない!? 突破するわよ!何かに捕まっててよ!!」
(ルゥ、グランオークってどんな魔物だ?)
(マスターの世界でいうなら牛みたいな亜人という所ですね。!!マスター、グランオークが此方に向かって突進しだしました!衝撃に備えてください)
「エフィル、注意しろ!!魔物が此方に向かって動き出した。体当たりする気かもしれん!!」
「私も気づいたわ!大きいのが3体ほど走ってくる!?」
「エフィルさん、避けてください!!」
「もう、間に合いましぇ~~ん!」
次の瞬間、馬車の横っ腹に3体の魔物が体当たりをしてきた。
「エフィル!馬車を止めてくれ、俺が始末する!!」
「言われるまでも無く、魔物に無理矢理停止させられたわよ!」
「シルバード様のことは俺に任せろ!ミコト、魔物の始末を任せたぞ!!」
俺は馬車が完全に停止した事を確認すると荷台から剣を構えて飛び出した。
(マスター、グランオークは力が異常なほど強い魔物です。体当たりに注意してください!)
ルゥの助言を聞きながら飛び出した勢いのまま魔物に切りかかり1体目を一刀両断にして撃破した。
「まずは1体目撃破!!」
魔物は仲間が俺に殺られた事から、怒りを露にして狙いを馬車から俺に移して襲い掛かってきた。
「改めてみてみると某ゲームに登場するミノタウロスみたいだな。」
(マスター2体目が左後方より向かって来ています。)
俺はルゥの助言後、振り向き様に剣を横薙ぎにして2体目の首を刎ねた。
「さて、残る魔物は1匹!何処に行った?」
左を見たり右を見たりしても3体目の魔物が見当たらなかった。俺の後ろには馬車があるため後方からの襲撃は不可能と思われたが・・・。
(マスター、真後ろに居ます!避けてください)
俺は無防備のまま魔物の体当たりを喰らってしまい、前方へと吹き飛ばされた。
吹き飛ぶ直前に剣が馬車の幌の部分を切り裂いてしまい、シルバード達に戦いを見られてしまった。
「ミコトさん!? 大丈夫なんですか?」
「ミコト!」
シルバードの声がした直後、片膝立ちで地面に着地して問いかけに答えた。
「俺は大丈夫だから馬車から外には出るなよ!!」
(マスター、2回目が来ます!態勢を整えてください。)
俺が攻撃に備えて立ち上がろうとした時、魔物の頭に生えた角が俺の脇腹を串刺しにした。
「ミコトさーーーーん!!!」
「ミコトーーーーー!!!」
「あの馬鹿、死んじゃったら誰が私達を守るのよ!」
魔物は俺が事切れるのを確認せずに脇腹から角を抜き取ると馬車の方へとゆっくり歩いていった。
まるで殺しを楽しんでいるような余裕の表情で・・・。
「こうなったら俺がミコトの仇を・・・。」
ドレイクが馬車を飛び出そうとした瞬間、魔物の首の付け根から1本の剣が突き出していた。
「俺の死を確認しないまま背を向けるとは随分と余裕だな!!既に聞こえてはいないだろうがな。」
俺が剣を魔物の首から抜き去った瞬間、大量の血飛沫とともに前のめりに倒れて動かなくなった。
(マスター、心配させないで下さいよ~~~。)
(俺の体質は知ってるだろ?)
(知ってますが串刺しにされては生きた心地がしませんよ。)
(この魔物の証明部位は角でいいのか?)
(はい。左右の角を2本とも切り取ってください。)
俺が持っていた剣で角を切り取って馬車へと戻ると、3人が3人とも1点を見つめたまま微動だにしていなかった。ドレイクに至っては飛び出そうとした瞬間のアンバランスな態勢で固まっているようだ。
「何やってるんだ?魔物は始末したから出発しようぜ」
俺の一言で我に返った2人は俺へと詰め寄り、ドレイクはそのまま地面に落下して気を失った。
「ミコトさん!? お腹刺されたのに平気なんですか?」
「腹を刺された?見間違いじゃないのか、何処にも傷なんて無いぞ?」
俺は鎧を脱いで脇腹に穴の空いたシャツを捲るが何処にも傷はなかった。
「何処にも傷なんてありませんね・・・。やっぱり見間違いでしょうか?」
「でも3人とも見間違えるなんてこと有り得るのかしら・・・。」
数分後、我に返ったドレイクからも詰め寄られ、言いくるめるのに苦労したのは言うまでも無い。
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