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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
天界編
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第182話 冥界(地獄界)見学

色々とWikiなどで情報を収集したのですが、曖昧な記述が多かったため自分の勝手な見解で地獄界の様子を現してみました。


あまり突っ込まないでくれると嬉しいです…………。


何時もよりも文字数が多めです。

といっても、5割増くらいでしかありませんが。

熾天使スラオシャにより、残虐の限りを尽くしたレグリス国王妃と王女の裁判が行われた翌日、俺はスラオシャが言葉に出していた『地獄』という単語が気になっていた。


色々な話に出てきた天国や地獄には興味があるが、同時に恐ろしいという気持ちもある。


「神王様? どうかなさいましたか?」


ガブリエルが朝食で使用した食器を洗いながら、何か考え事をしている俺に話しかけてくる。


「朝食の味がお気に召しませんでしたか?」

「いや、そんなことはないよ。いつも通り美味しかったよ」

「そう言ってくださると大変うれしく思いますが、何か心配事が御有りなら何なりと仰ってください」

「そんな大袈裟なことじゃないんだけど、昨日スラオシャが言っていた『地獄』という場所が気になっていてね。『行ってみたい』という気持ちと『怖い』という気持ちが半々で…………」

「もし興味があるようでしたら、メタトロン様に道案内を頼まれては如何でしょうか? 地獄を管理する鬼族は見た目に少し難がありますが、神王様に害を為す存在ではありませんから」


俺はガブリエルの言葉に何時までも悩んでいても始まらないと思い、思い切って地獄案内を頼むことにした。


「分かりました。それでは、その事をメタトロン様にお頼みして参りますので、暫くの間お待ちください」


ガブリエルは其れだけを言い残すと、速足で部屋を後にした。

そして部屋着から普段着へと着替え、待つこと凡そ30分、部屋の扉をノックする音とともにガブリエルとメタトロンが部屋を訪れた。


「お待たせいたしました。神王様の御用意が出来次第、案内することが出来ますが如何なさいますか?」


メタトロンは部屋に足を踏み入れた途端に俺へと平伏し、にこやかな笑顔を浮かべて問いかけてくる。


「用意は全部終わってるから頼むよ」

「了解いたしました。地獄界へは天界の直結トランスポートから行くことが出来ますので行きましょうか」

「トランスポート?」

「簡単にいうと、下界を省く全ての目的地まで一瞬で移動することができる装置というところですね」


厳かな雰囲気を醸し出す天界で近未来的な、いうなれば瞬間移動装置があると何か違和感が…………。

そういえば俺の部屋にある冷蔵庫や台所用品といった物は見慣れたものだったよな。

そう思いながらも、メタトロンの道案内の元、通路を歩く事30分、漸く一つの重厚な扉へと到着するのだった。


「この部屋の中にあるトランスポートから冥界へ行けます」


メタトロンはそういいながら重厚そうな扉に手をかざすと、機械的な駆動音をたてて扉がスライドした。

その部屋の中にあったものは俺くらいの者なら、10人はゆうに入ることが出来る透明なカプセル状の物に、どういった原理になっているのかわからない、宙に浮かんでいるキーボードと画面。


メタトロンはそれらに目もくらむような速度で文字を打ち込むと俺をカプセルの中へといざなった。


「神王様、用意が整いましたので此方へお越しいただきますよう」

「ん、分かった。それにしても、こんな便利な物があるのならクロノスの所までも繋げてほしいものだな」


俺がボソッと口にした独り言に、今まさにスタートを押そうとしていたメタトロンの手が止まった。


「クロノス様がお住まいになられる『時の宮殿』は天空門の外にある為、機密上つなげる事は出来ないのです」

「やっぱり天界への不法侵入者を回避するためか?」

「はい。神王様には不自由をおかけいたしますが、何卒……」

「いや、其処まで畏まらなくてもいいから」


俺よりも高身長で体格の良いメタトロンに畏まれると、俺の方が神位的に上に居るのにも拘らず何か悪いことをしているような気がしてくる。

そして俺は『早く冥界を案内してくれ』とメタトロンに促して、この話題を強制的に断ち切ることにした。


「では、ご案内いたします。最初なので感覚に戸惑うこともあると思いますが、身体的な問題はありませんので」


メタトロンはそう言いながら目の前に浮かんでいる『スタート』の文字に手を触れた。

その瞬間、カプセル内は幾つもの光り輝く光点に包まれ、エレベーターで下に降りるかのような感覚にさいなまれた。


「お待たせいたしました。冥界に到着です」


メタトロンにそういわれて閉じていた瞼を開けると、そこは周囲を切り立った山に囲まれた神殿だった。


「此処は地獄の入口であり、亡者の裁きをする閻魔の館でもあります」

「閻魔っていうと閻魔大王の事か?」


メタトロンは俺の問いに頷くと厳かに話し出した。


「生前に罪を犯した者、悪魔憑依者がスラオシャの審判により地獄行を言い渡された者などがこの地に運ばれ、閻魔によって仮の肉体を与えられ、永遠に終わることのない苦しみを味わうのです。折角ですので閻魔に挨拶でもしていきましょうか」

