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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
天界編
230/230

最終話 敗北…………

天界へと侵攻してきた魔将軍によって乗っ取られたモニター。

更にモニターを通じて此方側に宣戦布告をする魔将軍の長と名乗る、ハーディンという名の一人の男。


そしてハーディンと名乗った魔将軍を除く3人が攻撃を始めて1時間も経たないうちに、強固な扉であるはずの天空門が崩壊寸前にまで追いやられている。

やがて天界門が崩れる振動は天界最奥にある、この部屋まで伝わってきていた。


唯一稼働するモニターは次第に崩壊していく天界門だけを映し出している。


一方で魔物や悪魔達と戦っているヴァルキュリア隊や悪魔討伐隊はというと…………。

多大な損害を出したものの、魔将軍以外の軍勢を8割方倒していた。

だが、またもやハーディンの腕の一振りで数百人単位の戦士が為すすべなく吹き飛ばされていく。


それでも負けじと神や討伐隊、ヴァルキュリア隊が果敢に切りかかるも決定打は与えられずにいた。

逆に為すすべなく簡単に倒されていく仲間たちを見て、士気を落としている事が問題になっている。


魔将軍に乗っ取られたモニターで、此方を心理的に貶めているのだろうか? 

メタトロンの操作で予備のモニターが次々と空中に映し出されるのだが、そのどれもが此方の操作を受け付けない。


しかも悪魔討伐隊やヴァルキュリア隊が倒される場面ばかり映し出されている。


そして遂に天空門が完全に破壊され、4人の魔将軍が天界内へと侵入してくる。


「神王様、どうかお逃げください! 念のために天空門の行先を天界最下層に設定してありますが、奴らがこの場所に辿り着くのも時間の問題です」

「なっ!? 皆を見捨てて俺だけ逃げ延びろというのか!」

「僕もメタトロンの案に賛成だね。君を2回も失いたくはないからね」

「クロノスまでそんな事を…………」

(本来、私のような物が口を挟むべきでは無いのかもしれませんが、私もクロノス様や天使様方と同意見です)


メタトロンやクロノス、果てはルゥにまで諭された俺は『脱出する』という考えと『皆を見捨てる』という考えで悩みまくっていた。


「いや、それでも、未だ戦っている皆を見捨てて俺だけ逃げ延びるわけにはいかない!」

「神王様、どうかお許しを………クロノス様、後はお願いします」

「任せてよ。気休めにしかならないと思うけど、君たちの無事を祈っているよ」

「有難うございます。お気をつけて」


 そう言葉が聞こえた次の瞬間、此方に掌を向けて何やら聞き覚えのない言葉を呟く、メタトロンの姿が。

俺の後ろではクロノスが玉座にある、スイッチのような物を操作してトランスポートを出現させている。


最後の光景として憶えているのは、ウリエルとガブリエルが必死に俺に向かって頭を下げている姿と、今まさにこの執務室の大扉を無理やりこじ開けようとする音がミシミシと聞こえてきていた。

