第21話 召喚せし者?
続・鬼畜キャラの登場です。
夢の中でルゥに出会った直後、思いっきり顔にビンタされた。
能力のおかげで痛みは無いが、行き成りの事で何が何だか分からなくなっているとルゥのほうから話しかけてきた。
「マスター、私森で言いましたよね?手が合ったら思いっきり殴っているところだと、今
ここに手があるので殴りましたが、なんでマスターはケロッとしているのに私の手のほうが痛いんですか!?」
「それは俺の能力の所為だろ?幼少時から慣れてきた所為か痛みは感じないんだよ。」
「そんな、不公平です!!」
「そうは言ってもな~~」
そんな時、俺は誰かの視線に気が付いてしまった。
此処には俺とルゥ以外は存在できる筈がない世界だというのに・・・。
「其処に居るのは誰ですか!? 誰であろうと、マスターに危害を加えようとするならば私が相手になりますよ?」
「ルゥ大丈夫だ。誰かは知らないが殺気は感じられない、しかし此処に誰かがいるのは確かだな。」
気配を頼りに辺りを見回すと、背格好がルゥよりも少しだけ大きい女性が神に祈るかのような姿勢で俺に対し祈りをささげていた。
「お前は誰だ!? どうやってこの空間に入ってきた!」
「嗚呼、やっと繋がりました。どうか我が国、レグリスをお救い下さい。」
どこかで聞き覚えのある言葉に、女性を見ながら少し考えてしまった。
「あんた、前にも俺を呼ばなかったか?」
「私は国の礼拝堂でこの一ヶ月、毎日のように祈りを捧げておりました。そして今日、遂に報われる日が訪れました。」
「レグリスか・・・。どんな国なんだ?」
俺は正体不明の女性にではなく、俺を守るかのように目の前に立っているルゥに聞いた。
「レグリスとはマルベリアの遙か北方に位置する、昔は穏やかな共和国であったと記憶しています。」
「今はどうなんだ?」
女性を無視してルゥと話していると明らかに女性の顔が強張り、眉間には深い皺が出来ていた。
「他の精霊に聞いた話では、レグリスの王妃の独裁で崩壊の危機にあると言われています。」
「それで『国の危機をお救い下さい』か? 自業自得じゃねえか!」
「数年前までは共和国であったものの、独裁政治によって他の国に見放されたと聞きました。」
ルゥの言った独裁政治という言葉が聞こえた直後、目の前の未だに跪いている女性から『ブチッ!』という音が聞こえたような気がした。
その直後、立ち上がってルゥを足蹴にしながら罵りだしてきた。
「なんで?なんで精霊なんかに母様のことを馬鹿にされなければならないのよ!!
身の程を知りなさい下劣な一精霊が!!!」
「俺のルゥを下劣な精霊だと!? 貴様は何様のつもりだ?」
俺が殺気を込めた目で女性を睨むと途端に腰が抜けたように尻餅をつき、何か見えない力に押し潰されて床に這い蹲ったかと思えば、次の瞬間には姿が掻き消えた。
「逃げたか!」
「マスター・・・。」
「大丈夫かルゥ。怪我はないか!?」
「私は此処では存在していられますが、実際は肉体を持たない精霊に過ぎません。なので怪我を負う事は基本的にありえないことです。」
「そうか良かった。クソあの女め、望むならレグリアに出向いてやろう!ただし、救済ではなく滅亡させにな!」
「マスター、現実でレインさんが呼んでいます。目覚めてください」
「胸糞悪いが・・・。起きるとするかな」
ベッドの上で目を覚ますと、部屋の扉をしきりにノックするレインが居た。
「ちょっとミコト!御飯ができたよ。降りといで」
「分かりました。今行きます」
「ようやく起きたのかい?よっぽど、疲れてたんだね」
俺が返事をすると返答と共に廊下をパタパタと歩いていく音が聞こえた。
「討伐よりも夢の中での出来事のほうが疲れたのは何故だろう?」
その後、酒場へと向かい、瞬く間に飯を食べた俺は直ぐに部屋へと戻ってきた。
する事がないので、寝ようと思ったが昼間に寝過ぎた所為で少しも眠気は起きなかった。
自力で眠る事は諦め、ルゥに頼み強制的に夢の中へ誘って貰い一晩中、ルゥとの会話を楽しんだ・・・。
一方その頃、レグリス国の城の中にある礼拝堂では・・・。
豪華な衣装を身に纏った、一人の少女が床に這い蹲った状態で息を切らせていた。
「ハァハァ、あの男と精霊めが我を侮辱するとは何様のつもりか!!」
「皇女殿下!?どうなさいましたか?」
「爺、奴隷を一匹連れてまいれ!! こんな夜は奴隷で憂さ晴らしするに限る。」
「しかし殿下、前に痛めつけた奴隷で最後にございます。」
「なら、牢に入っている囚人はどうか!?」
「その囚人も王妃様が暇つぶしと称して先日、痛めつけて殺害なされました。」
「母様も利用してたのね・・・。」
部屋の入口で警備している騎士は『またか』と仲間と話していた。
「奴隷も囚人もいないのなら仕方がない。街から適当な罪状で一人、引っ張ってまいれ!!」
「殿下、もうお止め下さい。連日の事で民は震え上がっております」
「お前も我に意見するつもりか?なら、侍従を代わりに痛めつけてやろうか!?」
「それは・・・・・・、分かりました。衛兵に民を引っ張って越させますので御勘弁下さい。」
「始めからそういえば良いものを。楽しみじゃな、今日はどんな獲物を使おうかの?」
少女が壁にあるカーテンを開くと、其処には赤い血が滴る棘の鞭や刃を潰した剣が何本も飾られていた。
爺は礼拝堂に繋がる廊下で泣く泣く、衛兵に指示を与えると心の中であることを考えていた。
『この国はもう駄目だ・・・。二代に亘ってこんな恐怖政治では国は滅亡してしまう。』
少女は事あるごとに暴力でストレスを発散し今日もまた礼拝堂に絶叫が響きわたるであろうと・・・。
「爺、まだ来ぬのか!?もう待ちきれぬぞ!!」
「暫くお待ち下さい!もう、まもなくでございます」
数時間後、適当にでっち上げた罪で身柄を拘束された、露天商を営む一人の青年は少女の手によって撲殺され、翌朝には棺桶に入れられ城の横を流れる川に流されたという・・・。
少しハズしてみました。
召喚した者(?)が悪魔のような存在ということに・・・。