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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
剣の精霊編
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第15話 不正行為

一泊二食銅貨5枚に含まれる食事を抜いてしまうと勿体無いという理由からレインさんに叩き起こされた俺は朝食後、ギルドにて依頼探しをしていた。


「今日はどんな依頼があるのかなっと。」


採取依頼はランクが低く、経験値にならないため上級討伐依頼の掲示板を舐めるように眺めていると2人組の冒険者が討伐の証明部位であろう、鳥のくちばしのようなものをローラに見せていた。


「どうだ?A級討伐依頼のテラホークを討伐して来たぜ!!此れが証明部位の嘴だ。」


俺の周りには冒険者がいないため、剣の柄を握って精霊と会話する事にした。


(前から思ってたけど、良くあれだけの物でローラは判別する事が出来るよな。)

(それほどローラさんが優れていると言う事でしょうが・・・。マスター、あの嘴はテラホークの物ではありませんね、よく似ていますがアレはレインコールという大人しい魔物の嘴です。)


『精霊も詳しい事を知っているな』と感心していたが直ぐに教えなければと思った。


(それなら直ぐにローラに知らせないと・・・。)

(いえ、マスター。ローラさんはどうやら気が付いてるみたいですよ? それにマスターがそんな事を言えば、何処で誰に教えられたのか徹底的に追求されますよ?)


それは困る・・・。精霊から聞いたなんて言えるはず無いからな。

精霊に言われ、考えながらローラの方に顔を向けると何故か小刻みに震えていた。


「ちょっとあんた達!!此れの何処がテラホークの嘴なのよ!!ふざけるのも大概にしてよね。」

「なんだと!?何処からどう見てもテラホークじゃねえか?」


ローラも負けじと冒険者相手に喧嘩腰で言い争いを始めた。


「素人目には分からないでしょうがね、テラホークの嘴は先端部が極一部分だけ赤いのよ!?この嘴をみなさいよ、端から端まで全部真っ黄色じゃない!」

「なんだと!?この野郎!!」


2人組の冒険者の一人はローラを睨みつけているが、もう片方はあきらめたのかガックリと項垂れていた。


(なぁ、ローラの言っている事の方が正しいのか?)

(そうです、流石ですねローラさんは。それに引き換え、あの男は往生際が悪いですね。)


再び男達の方に目を遣ると、喧嘩腰でローラに詰め寄っている男の片割れが必死に相棒を宥めていた。


「もうやめとけ!その姉ちゃんの言ってる事は正しいだろうが、俺達がズルをしたんだ・・・諦めろ!」

「ちくしょう!上手く行くと思ったんだがなぁ」

「テラホークの討伐期限は残り1日ありますが、たった1日では街から討伐場所までの往復は無理なので任務に失敗したとみなし、罰金として銀貨3枚を徴収いたします。」


男は渋々、腰の袋から銀貨3枚を取り出しローラへと手渡した。


「どうすんだよ!?宿に泊まる金も残って無えじゃねえか!!」

「それも此れも、お前が小細工をした所為だろうが反省しろ!!」


男達は口喧嘩しながら時には殴り合い、街の奥へと消えていった・・・。

俺は依頼探しを一時中断しローラに話しかけた。


「ローラ、見ていたぞ。よく判別できたな」

「え!?ミコトさん、見ていたんですか?恥ずかしいです。」


精霊に教えられ、何の嘴だったか知っているが敢えて聞いてみることにした。


「そういえば、さっきの嘴だけどテラホークの物じゃなければ何の嘴だったんだ?」


ローラは一呼吸置かずに直ぐに答えてくれた。まるで頭の中に全ての知識が詰まっているかのように。


「この嘴はレインコールという魔物の物です。魔物にしては大人しい性格で滅多な事では討伐対象にはならないんですよ。見た目も綺麗で観賞用のペットにする貴族も多いと聞きます。」

「そうなんだ・・・。」


精霊に聞いた事と殆んど同じ答えが帰って来たことに吃驚していた。


(マスターって、性格が少し悪くないですか?私の事を信用してくれなかったんですね。)

(そんなつもりはないよ。ローラが答えられるか試しただけだから)

(冗談ですよ。マスターの思考を読んで全て分かってましたから)

(お前の性格のほうが悪くないか?)

(ほんの少しだけですけどね。 あ、マスター無意識だとは思いますが、考え事をするなら剣を触らないほうがいいですよ、丸聞こえになっちゃいますから。)


言われて初めて気が付いた。無意識ながら剣の柄に肘を置いた腕組みの状態で壁に寄りかかっていた。


「ミコトさん?どうしたんですか急に黙り込んじゃって。」

「い、いや~~ローラの知識の凄さに吃驚してただけだから。」

「私はギルドで働き始めてから10年近く経過してますから、今現在確認されている魔物のことは全て頭の中に入っているんですよ。」

「ローラは凄いんだね。尊敬してしまうよ」


そう言いながら俺はローラの頭を撫でると、途端に顔が真っ赤に染まり倒れるように机へと突っ伏してしまった。

ローラも仕事で疲れているんだな・・・。無理をしなければいいけど。

そう思いながら俺は掲示板の場所へと依頼を探しに戻った。

その頃、剣の中にいる精霊はと言うと・・・


(マスターって天然なのか鈍感なのか、ローラさんが可哀想に思えてきたわ。)

「えへへぇ~~~~~~ミコトさ~ん。」


ギルドの窓口には他の冒険者から不気味がられる終始笑顔なローラが見受けられたという。

ミコトの鈍感さ(?)が明らかに・・・

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