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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
天界編
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第198話 久々となる、夢の中での会話

亜空間内での訓練を翌日に控えた夜、俺は久々に夢の世界に誘われ、実体化したルゥと会話をしていた。


実体化と言っても靄に包まれた、朧げな人影でしかないが。


因みに精神はこうして夢の世界にきているが、肉体は熟睡中なので疲労感は全く無い。


「此処でこうやってルゥと会話するのも、随分と久しぶりだな。それで、今日は如何したんだ?」

「いえ、マスターが最近お疲れの御様子でしたので、何か私に出来る事はないかと思いまして」

「そうか…………ルゥにまで心配かけていたとは」


俺はいつも周りに心配を掛けないようにと、何があっても平常心を心がけていたが如何やら心で繋がっているルゥには隠しとおせなかったようだ。


「唯の剣でしか無い私では、あまり役には立てないと思いますが」


ルゥの自虐的な言葉に苛立ちを覚えた俺は、つい声を荒げてしまっていた。

 

「な!? 俺はルゥを『唯の剣』だなんて思ったことは一度もない! 今後、二度と其の言葉を口にすることは許さん」

「も、申し訳ありません」

「いや言い過ぎた。すまない」


それから少しの間、互いに頭を下げあうという不思議な空間が生まれ、照らし合わせたわけでもないのに同時に狂ったかのように笑い合っていた。


「それにしても今更ながら、俺が『神王』なんて立場になるとはな。流石に想像できなかったぞ」

「私としても驚きです。マスターが最高神だなんて…………今にして思えば、とんでもない御方に拾われた物です」

「なんだ? 後悔でもしているのか?」

「それ、本気で言ってます?」

「冗談だ。そう怒るな」


俺とルゥは再度笑い合い、此れまでの思い出話に華を咲かせながら時間だけが過ぎていった。


そして御題は翌日に控えた、訓練の話しへと進んでいく。


「マスターの御力を持ってしても『悪魔』には敵わないのですね」

「いや俺は自分自身が強いとは思っていない。ただ単に体力が無限なのと回復能力が異常すぎるのだけが自慢できる事だしさ」

「明日は私も頑張ります!」


ルゥは自信満々で言ってきてはいるのだが、俺としては複雑な気持ちで一杯だった。


「マスター、どうかなさいましたか? はっ、もしかして私を御使いにならないつもりだったのでは?」

「明日は俺とは比べ物にならないほどの力を持つ、竜人族リグルドとの訓練だからな。下手をするとルゥが折れてしまう危険性もある。僅かでも、その可能性がある限り、俺は…………」

「御気持ちは嬉しいのですが、私は剣です。こう言っては、また怒られるかも知れませんが」


俺はルゥの言葉に怒るような真似はせず、ルゥをそっと抱きしめて感謝を示した。


其の状態でどれほどの時間が経過したか分からないが、誰に見られているという訳ではないが、ふと自分の行為が恥ずかしくなり、ルゥの身体(?)から手を離した。


ルゥの人影も朧げなので良く分からないが、恐らくは俺と同じ状態なのではと思われる。

俺は雰囲気を打破すべく、無理矢理に別の話しを繰り出した。


「そ、そういえば、あの(・・)力を自由に使えるようになれば有利になるんじゃないか?」

「っ!? 『あの力』ですか?」


ルゥも矢張り同じ様な気持ちだったのか、受け応えに慌てぶりが見て取れる。


「ほら、とある言葉・・で俺の意識が途絶えて、相手を完膚なきまでに叩きのめしてしまった事があっただろ?」

「とある言葉…………はっ!? あれだけは止めてください!」


ルゥの表情は此れまでと180度、打って変わり俺に詰め寄ってきた。


「あの時のマスターは、私が幾ら心に呼びかけても繋がりませんでした。あのような思いは二度と味わいたくはありません! まるで人を痛めつけるのを面白がるようなマスターを、もう二度と見たくはありません」


俺自身、狂気化した時のことは一切覚えてはいないが、目が醒めた時の現状を見る限りでは大いに期待が持てると思ったんだが、ルゥの様子を見る限りでは思った以上に異常すぎる、危険な力のようだな。


「分かった、もう二度と言わない。すまなかった」

「いえ、私も言い過ぎてしまいました」


そんなこんなで、またしてもルゥと俺の間には沈黙という壁が築かれてしまった。


「マスター、もうそろそろ現実時間で時刻が午前9時になります。目を醒ましてください」

「もうそんな時間か。時が過ぎるのは早いものだな」


俺はルゥの言葉に従って意識を覚醒させると、丁度俺を起こそうとしていたガブリエルと目が合った。


「神王様、お早う御座います。朝食の御用意は既に整っていますので、お召し上がりになられてください」

「ん、ガブリエルか。おはよう」


夢の中でルゥと会話していた所為か意識はハッキリしており、顔を洗ったあとで朝食を食べ始めた。

時刻が9時半を少し廻ったところで、ガブリエルがセフィリア達を迎えに行くといって部屋を後にする。


それから約30分後、訓練用の武器を詰め込んだ木箱を両手で軽々と抱えたガブリエルとセフィリア、其れに何処か暗い表情のリグルドがガブリエルに連れられて俺の私室を訪れた。


「神騎士セフィリア、神王様の御召致に預かり参上いたしました」

「おなじく悪魔討伐隊リグルド、神王様の御召致に預かり参上いたしました」


最初にセフィリアが俺の目の前で片膝を立てて跪き、続いて竜人族リグルドが2m近い身長を縮めて同じ様に跪き、挨拶をしてくる。


俺は敢えて芝居でもしているかのようにリグルドの前で胸を張ると、とある一言を口にした。


「悪魔討伐隊所属、竜人族リグルド。本日この時を持って略式ではあるが、神騎士に任命する物とする。


この決定に異論なければ、自らの言葉で遺志をつらぬけ!」


「はっ! 竜人族の誇りを持って神王様の御拝命、しかと賜りまして御座います」


こうして悪魔討伐隊改め、神騎士リグルドが俺の、神王の騎士である神騎士に入隊する事が決まった。


「では神騎士として最初の命を伝える。此れより、俺とセフィリア、リグルド、指南役としてガブリエルを含めた4人で亜空間を使い、訓練をする物とする」


言い馴れない命令口調に顔を赤面させながらも、芝居がかった口調で全てを説明し終えた俺は3人を連れて亜空間内へと足を踏み入れた。


セフィリアとリグルドが亜空間倉庫内のあまりの広さに驚愕した事は言うまでもない。



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