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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
天界編
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第192話 悪戯というレベルじゃない

レイモンドとセフィリアの感動の再会を盛り上げるに至って悪戯を考え付いた俺だったが、予想に反してガブリエル達をも巻き込んで盛大な物へと発展してしまった。


俺の威厳を出すためにと4人の熾天使に神々の儀で見せたような感じにして貰おうと思ったわけだが、俺の私室ではさすがに狭すぎるという見解になり、急遽神々の儀の会場を使う事に決定。

更に4人の熾天使だけでは少なすぎるという訳で何処から聞きつけてきたのか他のカマエル、レミエル等を始めとする、総勢10人の熾天使を巻き込むという悪戯の範疇を越えたものになってしまった。


神々の儀を執り行った広い会場で10人の熾天使を使い、悪戯をするという前代未聞の展開に俺とセフィリアは顔を青くするのだった。


「あの…………神王様?」

「何も言わないでくれ。此処まで大きくなるとは、思っても見なかったことだから」

「申し訳ありません。ウリエルが口を滑らせたばかりに」

「なっ!? ラファエル、お前もノリノリでカマエルに説明してたじゃないか!」

「2人とも見苦しいぞ!」


ミカエルの一喝によって、ウリエルとラファエルの諍いは事なきを得たが、事の顛末はこうだ。


昨夜、俺の部屋での説明会が終了したあと、解散となってウリエルとラファエルの2人が娯楽の少ない天界において面白い事になると、思い出し笑いをしながら通路を歩いていると、目の前からカマエルが歩いてきたんだという。


カマエルは何か面白い事が無いかとしらみ潰しに天界の通路を歩いていたところで、陽気な気分に浸っているウリエルに言葉巧みに話しかけ此度の事を知り、皆に言いふらしたとの事だった。

俺がこの事を知ったのは朝食を部屋で頂いていた頃で、事の顛末に気がついたウリエルがラファエルを伴って謝罪しに来たという訳だ。


「幾ら何でも大袈裟すぎやしませんか? 滅多な事じゃ顔を合わすことのない、サリエル様、ラグエル様、カマエル様とガブリエル様、ウリエル様、ラファエル様、ミカエル様、更にはサンダルフォン様とメタトロン様、スラオシャ様まで…………」


確かにレイモンドとセフィリアの顔合わせのためだけに集まったにしては豪華すぎる顔ぶれだ。


「やぁやぁ、思っていたよりも凄い騒ぎになったものだね」


陣頭指揮をしているガブリエル達をみて溜息をついていると、あまり驚いていない表情をしたクロノスが儀式用の衣服に着替えて笑みを浮かべながら会場に入ってきた。


「もしかして、こうなる事を予測していた?」

「少しはね。ミカエルやガブリエルならまだしも、口の軽いウリエル、ラファエルに事の次第を話したこと自体が失敗だったと思うよ」


クロノスに言われてウリエルのいる方向に目を向けると其処には身を縮こませて、黙々と作業するウリエルの姿があった

俺の視線に気がつくと、此れでもかというほどに頭を下げている。


「はぁ~~起きてしまった事はしょうがないか」

「神王様、そろそろお時間です。神鎧にお着替えになられてください」

「其処までするのか? この会場を使う事もそうだが、少し大袈裟じゃないか?」


カマエル達は生き生きとした表情で楽しんでいるようだが。


「予定時刻まで30分を切りました。急ぎ、お着替えになられてください」


俺は此処まできたら腹を括らないといけないかと思い、半ば脱力した足取りで神鎧を身に付け始める。

セフィリアも何時の間に着替えたのか神騎士任命式の時に手渡された、神鎧に似せて作られた白い鎧を着込んでいるし。


俺は約20分ほどの時間を掛けて全身を隈なく覆う、完全版の神鎧を身につけ会場に足を踏み入れると、神々の儀を思い出させるような、デジャヴが感じられた。


会場内にある白い柱にはミカエル以外の熾天使が腕を組んで立っており、俺の座る玉座の前には周りの熾天使よりも存在感のある、メタトロンとサンダルフォンが立ち、俺の後にはスラオシャが立っている。

セフィリアもまた『このような場所に私が居ても良いのか』というような表情でミカエルとともに玉座の横に立っている。


「神王様、気負いせずに堂々と為さってください。此処までの騒ぎになるとは予想できませんでしたが……」


『幾らなんでも』と俺が心の中で思っていると、俺のすぐ傍に立っているミカエルが頭だけを此方に向け話しかけて来た。


「少し前にガブリエルがレイモンドを迎えに行きましたので、もうそろそろ来る頃です」


ミカエルの言葉の通り、2分後にはガブリエルに連れられたレイモンドが姿を現した。

俺は顔まで、すっぽりと覆う兜を身に着けている為、パッと見ではわからないだろう。

レイモンドは会場内に立ち並ぶ熾天使たちの目の前を通り過ぎ、俺が座る玉座の前で膝を折った。


「では此れより、悪魔討伐隊及び神騎士入隊式を執り行う。新隊員レイモンド、おもてを上げよ」


メタトロンの言葉に従い、跪いていたレイモンドが顔をあげる。

俺とレイモンドの位置までは5m近く離れているし、兜で頭部を覆っているので俺の顔を見る事は出来ないだろう。


「悪魔討伐隊所属レイモンドよ。汝、神王である我に忠誠を誓うか」


俺はガブリエル達と会話して取り決めた台詞を、赤面しながらレイモンドに言い放つ。


「はっ! 我がレイモンドは元・騎士の誇りに掛けて、神王様を御守りする所存であります」


レイモンドは跪いた体勢でイスラントール騎士隊の敬礼を胸の前で指し示し、忠誠を誓った。


さて、シリアスは此処までにして、そろそろ本題に移ろうとするか…………。

俺は玉座から徐に立ち上がると、未だ敬礼をしているレイモンドの目の前へと足を進める。


「レイモンドよ。其の方の忠誠心、しかと聞いた」

「ありがたき御言葉で御座います」

「だが、俺の正体が此れでも忠誠を誓ってくれるかな?」


俺はそう言うとレイモンドの目の前で兜を脱ぎ捨てる。


「えっ!? し、神王様? いや…………ミコトなのか?」


レイモンドは直立不動のまま、俺の顔を見据えて驚愕の表情で固まっている。


「おいおい、俺に忠誠を誓ったのは爺さんだろ?」

「な、なぜオヌシが此処に居るんじゃ? オヌシも死んだのか?」


レイモンドは俺を震える人差し指で指しながら、そのままの体勢でコントでも見ているように後方へと倒れていく。


この時点でレイモンドに仕掛けたドッキリは大成功を収め、会場は笑いの渦に包まれた。


そして30分ほどで目が醒めたレイモンドに、改めて俺が紛れも無い神王だという事を教えるとともに、俺の横に居たセフィリアが生き別れた姉だと知らされた時は、このまま目覚めないんじゃないかと思わせるほどに目をひん剥いて意識を途切れさせていた。


此れで熾天使総勢10人を巻き込んでのサプライズは終了し、大大成功を収めて解散となった。


レイモンドが可哀想に思えるほどに…………。

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