そう聞こえるという事は、扉を警護していたサンダルフォンや天界通路を守っていたカマエル達が倒されたという事だろうか…………。





そして、あれから一体どれだけの時間が経過したのだろうか。


俺が眼を醒まして最初に見た光景は何処か懐かしい、窓ガラスの向こうに超高層ビルが立ち並んでいる光景だった。

空には轟音を靡かせながら飛ぶ飛行機やヘリコプターがいる。

いずれも異世界では目にする機会がなかったものばかりだ。



俺の目の前には此方を見て悲しげな表情を浮かべるセフィリアとクロノス、それとガブリエルによく似た女性が居た。

まさにガブリエルの翼を無くして、髪を黒く染めれば目の前の女性になるんではないかと思うほどによく似ている。


ルゥが宿る剣はというと、何故か豪華な装飾を施されてアクリルケースの中に鎮座している。


「此処は何処だ。俺は天界の執務室に…………!?」

「その事に関しまして、まずは謝罪しなければなりません」


目の前に居る、ガブリエルによく似た女性がそう言葉を呟いた途端、目の前で片膝を折り謝罪の言葉を口にした。


「申し訳ありませんでした! この罰は如何様にもお受けいたします」

「何を言っているか分からないな。なぁクロノス、この女性は一体誰なんだい? 背格好はガブリエルによく似ていると思うけど」

「彼女は正真正銘、天界で君の世話役だったガブリエルだよ。 …………天使の翼はがれて無いけどね」


クロノスに言われて改めて目の前の女性を見ると、悲しげな表情で静かに頷いている。


「クロノス様の御言葉通り、私はガブリエルです。そして此処は神王様が精霊世界へと旅立つ前に住まわれていた世界の次元を何重をも隔てた特殊な世界です」

「いきなりそんな事を言われてもな。天界は一体どうなったんだ? 戦争は終結したのか?」

「天界に残られるという神王様の意志に反し、此方の世界へと退避いたしました。魔界側への情報漏洩を防ぐため、此方から天界へと繋ぐことは出来ません」

「そんな!? 今もなお戦っている皆を見捨てて、俺だけ安全なところにいるなんて!」

「君の気持ちも分かるけど、ガブリエルの気持ちも考えてやりなよ。其れに君さえ無事なら、幾ら時間が掛かろうとも天界は再建できる」

「そうか…………済まなかったな。そういえば背中の翼は如何したんだ?」

「その事を説明するには、神王様が意識を絶たれた時間まで巻き戻さなければなりません」


ガブリエルが語る言葉は驚くべき事だった。


最初に『此処に残る』『俺は逃げない』と駄々を捏ねた俺の意志が、如何あっても曲がらないと感じたメタトロンは催眠の魔術を俺に掛け、玉座の下に隠されていた非常用トランスポートへと俺を逃がしたのだそうだ。


そして地球人と殆ど容姿の変わらないセフィリアとクロノスが護衛に付き、ガブリエルが俺たちを見送る予定だったのだが、そこで予期せぬ事態が巻き起こったのだという。


ガブリエルの後方から様子を見ていたメタトロンが突然剣を振り下ろし、ガブリエルの背中にある翼を根本から切り落とし、目の前の俺たちが入っていったトランスポートへと押し込んだのだそうだ。

そして非常時の際の活動拠点として、この場所を事前に用意していたことを知らされたのだった。


今、この部屋の中に居る俺とクロノス、セフィリア、ガブリエルの4人以外は神界の事も魔界の事も知らない極普通の一般人という設定なので、ルゥの宿る剣は確実に銃刀法違反となる。

その為、古代遺跡で見つかった宝剣という扱いでアクリルケースの中に飾られているらしい。


(ルゥも大変だな)

(本当ですよ! こんな場所に縛られて。まぁ、マスターが御無事なのが何よりですが)

(でも、こうでもしないとルゥが没収されて、俺の手の届かない場所に行ってしまうからな。そんな事にでもなったら、俺と一生会えなくなるぞ?)

(怖い事を仰らないでくださいよ~~~)


ルゥはアクリルケースの中でカタカタと揺れながら必死に抗議してくる。


「一応は魔界側から見つかりにくくする為に、何重もの次元を越えた世界にしてあるからね。少し不自由さがあるけど我慢してよね。間違っても魔法で空を飛んだりしないようにね」


クロノスから再三の注意を受けた俺たちは現代社会において、天界からの連絡を待つことになった。


此方側から天界に連絡するすべがあることにはあるのだが、それをしてしまうと万が一天界が魔族側に占拠されていた場合、俺たちが居る次元が筒抜けになってしまうので連絡することが出来ないのだという。




その後、クロノスは年齢を変えて時空神の能力を使って高確率で的中するという占い師を。

俺は何故かこの地でも使うことが出来る魔法を使って、心霊術治療の真似事をしている。


セフィリアとガブリエルはボディーガード兼マネジャーのような仕事をしてくれている。


次元が異なるとはいえ、ほとんど現代世界と変わらない世界なので魔族や魔獣に襲われる事はないのだが……。



ただ此処に居る皆が皆、齢をとる事が無いため数十年ごとに住んでいる場所を変えなければならない事が不便で仕方がないのだが…………。




そして俺たちが此処に住み始めてから200年の年月が流れたが、未だに天界側からは何の音沙汰もない。

最終話として更新しました。


『正義は必ず勝つ!』というフレーズではありきたりだと思ったので、敢えて『悪が勝つ』という展開にしてみました。


実をいうと、200話を超えた辺りからアイデアが湧き辛くなっていました…………。


この最終話を更新時(8/1 0:00)の最終評価

 アクセスPV 19,296,061

 ユニークアクセス 238,029人

 総合評価 21,482pt

 (文章評価 4,239pt ストーリー評価 4,325pt)

 総合評価ランキング 97位

 お気に入り登録数 6,459件

 総文字数 631,143

この『異世界を渡りし者』を投稿してから、2年2か月1週間。

御愛読ありがとうございました!!


また新しい小説を投稿するかもしれませんが、その時もよろしくお願いします。

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