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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
剣の精霊編
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第17話 剣の精霊の名

その日は深夜に及ぶまで店主の少年と話しこみ、倒れたかのようにベッドで眠ると夢の中へ誘われた。


(ん?ここは俺の部屋・・・。ということは、精霊が呼んだんだな。)

(ご名答ですマスター。ディル村は大変な事になってますが、生き残った方が居てよかったです。)

(この村に来た事があるのか?)

(はい。といっても剣が梱包された箱の中から見てただけなんですけどね。)

(そうなんだ。ところで精霊の名前なんだがルゥなんてどうだ?)

(ルゥですか・・・。)


俺の前に立っていた精霊の目から涙が零れていた。


(き、気に入らないなら別の名前を考えるから泣かないでくれよ。)

(いえ、気に入らないわけじゃないんです。寧ろ、嬉しくて・・・。)

(嬉しいという事は気に入ってくれたのか?)

(はい。前のマスターと別れて100年、新たなマスターに出会えて名前までつけて頂けるだなんて、とても嬉しいです。)

(100年も待っていたんだね。今後とも宜しくな、ルゥ)

(はい。マスター、そろそろ朝ですよ。今日も1日頑張りましょう。)


ルゥに夢の中で起こされた俺は村の井戸から汲み上げた冷たい水で顔を洗い宿の食堂へと足を運んだ。


「ミコトさん、おはようございます。直ぐに食事の支度をしますので少しお待ち下さい。」


椅子に座り待ち時間でルゥと会話していると美味しそうな匂いが漂ってきた。


「お待たせしました。粗末な食事しか出せませんが、味には絶対の自信を持っているので・・・。」


少年が盆において持ってきた物は2個の胚芽パンと温かいスープに、何か分からない緑色の冷たい飲み物だった。飲み物は直感的に青汁を思わせるようなドロッとした緑色で草の匂いが漂っていた。


「う、美味そうだな。頂かせてもらうよ」

「スープはお替りもありますから好きなだけ召し上がってください。」


最初にスープを飲んだが少年が自慢したとおりマルベリアの食事よりも断然美味だった。胚芽パンは現代のパンのようなモチモチ感はなく、飲み込むのに苦労したがスープに浸しながら食べる事にした。

さて問題はこの青汁のようなものなんだが匂いはまさに草だったものの、飲んでみるとかなり美味しかった。スープに至っては2回ほどお替りをした。


「ご馳走様、美味しかったよ。 ところで、この緑色の飲み物は何だったんだ?」

「これですか?これは薬草とこの村特産である野菜を磨り潰して作った滋養効果のある薬湯です。」


食事後、部屋で休憩していた俺は依頼を果たそうと宿屋を出る事にした。

道具袋から銅貨4枚を取り出し少年の前に置いたのだが・・・。


「そんな、恩人であるミコトさんからお金を受け取れません!これはお返しします。」

「いや受け取ってくれ。それに、ディル村を再建したいのだろう?」

「いや、でも・・・・。」


俺は無理矢理にでも少年に銅貨4枚を握らせると、隙をついて宿屋の外へと足を進めた。


「ミコトさん!!あれ?いない・・・。」


外に出た直後、宿屋の屋根に飛び乗り少年の様子を見てみると。


「ミコトさん、本当にありがとうございます。」


そう言って少年は小屋の中へと姿を消した。

俺は少年をやり過ごしたあと、屋根から飛び降りて村の外へと歩き出した。

宿の少年にうしろ姿を見送られながら・・・。


「さて、村の門から南に30エルトだったな。」


当然、方位磁石などをミコトが持っているはずも無く、剣の柄に手を置いてルゥに聞いてみることにした。


(ルゥ、南ってどっちだ?)

(村の門を背にして、左に45度ほど傾いてください。)

(こっちか?分かった。)

(目の前に見えている山脈の、麓の森が討伐対象の生息する場所です。)


その後、ルゥと色々な世間話をしながら山へと向かって歩き出した。

途中、いつかの討伐対象だったワイルドウルフ数匹に草原の真ん中で襲撃にあったが、逸早く魔物の気配に気づいたルゥに教えられた事によって返り討ちにしてきた。ルゥの宿った剣を振るっていて気が付いた事は切れ味が凄まじい事だった。

例えるならば、箸で豆腐を切るかのごとく何の抵抗も無くスパッと切り伏せる事が出来た。


(ルゥの切れ味は凄いな、面白いほどに良く斬れる。)

(それはそうですよ、私はマスターの探してた竜の鱗で作られた剣よりも威力が上なんですよ?)

(だが、値段はあの剣の方が上だろ?」

(マスター!剣の値段=剣の強さじゃありませんから。あの剣は竜の鱗という希少価値のある物質を材料に使っているから、あんな値段が付いただけなんですよ!!)

(分かった、分かった・・・・・・フゥ。)

(マスターちゃんと聞いてますか?私の言いたい事はですね、剣の見かけに騙されずに剣の本質で買わないといけないという事で・・・)


俺はルゥに気づかれないように、そ~っと柄から手を離し会話を中断した。


「ルゥにも困ったものだ、だがガルデリアに行って買ってたら損をする所だったな。其処はルゥに感謝だな。」


独り言を言いながら、早足であっという間に30エルトを進み森へと辿りついた。

魔物の気配をルゥに察知してもらおうと剣の柄に手を触れたことが後悔の始まりだった。

剣の柄に触れた直後、ルゥから怒鳴られてしまった。


(マスター!私の話を一つも聞いていませんでしたね!?)


その後、俺とのリンクが何時の間にか切れていたことに気が付いたルゥから更なる説教を喰らったのは言うまでも無かった。


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