第22話 セリア再び・・・
前話のレグリスの説明と数話前に登場したセリアを登場させて見ました。
昨夜はルゥと夢で会話して疲れた俺は、夢の中で寝るという器用な真似をしてしまった。
(マスター、朝ですよ!起きてください。)
(・・・あと5分。)
(そんな事言って、絶対5分じゃ起きないじゃないですか!?)
(じゃ、あと10分。)
(増えてるじゃないですか!!)
30分後、目が醒めた俺は遅めの朝食を摂ることになった。
最後にはルゥにも見放されてしまっていた。
「さて、今日はどうしようか?」
宿屋から外に出て寛いでいると、私服姿のエミリアが目の前を通りかかった。
「あら?ミコトじゃない。今から仕事?」
「ああエミリアか、今日もサボリか?」
「ちょっと!『も』って何よ『も』って、今日もこの前と同じく休日よ。」
目の前にエミリアが居る事から昨日の夢の中での出来事を聞いてみることにした。
「なぁエミリア、聞きたいことがあるんだけど良いかな?」
「ん?なぁに、私の3サイズでも聞きたいわけ?」
「いや、そんな物はどうでもいいんだけど。」
「そんな物って・・・。まぁいいわ、どうしたの?」
「聞きたい事っていうのはレグリスの事なんだ。」
俺がレグリスという言葉を発した途端、エミリアの表情も凍り付いたかの様に固まった。
「ミコト、何処でレグリスのことを!?」
「討伐に行く時に、街の外で誰かが話してるのを聞いただけなんだけど。」
「レグリスに関しては、詳しいことは何一つ分かっていないの。国の様子を見に行かせた者は誰一人として帰って着てはいないのよ。その人は何か国のことを話してた?」
困った。誤魔化しきれなくなりそうだ。
こうなったら、あの女の言っていた事を嘘も交えて話すとするか・・・。
「俺も小耳に挟んだだけだから詳しい事は分からないけど、なんか国が滅亡の危機にあるって話してたような気がしたんだけど。」
「国の滅亡は遅かれ早かれ、確実だったはずよ。」
「どういうこと?」
「レグリス国の王が数ヶ月前に原因不明の病気で亡くなったと密偵の報告で知ったんだけど、後を追うかのように大臣や宰相などの穏健派が次々と原因不明の死を遂げていったの。民からも他国からも慕われていた優しい王だったから国中から悲痛な叫びが聞こえたとの報告を聞いたの。」
「そんな王が治めていたのなら、裕福な国ではないのか?」
「問題は此処からよ、王や大臣らが亡くなってから王妃が実権を握る事になったのだけど、これが滅亡の始まりだった・・・。まず、税率が王が生きてた頃は2割弱だったのだけど、現在は7割強にまで跳ね上がっているとの報告を聞いているわ。」
「そんなの、民が暮らしていけないだろ!?」
「当然! 不服を申し立てた国民は王妃の決定により、全員処刑されたわ。」
「処刑だと!? そんな、酷すぎる!!」
「王妃もたった一人の皇女も税で贅沢三昧の生活をして、行政を何一つしなかった所為で国は荒れ、街には犯罪者が我が物で蔓延っているとの報告の直後、密偵からの連絡が途絶えたわ。」
「でも、そんな重要なことを俺なんかに話してもいいのか!?」
「いいのよ。何処から話が漏れたのか、みんな知ってる事だし・・・。」
話を聞いた直後、とても仕事をする気にはなれなかったので宿へと引き返そうとした時、エミリアから声を掛けられた。
「暗い話はこれでおしまい。ねぇミコト、暇なら少し付き合ってくれない?」
「そうだな、俺が落ち込んでいても何も出来ないし。で、何処に行くんだ?」
「今、向こうの通りでお祭りやってるから見に行こうと思って。」
「じゃ行こうか。」
「うん。こうしてるとデートみたいね。」
「そうか?気のせいじゃないか?」
「もう!ミコトの意地悪!」
さっきまでの暗い雰囲気は何処に行ったのか、笑いながら路地を奥へ奥へと進んでいくと何やら人だかりが出来ていた。
「これは一体、何の騒ぎだ?」
「なになに?喧嘩?」
エミリアは野次馬根性丸出しでピョンピョンと飛び跳ね、人だかりの中心を見ようと頑張っていた。
俺はその場で見ている爺さんに話を聞いてみる事にした。
「なぁ何が起こっているんだ?」
「ああ、冒険者の方か。なんか知らんが嬢ちゃんが因縁付けられて困っているようだの。」
「なんで誰も助けてやらないんだ!?」
「あの因縁つけている男が問題じゃからじゃよ。あの男は裏通りを仕切っていた男の弟分らしいのじゃが兄貴が捕まえられたとかで毎日のように此処で暴れているんじゃよ。」
「騎士団は何をしてるんだか・・・ん?あれは、セリアじゃねえか!?」
「なんじゃお前さん、あの嬢ちゃんの知り合いか何かか?」
俺は爺さんに答えずに人込みを掻き分け、セリアの元へと向かった。
「だから、何処を怪我したというんですか!? 私が治しますから見せてください!」
「なんだ、お前魔術師か!? まぁどうでもいい、肩が折れたから治療費を寄越せとさっきから言っているだろうが!! 怪我をしたくなければさっさと寄越しな!!」
「何処が折れてるんですか! 思いっきり振り回してるじゃないですか!?」
「セリアじゃないか。此処で何してるんだ?」
「あ、ミコトさん。助けてください、この人が私にぶつかって来て怪我をしたから治療費払えってしつこいんですよ・・・。」
「なんだテメエは!関係無え奴は引っ込んでろ!!」
「どっちの肩を骨折したんだ?左か右か?それとも両方か?」
「両方だよ!治療費として銀貨1枚支払いな!!」
男は折れているとはとても思えない肩をグルグルと振り回しながらセリアを脅している。
「それなら俺が払ってやろう。その前に肩を見せてくれるか?」
「なんでお前なんかに!」
男は俺を寄せ付けないように暴れるが、俺は瞬時に男の後ろに移動するとガッシリと肩を掴んだ。
「何しやがる!?放せよ!!」
「ふむ、確かに折れてるな。これは複雑骨折という奴かな?」
俺は言い切ると同時に両手に力を込めて男の肩を握りつぶした。
バキ、バキ、ベキ、ボキ!!という音ともに男の肩は砕けた。
「ギャアアアア!! 俺の、俺の肩がーーー!!?」
「だから折れているんだろ?」
男は振り回していた腕をだらりと下げ、路地の奥へと悲鳴を上げながら逃げていった。
「お~い。治療費要らないのか~~~?」
その直後、後方の人だかりから盛大な拍手が鳴り響いた。
「ミコトさん、ありがとうございます。私、迷惑ばかりかけていますね・・・。」
「気にするな、ああいう奴にはいい薬になるだろう。」
俺は未だに鳴り止まない拍手の中、セリアを連れて宿への道を歩いていった。
「あれ?何か忘れているような・・・。まぁいいか。」
その頃、人込みの後ろにいるエミリアはというと。
「ああもう、何が起こってるのよ!? ミコトーーー何処に行ったの?戻って来てよ~~。」
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