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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
雷の精霊編
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第151話 一気に大金持ち?

ヴィナリスを王都に送り届けた日の翌日、俺は身体が半分近くベッドに沈み込んだ状態で目が醒めた。


身体を起こそうと腕に力を入れて立ち上がろうとするも、まるで雲か綿菓子の中にでも手を突っ込んでいるかのように、全く手応えがなかった。

その後、ベッドの生地と格闘すること数分、盛大に床に身体を打ち付けて漸くベッドから立ち上がる事が出来たのだが、床に身体を打ちつけた音が響いたのか、部屋の外からパタパタという足音とガチャガチャという何か金属のような物が揺れて、擦りあうような音が聞えてきた。


そして足音と金属が擦れる音が止むと同時に、部屋の扉をノックする音が聞えてきた。


「御客様? お目覚めになられましたでしょうか?」


扉をノックする声に答える前に軽く寝癖や着衣の乱れなどを整えると、急いで扉の方へと足を進めた。


俺がそっと扉を開くと其処には昨日豪華な食事をトレイで運んできた、シュミアという名のメイドと、その両脇にはメイドの護衛のためか頭部以外を鎧で隙間なく覆っている騎士が直立不動で構えていた。


「おはようございます。よく御休み頂けたでしょうか?」

「ちょっとベッドが豪華すぎたけど、問題なかったよ」

「ところで先程、何か大きな物音が聞えましたが、如何為されたのでしょうか?」

「ああ、その事か。俺は昔から寝相が悪くてね、ベッドに寝ていたはずなのに目が醒めたら床に寝っ転がって居たんだよ。 恐らくは大きな物音って言うのは俺がベッドから落ちた音じゃないかな」


実際のところは底なしベッドから脱出するために飛行魔法を使い、ベッドの横に移動したところで気を抜いて墜落、その結果勢い良く床に背中を打ちつけたというのが正しいのだが。


「まぁ!? それは大変でしたね。御身体は大丈夫でしたか?」

「身体は人一倍丈夫だから、大したことはないよ」

「そうですか・・・・・・っといけない! 直ぐに朝食の準備を致しますので、少々お待ちいただきますか?」

「ん、分かった」

「それでは失礼致します」


シュミアがきびすを返して部屋を出てから数分後、昨日の様に銀トレイに料理を載せて部屋を訪れた。


「お待たせいたしました」


持って来たのはフランスパンを輪切りにしてバターのような物を塗った物と、見た事もない紫と緑のマーブル模様という異様な色をした野菜のサラダ、そして良い香りを漂わせる熱々のスープだった。


そして料理を並べ終えたシュミアが俺に着席を促したあと、頭を下げて部屋をあとにした。


その後は恐る恐る不気味な野菜を口にしたのだが、それは良い意味で裏切られる事となる。

不気味な野菜の見た目は兎も角として、味わった事のないスープやパン・野菜の美味しさに舌鼓を打ち、あっというまに平らげてしまっていた。

食べ終わってから数分後、シュミアが食器を下げに部屋を訪れる。


「ご満足いただけたようで何よりです。あと国王様より『改めて御礼を言いたいので玉座の間まで来るように』とのことづけを預かってきております。玉座の間への案内を呼びますので少しの間、お時間を頂きます」


シュミアは其れだけを言うと、食器を載せたトレイを手に、部屋を後にした。


それから数分後、シュミアが言っていた案内だろうか? 真っ赤な髪を肩まで伸ばした清楚な女性が部屋にやってきた。


「失礼致します。お客様の案内を申し付けられました、ケリュレイと申します」

「あ、ミコトです」

「ではミコト様、玉座の間に案内します。ですが、その前に腰の物をお預け願えますでしょうか?」

「腰の物って剣のことか。ああ構わないよ」

(すまないがルゥ、少しの間我慢してくれるか?)

(分かりました。お気をつけ下さいマスター)


俺は瞬間的にルゥと念話し、剣を目の前のケリュレイという女性に手渡した。

事前に亜空間倉庫内にルゥを仕舞っても良かったのだが、逆に手ぶらだと怪しまれてしまうので敢えて腰に装備しておいた。


「確かにお預かりいたしました。それでは此方へ・・・・・・」


ケリュレイは俺の剣を胸の前で大事そうに抱えると、そのまま俺を連れて玉座の間へと歩いていく。


数秒後、長い廊下を抜けて案内された先には左右に開かれた重厚な扉が威圧感を漂わせて存在していた。


そしてその重厚な扉の両脇に入口を護るようにして重騎士とも思える、全身(頭部を含む)を隈なく覆う鎧を着込んだ、2人の騎士が斧槍ハルバードを構えて護っていた。


「此処で少々お待ちください」


女性は俺を扉の前で待たすと、開け放たれた扉の前で深く頭を下げ、言葉を口にした。


「失礼します。ミコト様をお連れ致しました」

「うむ、入室を許可する」

「はい。ではミコト様、此方へ」


俺はケリュレイに促されながら玉座の間へ足を踏み入れると、其処には壁一面に騎士が立ち並び、正面の玉座には国王、その隣には王妃、そして国王の横にヴィナリス皇女が楽しそうに王妃と会話していた。


周囲に立ち並ぶ騎士の目に晒されながら玉座の前に進み、片膝を折って座ろうとしたところで国王から声を掛けられた。


「臣下の礼を取らずとも良い。そなたは我が愛娘であるヴィナリスの命の恩人じゃ、腰を上げよ」

「はい」

「さて、改めて礼を言う。そなたがあの場に居らなければ、ヴィナリスはこの地を踏む事は出来なかったであろう。少量ではあるが、褒美を取らせる」


国王が手を叩いて壁際に並んでいる騎士に合図を送ると一番玉座に近い場所に立っていた騎士が歪に膨らんだ茶色の袋を俺に手渡してきた。


「我が娘に値をつける訳ではないが、ほんの気持ち程度じゃ」

「有難く頂戴いたします」


俺はズッシリと重い袋を手に『ほんの気持ち』どころではない事を思い知った。


「それと、ヴィナリスから聞くところによれば、何かを探して旅をしていると聞くが?」

「はい。伝承にまつわる場所や、神聖なる祠を探して各地を旅しております」

「ふむ、それならば宮廷魔術師のイシュナムに聞くのが手っ取り早いじゃろう。更に城内を自由に歩く事も許可する。ただ機密上、立ち入れない場所には騎士が立っているがの」

「ありがとうございます」

「あなた、今イシュナムは休暇中になっている筈ですよ」

「む? そうじゃったか?」


その後、謁見を終えた俺は1週間後くらいまで宮廷魔術師のイシュナムさんが戻ってこないと聞かされ、更に街の中にも図書館があると聞き、預けていた剣と入城許可証を受け取り、城の外へと出た。


このまま客室で過ごしても良いとは言われたが、流石に其処まで厄介になるわけにはいかず(本音はベッドが豪華すぎて落ち着かないという事)に宿で部屋を取ると言う事にした。


因みに客室係となっていたシュミアは俺が城に来たときの案内係になってくれるんだそうだ。


そしてその日の夜、1泊辺り銀貨1枚の宿屋で国王から『ほんの気持ち』として貰った袋を広げると、其処には黄金色に輝く硬貨が20枚入っていた。


ミラに聞いた、この世界の実情によると、日本円にして100円相当の銅貨が100枚で此処の宿代である銀貨1枚(1万円相当)、更にその銀貨が100枚で金貨1枚(100万円相当)なんだそうだ。


ということは・・・・・・金貨20枚は2000万円!?

何処が気持ち程度なんだーーーー!!



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