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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
雷の精霊編
161/230

第150話 オーバーテクノロジー?

150話達成です!

(閑話も含めると161部数目)


俺はメタボな宰相が脂汗を掻きながら昇って行った階段を横目で見ながら、セフィアが歩いて行った方向を疑惑の眼差しで見ていた。


「ミコト殿、此方に付いて来て下さい」

「階段を上がるんじゃないのか? 何処に行くんだ?」

「姫様もいらっしゃるので、別の方法で一気に上へと参ります」


『別の方法?』と思いながらセフィアの後をついていくと、其処には遙か上まで吹き抜けになっている煙突のような場所で、床には天井付近に強固な鎖が付けられている鳥篭の様なものが設置されていた。


事もあろうにセフィアと姫は、何の躊躇もなく鳥篭の中へと入って行ってしまう。


「何をボケッと突っ立って居るのじゃ? はよう乗らぬか」


俺は頭に数多くの疑問符を浮かべながら、言われたとおりに謎の鳥篭の中に足を踏み入れると、先に乗り込んでいたセフィアがスライド式の扉(?)をピシャリと閉めた。


扉が閉められた直後、俺達を乗せた鳥篭は遙か頭上でギシギシという音を立てながらゆっくりと昇って行った。 


「此れはエレベーターなのか!?」


如何見ても機械が発達しているとは思えない、この世界で何故エレベーターがあるのか考えれば考えるほど分からなくなっていたのだが、ヴィナリスの言葉で更に驚かされた。


「『えれべった』とはなんじゃ? これは魔力で動く昇降機じゃぞ」

「昇降機? それに魔力と言ったか、どんな仕組みになっているんだ?」

「仕組みは我にも良く分からんが、叔父上から聞いた話によれば、今から数十年前に城に来た一人の変わり者が魔法の力で動く『ぎみっく』とかいう未知なる物をこの地に伝え、城の研究者達が試行錯誤を重ねた結果、数年前に無事完成した昇降機がこれじゃ!」


「へぇ~~~凄いんだな」

「『へぇ~』って其れだけなのか!? 他に言うべき事はないのか?」

「と言ってもな。俺の居た場所(元の世界)には、当たり前のように存在していた物だからな」


俺が口にした『当たり前の存在』と言う言葉を耳にした2人は、何故か目玉が零れ落ちそうなほど眼を見開いて俺を見つめている。


(マスター、自分の居た世界での常識をこの世界で一緒にしないで下さい。ここにはマスターの思っている『機械』や『電気』は存在しないんですよ?)

(! そういえばそうだった。あまりにもエレベーターそっくりだったから、ちょっとしたデジャヴを感じてたよ)

(はぁ~言ってしまった物は仕方ありませんが、2人が説明してほしいみたい様な顔でマスターを見てますよ?)

(しくじったな。如何説明すれば良いとおもう?)

(・・・・・・頑張ってください)


ルゥにまで厭きられた俺は時が止まったかのように、声も発せずに俺を見る2人と静かに上へ上へと上がって行く昇降機エレベーターの音に居てもたっても居られなくなっていた。


そしてその沈黙を破ったのは誰よりも昇降機の自慢をしていたヴィナリスだった。


「ミコト! どういうことじゃ? このような昇降機が当たり前のようにある場所とは何処じゃ? ミコトは何処の王族じゃ?」

「ミコト殿は本当に何者なんですか? 旅の魔術師と聞いていましたが、本当は何処かの皇子様なんですか? 昇降機が当たり前の存在なら、この城と同等の高い建物があるということですよね!?」


立て続けに色々な質問をするヴィナリスとセフィアに『順番に答えて行くから落ち着いて』と、とりあえずその場しのぎで宥め、2人が肩の力を抜き『さて如何説明するか』と思っていたところで昇降機は停止し、セフィアによって扉が開けられた。


そして昇降機の扉が開くと、其処には全身を隈なく覆う鎧を身に付けた男性か女性か分からない複数の騎士達と、貫禄ある髭を口元から顎の下まで生やした、見るからに王と思われる初老の男性と穏やかな笑顔で何処か泣きそうな表情の年配の女性がヴィナリスを見つめていた。


