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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
天界編
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第194話 新たなる亜空間

時空神クロノスの能力をアテにして短時間の身体強化が出来ないかと相談しに来た俺だったが、其の過程で亜空間倉庫に不具合があると指摘されるのだった。


何処に不具合があるのか、実際にクロノスに見てもらうことにしたのだが…………。


「やっぱり不安定な空間のまま、固定されてしまってるね」


入口から一歩足を踏み入れた途端に駄目だしを喰らってしまった。


「本来の亜空間倉庫は奥行も横幅も高さも統一でなければならないんだけど、君の亜空間倉庫は奥行が無茶苦茶長いくせに天井は低く、横幅も狭い。作る時に何か別な事を考えていなかったかい?」


そういえば、広さが此れぐらいあれば良いかと思いながら作っていたっけな。


「亜空間倉庫を今から手直しして完成形にするって事は出来るのか?」

「空間が既に固定されているからね、今から如何こうするのは無理だよ。新たに作り直すしかないね」


クロノスからそう言われ、新たに作り出すには今ある亜空間倉庫を壊さねばならないのかと思っていたが、そうなると倉庫に入らなくても自由に物を取り出せる魔道具『魔袋』が使えなくなるのでは無いかという不安が頭をぎった。 


「新しく亜空間倉庫を作り出す時は、今ある倉庫はどうなるんだ?」

「う~ん、今まで1人で複数の亜空間倉庫を形成できた者は見たことが無いから分からないね。形成するのにも多大な魔力が必要だけど、其れを維持するのにも一定の魔力が必要なんだよ」

「自分で言うのもなんだけど、自身の魔力は結構な量だと思うんだけど」

「試してみる価値はあるかな。もし失敗すると、今ある亜空間倉庫は完全に消滅する事になるから必要な物があれば外に出しておいた方が良いよ」


クロノスから『今ある亜空間倉庫が消滅してしまうかも』と言われた俺は、クロノスの宮殿の一角を借りて亜空間倉庫に置かれている物を次々と出していく事にした。


前の世界から食料品として保存しておいた、残り十数個の『果物類』に色々な世界での『金貨や銀貨などの硬貨』、風の精霊の存在を脅かした『魔吸石』に、土の精霊世界で返却し忘れた『鉱山の入坑許可証』、最後に『魔袋』の片割れとなる、チェスのポーン駒に似た魔道具を取り出すことで亜空間倉庫の中は完全に空となった。


こう考えると食料である果物以外、全く必要ないな。


この亜空間倉庫が消滅した場合、『魔袋』の魔道具はどうなるんだろう?


「色々と珍しいものが沢山あるんだね。此れはなんだい?」


クロノスが興味が示してきたものは『魔吸石』が入れられている、念入りに固く封を閉じられている袋と『魔袋』の片割れになる、ポーン駒の存在だった。


「この石は何の変哲も無いような気がするけど、何でこんな物を厳重に?」


そう言って徐に袋の口を開けようとするクロノスを間一髪で止めた。


「この魔吸石に直に触ったら駄目だ! 魔力を吸い取られるぞ」

「魔力を吸い取る? 其れってどういう事?」


俺はクロノスの問いに対し、風の世界での遣り取りを掻い摘んで話していくと、徐々にクロノスの顔色が変化してゆく。

 

「という訳なんだけど、どうかした?」

「普通の魔術師が其の魔吸石とやらで魔力を吸い取られるならまだしも、精霊から魔力を吸い取る事が出来る魔道具なんて無茶苦茶だよ。君の話しにあった、ドゥールという魔道技師の男を少し調べた方が良いかもね。そういえば、君の代わりに風の精霊世界に悪魔討伐に行った討伐隊がいたっけ…………」


クロノスは暫く考え込んだ後、俺から魔吸石を譲渡する許可を取った後、メイドの1人に魔吸石が入った袋を持たせて、研究室へと運ぶように指示していた。


次にクロノスが興味を示したのは、先端部が赤く光る『魔袋』の受信機だった。


「これも見たことのない魔道具だね」

「其れは、この『魔袋』と連動している魔道具だよ」


俺はそう言って腰につけている道具袋をクロノスに見せる。


「この道具袋から入れた物は其の魔道具が置かれている場所に転送されるんだ。其れと同様に魔道具が置かれている場所から袋を経由して取り出すことも出来る」

「へぇ~~下界の人間も面白い物を作るんだね。この魔道具も少し借りてもいいかな?」

「如何するんだ?」

「調べてみないと分からないけど、もしかすると同じ様な魔道具が作れるかもしれない」


クロノスは時間と空間を操る神だから、言うなれば得意分野というところか。


「なら頼むよ。仮に複製に成功すれば、今ある亜空間倉庫が消滅しても問題ないから」

「うん。何処まで似せる事が出来るか分からないけど、頑張ってみるよ」


此れも先程と同じ様にメイドに運ばせると、漸く亜空間倉庫の再構成に取り掛かった。


「以前の君はどうやって亜空間倉庫を作り出したんだい? 参考までに教えてくれないか」

「確か、クラス50の魔力を放出して『ドゥーア』って言う呪文を唱えて、宿屋ぐらいの広さに出来たら良いなと考えながら形成して行ったんだと思う」

「其の『クラス50』が君にとって、どれ位の魔力量なのか分からないけど、今度は全力で魔力を放出して空間を形成してみてくれないか? 『広さをどれくらいにしようか』とか余計な事も考えないようにして」

「ん、分かった」


俺は心の中で魔力のたがを外れるように念じると、夥しいほどの魔力が身体から放出される感覚を感じ取っていた。


それは魔力に覚醒した時の魔力とは比べ物にならないほど強く、このままで魔法を唱えてしまうと世界を一つ壊してしまうのでは無いかと思うほどだった。


「う~ん、流石はミコトだね。これほどの魔力を感じる事が出来るなんて、先々代の神王以来だよ」


クロノスは俺から溢れ出る魔力に心地いい表情を浮かべているが、周囲にいるイシュナムを含む侍女たちは驚愕の表情を浮かべている。


「じゃあ、このまま空間を形成してみようか。どうなるか楽しみだね」

「このままで!? 無茶苦茶広い空間が形成されるんじゃないか?」

「下手に加減なんてしたら、前みたいに不完全な状態で形成されてしまうからね。此処は思いっきり、手加減なしで作り上げた方が利口だよ」


俺は軽く頷いて良く分からないままでクロノスの考えに賛同すると、ルゥから以前に教えられた空間維持魔法『ドゥーア』を唱える。


すると俺の魔力の量が強大すぎるのか、前回の倍以上もの大きさのある扉が目の前に形成されたかと思うと次の瞬間、『全ての魔力を吸い取られるのではないか!?』と思うほどの勢いで魔力が扉の内部に吸い取られてゆく。


そして魔力を吸収し始めてから、それからどれ程の時間が経過したのだろう…………。


不意に魔力の奔流が止まると亜空間倉庫への扉が満足したかのように閉じ、まるで其処に存在していなかったかのように消え失せた。


「どうやら亜空間形成は終了したみたいだね。魔力はもう戻しても良いよ」


俺は元通りに魔力に栓をすると早速『ルーム』という呪文を唱えて扉を出現させた。


心の底で元々の亜空間倉庫も『消えないでくれ』と願っていたのだが、其の願いも虚しく幾ら待っても、幾ら呪文を唱えなおしても元の扉が出現する事はなかった。


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