第16話 山賊に襲われた村
本当は昨日、更新する予定だったのですが色々と忙しく・・・。
何故か窓口で赤面してしまったローラを置いといて、掲示板で依頼探しを再開していた。
「えっと、B級討伐依頼:ディル村跡地でのビッグバットの討伐。ビッグバットが何かは知らないが此れを受けてみようか。」
掲示板から依頼書を剥がそうと手を伸ばしたが、更にその上にはA級討伐依頼が貼り付けてあった。
「どうせ依頼を受けるなら、B級よりA級の依頼のほうが得だよな!」
俺は討伐の内容もよく見ずに、依頼書を壁から剥がしてしまった。
改めて依頼書を見てみると聞き覚えの無い言葉が其処には記されていた。
継続A級討伐依頼:リュナイト5体の討伐 期間は10日間
リュナイト5体討伐で依頼書一枚分になります。
10体討伐すればA級依頼を2回受けたのと同じ扱いとなります。
報酬は1体につき銀貨2枚。ディル村より南方に30エルトほど、進んだ所にある森で目撃情報あり。
エルト?聞いたことの無い言葉だ・・・精霊に聞いて見るか。
(なぁエルトって何のことを示しているんだ?)
(エルトとはマスターの世界で言うkmの事です。ちなみにエトだとmになります。)
(という事はディル村から南に30km進んだ場所にある、森で討伐という事か。)
(そうです。ついでにリュナイトとは頭部が蜥蜴で首から下が人間という亜人のような魔物です。)
(それだと、まるでリザードマンだな。)
(マスター、よく知ってますね。リュナイトの上級ランクの魔物がリザードマンと呼ばれています。)
(分かった、ありがとうな。)
剣の柄から手を離し、精霊との会話を切って未だにローラが突っ伏している窓口へと依頼書を持っていった。
「ローラ?ローラ!!」
「は、はひ!ど、どうひたんでふかミコトしゃん?」
余程慌てていたのか、呂律が回らない口で返事をしてくれた。
さらにローラの後方では他のギルド職員が口を手で押さえ必死になって、笑うのを我慢していた。
「この依頼を受けたいんだけど・・・。どうした?」
「いえ、なんでもありません。リュナイトの討伐ですね、頑張ってください。」
俺はローラに一礼し精霊から魔物情報を聞いていたが魔物図鑑で確かめる事にした。
「えっと、確か人型の魔物だって言ってたな。おっ、あったあった。」
図鑑の頁によれば、精霊が言ったとおり頭部は蜥蜴で胴体部分は細かい鱗が体表面にびっしりと張り巡らせている魔物。いうなれば地面を這い蹲って移動している蜥蜴を立たせた様な形状をしている。
注意点として手の指先にある鋭い爪に毒があるため毒消しが必要不可欠とのこと。
討伐証明部位は口の付け根に生えている黒くて鋭い牙か・・・。
「お、補足が書いてあるな。『討伐に失敗した冒険者から剣を奪って其れで攻撃する種も居る』!?」
剣を持って戦うほどの知識がある奴もいるのか・・・。厄介だな
今回も森の中での戦闘と言う事で大剣はまたしても出番は無く宿の部屋で留守番という事になった。
(さて行くぞ。お前の威力、当てにしてるからな。)
(マスターに期待される日がやっと・・・。うわ~~~ん!!)
剣に泣かれる(?)という不思議体験をしながら、俺はディル村への道を歩き始めた。
時間短縮のために全力で走りたかったのだが視界の端には同業者だろうか?剣や槍といった武器を装備している輩がやたらと目に付いていた。
「これじゃあ、走れないじゃないか。しょうがない、ゆっくりと歩いて行くか。」
マルベリアを出発してから凡そ4時間後、ディル村へとたどり着いた。
途中誰も周りに居ない事を確認して走ったり歩いたりを繰り返した結果、早めの到着となった。
(マスターって足が速いのですね~~。吃驚しました)
足が速いで済まされるスピードではないと思うが・・・。
(よく分からないんだが、この世界に来たと同時に身体能力が上昇したみたいだ。)
(それにしても変なんですよね?)
(何が変なんだ?)
(昨日の夢の中でマスターの魔力を計測した時には極微量しか感じられ無かったのですが、先程走っていた時には一瞬ながら膨大な魔力を感じ取ったんです。)
(俺に魔力が少ないといったのは精霊だろ?別の誰かの魔力を感じ取ったんじゃないのか?)
(そうなんでしょうか?とても身近で感じたような気がしたんですが・・・。)
そうこう話している間に、ディル村であった町の門へと辿りついた。
(マスター、ディル村に到着しましたね。ここは交易品として織物や装飾品が有名なんですよ。)
(そうか・・・。いや、そうだったのか。)
(なぜ過去形なんですか?いまでも発展している筈ですよ~~~)
精霊はまだ知らないのか、既にディル村が存在していない事に・・・。
俺がディル村に立ち寄ると、剣の精霊は息を呑むように静かになり悲しげな声を出していた。
地面を埋め尽くすほどの簡単な造りの墓が立ち並び、街の置くには寂れた小屋が一軒建っていた。
よく見てみると、その小屋には灯りが灯されており手書きで書かれたであろう『宿屋』という文字が壁に大きく描かれていた。
「まさか!?誰か居るのか?」
独り言を呟いたあと、確かめるかのように『宿屋』に飛び込むと・・・。
「あ、いらっしゃいませ!」
俺より少しだけ若い少年が宿屋のカウンターに佇んでいた。歳で言えば14、5といったところか。
「お一人様ですか?一泊二食で銅貨4枚になりますが構いませんか?」
「ちょっと待ってくれ!!」
「はい?」
「この村は山賊に襲われて壊滅し、生き残りはいないと聞いていたのだが?」
「はい・・・。たまたま村を離れていた僕は助かったのですが、帰ってきて村の有様を見て警護の騎士様に話を聞くと5人組の山賊に村を襲撃され住民は全員殺されたと聞きました。父も母も生まれたばかりの妹ですら惨殺されたと。」
俺がこの村に来た時には既に手遅れだった状態だったからな。俺がもう少し早く到着していれば・・・
「其処で唯一焼け残ったこの小屋で商売してディル村を元通りの活気溢れる村に再建しようと頑張っています。それにしても、お客さん珍しい髪と目の色をしてますね漆黒だなんて。そういえば、確か騎士様が話してくださった、山賊を退治してくれた方も黒い髪で黒い目をした方だと・・・・・・!?」
気づいたかな?まあ、こんな目立つ髪をしておいて気づかない方がおかしいが。
「あ、貴方が騎士様が言っていた方なんですね!?」
「そうだ。すまない、俺がもう少し早くこの村に到着していれば助けれたかも知れないのに・・・。」
「謝らないで下さい。僕は嬉しいんです、家族の仇を取ってくれた方に出会えた事に。」
その後、宿屋の少年と話をしながら1日目は新ディル村での一泊となった。