「おお我が愛しきヴィナリス、無事で何よりです。さぁ、元気な顔を母に見せておくれ」


年配の女性は周囲を取り囲む騎士を掻き分けるようにして、未だ昇降機の中にいるヴィナリスに抱きつくと、周囲の眼も気にせずに嬉し涙を流していた。

「は、母上、皆が見ております。落ち着いてください」

「そうじゃぞヴィラ、オヌシばかりヴィナリスを独り占めするでない!」

「父上もですよ。いい加減離してください、母上!」


ヴィナリスが父上、母上と呼ぶ存在。そしてその周囲を取り囲む尋常ではないほどの重装備な騎士達。


間違いない国王と王妃、そしてその護衛を務めるという近衛騎士たちか。


「セフィアもご苦労でしたね。よくぞヴィナリスを護ってくれました、礼を言います。ありがとう」


年配の女性はヴィナリスに抱きついたまま、俺の横に居るセフィアに笑いかけ礼を述べている。


「勿体無きお言葉。姫様の護衛騎士として、当たり前のことをしたまでです」

「ふふふっ、そうだったわね。あら? 貴方は何方かしら?」


此処に来て漸く、王妃はヴィナリスから手を離し、俺の目の前に立ち全てを見透かすような目で俺を真っ向から見てくる。


「王妃様危険です! お下がりください」


周りを取り囲んでいた騎士達も王妃を俺という存在から護ろうと昇降機内に足を踏み入れようとするが、扉付近に王妃が居る所為で乗り込めずに居た。


「は、母上、ミコトはアルガロックの地から此処まで我等を護衛してくれた魔術師殿なのじゃ」


ヴィナリスの口から『魔術師』という事を聞かされた近衛騎士隊は口々に『魔術師!?』や『我等では勝ち目は』などといった声が巻き起こっていた。


「ヴィナリス、貴女には聞いてません。貴方達も黙ってなさい!」


王妃は先程までの親馬鹿とも思える行動をした人物とは思えないほどの威厳があった。


「さて、ミコトとか言いましたね。ヴィナリスはこう言ってますが、間違いありませんか?」


俺は此れだけの力を持っているにも拘らず、『蛇に睨まれた蛙』状態になり、王妃の目線から目をそむけることが出来ずにいた。


そのままどれだけの時間が流れたのだろうか。

時間にして数秒といった所だろうが、自分の中では王妃に出会ってから何時間も経っているような気がしていた。


「如何やら本当に助けてくれただけのようですね。ヴィナリスの命の恩人に対して失礼な事をしました。許してください」


王妃は俺から視線を外すと、その立場にも拘らず何処の誰とも知れぬ俺に対して頭を深く下げていた。


「そうか、ヴィアがそういうのなら間違いあるまい。ミコトと言うたな、我からも礼をいう。ありがとう」


流石に王はそう易々(やすやす)と頭を下げなかったが、その表情を見る限りでは俺への疑惑は晴れたものと思って良いだろう。


「いつまでも、愛娘を助けてくれた大切な方をこのような場所に立たせておく訳には参りませんね。部屋を用意させますのでゆっくりお休みになられてくださいね」


そして王妃が昇降機を降り、そのまま王妃に連れられるようにしてヴィナリスも降りて、その護衛騎士であるセフィアも昇降機を後にする。

さて俺も降りようとすると、まるで『モーゼの十戒』でも起きているかのように、周囲を取り囲む近衛騎士が道を開けていた。


近衛騎士の傍を通る時にふと足元を見るとカチャカチャと音がしている。

俺が魔術師だと聞かされたことで、周りから驚きの言葉が数多く出た事から、兜で顔の表情は知る事はできないが、恐らくは恐怖しているんだろう。


「ミコトさん、この部屋を使ってくださいね。後ほど夕食を運ばせますので、御身体を休ませて下さい」


周りの騎士達の事を考えていると前方に王妃が立ち止まり、一つの部屋を右手で指し記していた。


「あ、ありがとうございます」

「では失礼しますね。ほら、貴方達も持ち場に戻りなさい」

「「はっ!」」


近衛騎士達は一糸乱れずに返事をすると、ごく一部の人員を扉の前に残して足早に去って行った。


『実はこの城で一番力があるのは、王妃様ではなかろうか?』と思いながら、部屋で休む事にした。


その後は王妃様の言ったとおり、一人のメイドのような格好をした女性が豪華な夕食を乗せたトレイを手に部屋を訪れ、部屋のテーブルに皺一つないテーブルクロスを敷き、豪華な料理を並べていく。


その後、料理を運んできたシュミアと名乗ったメイドの女性は俺が此処に居る間のお世話をすると言って部屋を後にした。

その数十分後、何処かで俺のことを見ていたかのように丁度、料理を食べ終えた頃に部屋に現れ食器を下げていった。


食事後、昇降機エレベーターの事を聞きにヴィナリスが来るかもと思い、待っていたのだが一向に来る気配がなく、そのまま豪華すぎる妙に柔らかなベッドで眠りについたのだった。



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