「死んだわけでもないのに閻魔に会うとか…………何か不思議な感じだ」


俺は案内されるままに神殿の奥へ奥へと続く道を只管歩み続けると、次第に天空門を黒く染め上げたかのような巨大な門が姿を現した。

天空門を開ける時のようなわずらわしい行為をすることなく、俺とメタトロンが近寄っただけで手も触れずに左右へと、観音開きかのようにゆっくりと開いていった。

門を抜けて数えきれないほどに枝分かれする細長い通路を進むこと1時間、目の前に凱旋門に似た作りの巨大な門が見えてきた。


メタトロンに聞くところによると、枝分かれしていた数多くの通路は其々の世界へとつながる道なのだそうだ。

『この通路を歩いている途中で亡者に遭ったら如何しよう?』と考えていたのだが運よく(?)誰にも会う事はなかった。

よく見ればアーチ状の門の上部に何やら言葉が書いてあるようだ。


「う~ん。なんて書いてあるんだ?」

「この地獄門と呼ばれる門には『この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ』と書いてあります」

「なんていうか…………残酷な言葉だな」

「ひとたび地獄に足を踏み入れれば、待っているのは『延々と続く苦しみ』ですから」


地獄門をくぐり尚も歩き続けると水が流れる音が聞こえてきた。


「此処は賽の河原といいます。目の前に流れる川は三途の川ですね」


よくよく見てみれば、川岸に下界で出会った魔将軍を思わせるような黒いローブを身に付けた何者かが櫂を持って小舟に座っている。


「亡者は渡り賃を払って船に乗せて貰うのですが、私達には関係ないので一気に渡ってしまいましょう」


メタトロンは自身の翼で宙に浮かび、俺もまた飛行魔法で地面から足を離すと一気に川の上を飛んで行った。

『川ではなく海なんじゃないか』と思わせるほどの距離を飛んで移動すると、地獄には似つかわしくない天界にあるかのような綺麗な建物が目に入ってきた。


「此処が閻魔の館です」


メタトロンとともに扉を開けて中に入ると、頭の中で想像していた通りの凄惨な威圧感を漂わせている人物が奥の椅子に座っていた。

様々な書類の山に囲まれた机に肘を置いて、机の両脇に立っている鬼と思わしき者達に文句のような物を言っている閻魔はメタトロンの姿を目でとらえると途端に嬉しそうな笑顔になった。


「ぬぅ? 誰かと思えばメタトロン殿ではないか。久方ぶりじゃのぉ」

「閻魔も変わりないようで何よりだ」

「久々に酒でも飲みかわしたいところじゃが…………傍に居る坊主は何者じゃ? とても亡者であるようには見えぬし。かといって普通の人間とも思えぬし」

「此方におわす、この御方は神王様だ。失礼のないようにな」

「し、神王様じゃと!?」


閻魔は足が縺れながら俺の前へと移動すると自身の巨大な身体を縮め、跪いてきた。

元の身長が高い所為か片膝を立てて跪いても、まだ見上げるほどにデカいが…………。


「神王様とは知らずに御無礼を。儂は冥界にて亡者を裁く閻魔と申します」

「この度、神王様は地獄界の査察を御希望だ。よしなに頼むぞ」

「そんなに固くならなくてもいいから気楽に話してくれ。俺も神王になったばかりで右も左もわからないほどの若輩者だしな」

「いえ、そんな滅相もない! 神王様にタメ口など、恐れ多い」


その後も30分ほど芝居のようなやり取りを繰り返し、漸く地獄めぐりを再開することが出来た。


ただ此処からは道が悪く、とても歩いて地獄めぐりをするのは難しいという事で空を飛んでいくことにした。


鉄が錆びたような匂いがする、見た目的にも受け付けない血の池地獄。

亡者は真っ赤な池で溺れながら、空中にメタロンとともに浮かんでいる俺に対して手を伸ばし、助けを求めている…………。

 

鋭い針状の物が地表を埋め尽くし亡者に痛みを与え続ける、針山地獄。

手足はおろか、致命傷となる左胸や喉元、果てには頭部の中心を鋭い針で貫かれているのにも拘らず、死することなく呻き声をあげている亡者たち。


身体を燃やされながら、死ぬことの出来ない熱さを延々と味わう、火焔地獄。


それとは正反対に身も凍る寒さに首元まで埋められる、氷結地獄と恐ろしいものばかりだった。


その後は各々の地獄で亡者の管理をしている鬼たちと何気ない世間話をして岐路につくのだった。

全ての地獄を上空からメタトロンと共に見終え、閻魔の館に戻ってくるころには意気消沈となっており、俺の身を案じた閻魔大王にいらぬ心配をかけてしまったのは大失敗だったが。




その後天界へと戻り、地獄とは逆に天国はどんな所なのかと聞くと…………。


「人間界では天国について色々な説がありますが、実際には輪廻の輪に入るための待合室といっても過言ではありません。それが何年待つことになるかは分かりませんが」

「俺の魂である先々代の神王もそうして輪廻の輪に入って、俺という存在に転生したんだな」

「神王様…………」 

「さすがに前世の記憶はないけど、志半ばで亡くなってしまった先々代の神王のためにも長生きしないとな」


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