第24話 護衛依頼① 受諾
如何にかして展開を変えようと考え、一風変わった内容になってしまいました・・・。
俺が掲示板で依頼を探していると、やっとギルド長から解放されたのかローラがジト目で俺の方を睨みつけていた。
ローラの視線に耐えながらもA級以上の依頼を探していると珍しい依頼が見つかった。
「え~と・・・」
【S級護衛依頼:マルベリアから商業都市ガルデアまで往復5日間の道中の護衛】
報酬は銀貨80枚 盗賊に襲われる可能性が大ですので用意を周到にお願いします。
危険度の問題から、最低でもBランク以上の冒険者を指定させていただきます。
「ガルデアまでの護衛か・・・。竜の鱗は諦めたけど、あの街には興味あるし受けてみようかな。」
俺は依頼書を掲示板から剥ぎ取るとローラの面前に依頼書を差し出した。
「この護衛依頼を受けたいんだけど・・・。」
「・・・・・・・・・は?」
「だから、依頼を受けたいんだってば!」
「この依頼を受けたいんですか・・・そ~ですか・・・」
「ローラ、いい加減機嫌直してくれよ!悪かったてば」
「私がどれだけ、あの嫌なギルド長からネチネチと説教を喰らったかミコトさんには分からないでしょうね。」
「分かった。今度なんでも言う事聞くからさ、機嫌直してくれよ~」
「其処まで言うなら分かりました。依頼主を呼んできますので少し待っててくださいね。」
ローラがギルドの外へ足を踏み出してから数分後、商人とは思えないような立派な体格の男がローラに連れられて俺の前に姿を現せた。
俺が想像していた弛んだ御腹に2段顎、脂ぎった顔という印象は悉く砕け散り、現れた商人は街を歩くだけで女性が寄ってきそうなほどのハンサムな男だった。
「シルバードさん、此方が依頼を受けてくださったミコトさんです。」
「君が私の依頼を受けてくれた凄腕の剣士かい?ローラさんから話は伺っているよ、期待してるからね。」
俺は商人の笑顔に引き寄せられ、同姓に惚れてしまいそうになった。
『俺は決して危ない趣味などは持ち合わせてはいない!俺はノーマルだ!!』
俺は剣を力一杯握り締めて、俺の気持ちを全否定するように頭を振って気持ちを整理した。
(マスター、気持ちは分かりますが落ち着いてください!!私を壊さないでーーー!!)
(あ、すまない。大丈夫かルゥ!?)
(私は多少の傷なら魔力で自己修復可能ですが、一旦砕けてしまうと修復までに、とても長い年月が必要になるんですから注意してくださいよ~~~)
「ミコトさん?どうしたんですか険しい表情で剣を見つめたりして?」
「あ?なんでもないよ、護衛をしながら5日間という長い道のりを進まなくてはならないから気合を入れていただけだよ。」
「それならいいんですが、なにやら思いつめた表情をしてらしたので心配しました。」
「失礼しましたシルバードさん、俺が護衛でも構いませんか?」
「先程言ったでしょう?『期待している』と、頑張って私を守ってくださいね。 あと、私の事はシルバードと呼び捨てになさっても結構ですよ?」
「了解いたしました。それならば俺の事もミコトと呼び捨てにしてください。」
「外に私の仲間とともに馬車が用意してありますからミコトさん・・・いえ、ミコトの用意が出来次第出発しましょうか。」
「俺の用意は既に万端、整っています。直ぐにでも出発いたしましょう」
「聞いていた通りの御方ですね。では行きましょうか」
颯爽と歩き出すシルバードを手で押さえ、俺が剣の柄を手で押さえながら先頭を進みだす。
「ミコトさん?どうしたのですか?」
「依頼を受けてシルバードと会った時から護衛は始まっています。前は俺が歩きますからシルバードは俺の後ろについて着てください。」
「ミコト・・・気持ちは分かりますが、まだ町の中ですし、だいいちギルドの中ですよ?」
「いえ、他の冒険者や町人に姿を見せかけた盗賊が居るとも限りませんから。」
「其処まで言うのなら、分かりました。」
結局、懸念していた盗賊の襲撃は起きずに街の外に止めてある立派な馬車へとたどり着いた。
「護衛の冒険者とともに帰りましたよ。みんな降りて来てください」
「シルヴ・・・いや、シルバード様。お帰りなさいませ」
現れたのはシルバードと同じく、とても商人には見えない上半身傷だらけの屈強な男だった。
名前を呼び間違えたのが無性に気になるところではあるが・・・。
「ミコト紹介しましょう。私の旅の仲間であるドレイクです。」
「あんたが依頼を受けてくれた冒険者か、俺の名はドレイクだ宜しくな」
「此方こそ、よろしくお願いしますドレイクさん。俺はミコトと言います」
「『さん』付けなんてされると、むず痒くて我慢できねえぜ!俺の事はドレイクでいいぜ!!」
「さて、もう一人・・・ってエフィルさん?何処に居るんですか?」
シルバードは商人の物とは思えないほどの立派な造りの馬車の客席を見るが、誰も見当たらず馬車の周りをグルグルと探し回っている。
「ドレイクさん、エフィルさんは何処に居るのです?」
そう言った直後、屋根の上から誰かが飛び降りた事に逸早く気づいた俺は一瞬で間合いを詰め、不審者の喉下に剣を突きつけた。
「貴様、何者だ!?盗賊の一味か!!」
その者は暗殺者にしては髪が腰ほどもある長髪で、動きにくそうな衣服を身に纏っていた女だった。
「ミコトさん、ちょっと待ってください!!その者は私の仲間のエフィルです。」
「え!?」
(マスター、私もこの方からは殺気は感じられません。)
俺は剣を引くと、エフィルと呼ばれた女性はヘナヘナと地面に崩れ落ちてしまった。
「行き成り何をするのよ。ちょっと、シルちゃんに抱きつこうと思っただけなのにーーー!!」
「エフィルさん、此方は今回の依頼を受けてくださったミコトさんです。それにしても・・・不意打ちは止めてくださいと、あれほどお願いしたはずですが?」
「固い事は言いっこなしだよ、私とシルちゃんの仲じゃない。」
「ミコト凄えな、俺でさえ目で追えないほどの早さだったぜ!!」
「ミコトって言ったっけ?シルちゃんは私のだからね!絶対に取らないでよ?」
「聞き捨てなりませんね、私が誰の物なんですかエ・フィ・ル・さ・ん?」
「はははっ・・・。目が笑ってないよシルちゃん?」
前途多難な始まり方をした今回の護衛依頼・・・果たしてどうなることやら。
それにしても呼び捨てで良いと言ったのに何時の間にやら“さん”付けに戻ってるな・・・。
御感想・御批評をお待ちしています。