第20話 Aランクへ昇格
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湖を出発したものの辺りは既に夕暮れを通り越して暗闇に近づいていました。
ルゥと相談した結果、森を出る前に確実に真っ暗闇になるため近くに聳え立っている高い木の枝に飛び上がって木の上で一夜を過ごす事にしました。
(見張りは私に任せてマスターはゆっくりお休み下さい。)
(そうさせてもらうよ。オヤスミ、ルゥ。)
その後、魔物の襲撃はおろか魔物の気配すら森の中からしなかったとルゥに報告を受け、軽く周辺に実っている木の実を朝飯として食した俺は地上から8mほどもある木の枝から飛び降り、森を出てマルベリアへと向かった。
平原に出た後はルゥに他の冒険者がいないか気配を察知してもらいながら歩いたり走ったりを繰り返し約4時間後にはマルベリアへと帰還した。
俺はその脚でギルドへと向かい討伐依頼達成の報告をローラに話した。
「ミコトさん、お疲れ様です。早かったんですね。」
「此れが証明部位だ。 黒い牙が2本生えていて、どっちが証明部位か分からなかったから両方取ってきたんだが・・・。」
そう言って歪な形に膨らんだ道具袋をローラの前に広げた。
「こんな沢山のリュナイトを狩って来たんですか!?服もボロボロのようですし苦戦したんですね。」
「いや、これは別の魔物と殺り合ったときに破れたんだ。」
ローラは証明部位の鑑定をしながら声だけで俺と会話していたのだが、次に言った言葉の所為で驚愕の表情を俺に見せた。
「これだけのリュナイトを倒したミコトさんが苦戦した相手ってどんな魔物だったんですか?」
「言葉を話す、リザードマンだったな・・・。」
俺がリザードマンと口にした瞬間に窓口の奥からギルド職員の息を呑む音とローラが悲鳴を上げながら椅子ごと後方に倒れる音が聞こえてきた。
更には掲示板で仕事を選んでいた冒険者までもが俺を見て驚きの表情を見せていた。
「痛たたたた・・・・。」
「ローラ、大丈夫か?」
「それは此方の台詞ですよ!ミコトさんこそ無事だったんですか!?」
ローラは鑑定そっちのけで俺に問いかけてきた。
「俺は怪我なんてしてないよ。リザードマンの左腕を切り離したまでは良かったんだが、逃げられてしまってな、もう少しだったのに残念だったよ・・・。」
それを聞いたローラはわなわなと震えていた。
「ミコトさん!『残念だったな』じゃありませんよ。何故直ぐに逃げなかったんですか!?」
「出会った当初はそんな強そうには見えなかったからなぁ・・・。殺りあってから吃驚したよ。」
「強そうじゃなくて強いんですよ!!リザードマンはSS級の魔物ですよ!?」
「そんな上級種だったのか、今度逢ったら叩きのめしてやろう!」
「馬鹿なことを言わないで下さい!!騎士が20人がかりでも勝てなかったんですよ!?」
「そうなんだ。」
「『そうなんだ』って・・・もういいです!」
「それともう一つ報告なんだけど。」
「どうしました?」
「山賊に滅ぼされたディル村の事なんだが、生き残った少年が村の奥で宿屋を経営していたぞ。」
「そうなんですか、ディル村で宿屋を・・・。 って、ええぇーーーー!?」
ギルド内に2度目の絶叫が響き渡った。
「生き残った方がいらしたんですね。良かった~~~」
「俺が話をしたんだが、宿屋で金を稼いでディル村を再建するのが夢らしいから宣伝してくれると助かるんだけど。 ディル村方面に行く時の中継地点にもなるからな。」
「分かりました。ギルドが全力を持って手助けしようと思います。」
ギルド内でのざわめきが、やっと収縮してきた。
連続で驚愕の事実が判明すれば当然といえば当然だが・・・。
「ミコトさん、集計結果が出ました。リュナイトの証明部位は2個で一体と計算しますからミコトさんは20体討伐した事になります。此れが報酬の金貨1枚と銀貨60枚です、お受け取り下さい。」
『は? 金貨一枚と銀貨60枚!? 報酬は銀貨40枚じゃなかったのか?』
疑問を持ちながらも受け取った金貨と銀貨を道具袋に入れると更にローラが話しかけてきた。
「ミコトさんはリュナイトを20体討伐されたのでA級討伐依頼:リュナイト5体を4回達成した事になり、前の戦果と合計してAランクへの昇格が決まりました。おめでとうございます」
(な、なんで?俺はまだ2回しかA級の依頼を達成していないぞ!?)
(マスター、依頼書の内容をよく読みませんでしたね?依頼書にはこう書いてありました。『継続A級討伐依頼:リュナイト5体の討伐 リュナイト5体討伐で依頼書一枚分になります。 10体討伐すればA級依頼を2枚受けたのと同じ扱いとなります。』と、マスターは20体討伐したのですから依頼書4枚分と計算され、報酬も4倍になり一気にランクアップしたという事になります)
(なるほど、納得がいった。俺は報酬の欄しか見て居なかったというわけだな?)
(その通りです、マスター)
突然、剣の柄を握り締めたまま黙ってしまった俺を見てローラが心配そうに声を掛けてきた。
「ミコトさん?どうしたんですか急に黙っちゃって」
「いや、そんなつもりはなかったのにAランク昇格が夢みたいだ・・・。」
「夢じゃありませんよ!おめでとうございますミコトさん!!」
此れで騎士団から発行される特別依頼を受ける事ができるという事だ!
昇格は嬉しいが流石に討伐で疲れたため、まだ日は高いが宿屋に戻る事にした。
「おや?ミコト、もう戻ってきたのかい?」
「レインさん、部屋で眠らせてもらいます。食事の時間になったら起こしてください」
「疲れきった顔してるね~~いいよ、ゆっくり休みな!」
俺は部屋に戻り、剣を握り締めながらベッドに横になると同時に夢の中へと誘われた。