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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
雷の精霊編
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第147話 魔術師の脅威

その後、少女から聞き取れた単語を頭の中で並び替えた結果、俺が病院か何かだと思っていた、この場所はあの際どい衣装を身に付けていたイナミスという女性がリーダーを務める、ギルドチームの宿舎らしい。


「なんとなくだけど、分かってきたよ。 それにしても、どうしてそんなに緊張しているんだい?」

「それは・・・「それはアンタが魔術師だからだよ」・・・!」


と其処へ、先程のイナミスと呼ばれた女性が、ランニングシャツに半ズボンという服装で頭を掻き毟りながら階段を下りてきた。


「貴女は先程のイナミスさん、でしたっけ?」

「ああ、そういえば自己紹介が遅れたね、俺はイナミス。不本意ながらも、このギルドのリーダーを務めている者さ。おっと敬語はつけないでくれよ? ケツがむず痒くなっちまうからな」


とても女性とは思えない物言いで、少女に睨まれているイナミスさん。


「それで魔術師殿?」

「あ、俺の名前はミコトです。俺も呼び捨てで構わないですよ?」

「そういうわけにはいかないよ。魔術師殿を呼び捨てにしたとあっちゃあ、周りから要らぬ誤解を生むからな。ミコト殿はそこ等に居る、いけ好かない魔術師とは何処か違うようだけどねぇ・・・・・・」

「イナミスさん、幾らなんでも失礼じゃないですか?」

「そんで、さっきから口喧しいコイツは弓使いのユナリーだ。ほら挨拶」

「あ、あのユナリーと言います。先程はお見苦しいところをお見せしてスイマセンでした」 

「ん? 宜しく」

「それでさっきの事だけど、魔術師が怪我人を治療して金を要求しないなんて、一体如何いう風の吹き回しだい?」

「そんなに変な事ですか? 目の前に傷ついた人や困っている人が居れば助けるのが普通でしょう?」

「やっぱりミコト殿は普通の魔術師とは違うようだね。魔術師なんてものは、俺達みたいな魔法を使えない者を見下して、人が困っていても手を指し伸ばす事はない。もし極稀にあったとしても報酬として莫大な金をふんだくる、人でなしの集団なんだよ」

「イナミスさん、流石に言いすぎですよ。この方が気を悪くされたら、如何なさるのですか」

「いや気にしてないから」

「という事で謝礼金を受け取ってくれないか?」

「何が『という事』なのか分かりませんが、こんな事なんかでお金を貰うわけにはいきませんよ。俺は当たり前のことをしただけですから」

「その『当たり前の事』が此処では異常なんだよ。良いから貰ってくれ、そうじゃないと此方の気が納まらないんだよ」


イナミスはそう言いながら、半ば無理矢理に俺の手に銀色のコインを5枚握らせた。


「普通の魔術師に怪我の治療を頼んだら、最低でも此れの10倍はゆうに掛かるんだ。要らないって事だったけど、気持ち程度に貰ってくれ」

「其処まで言われては断れませんね。ありがたく頂戴いたします」


ふと気がつけば、辺りは既に夕暮れを通り越して暗闇になりかけていたため、街の探索を中止し宿に戻る事にした。


宿屋に戻ろうと建物の戸に手を掛けて外に出ようとした時、今まで俺に対して必要最低限口を開こうとしなかった少女が不意に頭を下げてきた。


「あ、あの本当にケインを助けてくれて有難うございました」


少女は其れだけをいうと逃げるようにして階段を上がって二階に上がっていってしまった。


「気を悪くしないでおくれよ? ユナリーの両親は昔、魔術師に殺されたんだ。それ以来、魔術師を見ると無意識に震えが来るらしいのさ」

「そうだったのですか・・・・・・別に気にしてませんから、怒らないであげてください」

「ああ、今日は本当に助かったよ。俺達が力になれることがあれば喜んで手伝うから、何かあれば遠慮なく頼ってくれよ? じゃあ、またな」


そして俺はギルドを後にして宿屋に戻った。

宿屋の中にある食事処で遅めの夕食を食べて部屋に戻ると、その数分後にセフィアが部屋を訪ねてきた。


「ミコト殿、お帰りでしたか。明日のことで、お話があるのですが今は大丈夫でしょうか?」

「あ、ああ構わないよ。入って」

「では、失礼致します」


恒例ともなった、ヴィナリスが如何しているのか聞くと『寝ています』との一言で終らせてしまった。


本当に1日何時間寝るつもりなんだか・・・・・・。

昼間あれだけ寝ていたら、夜は寝れなくなると思うんだけどな。


「それで明日の事ですが、街に常駐する騎士隊に掛け合って馬車を1台と護衛の騎士を2人借りる事が出来ました。これで何の問題もなければ、王都コーランディアまでは3日で到着する事が出来ます」

「3日か。食料とかはどうするんだ?」

「それも干し肉や果物といった、日持ちする物を馬車に積み込む手はずになっています」

「足りなければ、俺が取り出すから心配要らないか」

「此処までで何か質問はありますか?」

「特にないけど王都に到着した後、俺は如何すれば良いのかな?」

「ミコト殿は姫様を救ってくれた恩人ですので、貴賓扱いとして城でおもてなしをする事になると思いますが、何か御不都合な点でもございますか?」

「不都合って程じゃないんだけど、旅の目的のとある(・・・)場所を探さないといけないから、長居は出来ないかもと思ってね」

「とある場所ですか? それなら宮廷魔術師様が領土内外の事は何でも知っている、国一番の物知りな方なので、聞いてみては如何でしょうか?」

「そんな偉い人に俺が会っても大丈夫なのか?」

「立場に拘らない気さくな御方なので、問題はないと思いますよ」


セフィアは其れだけを言うと『おやすみなさい』と言い残して部屋に戻っていった。


俺も亜空間倉庫から取り出した果物や魔物の肉で腹を膨らませると、明日に向けて早めの就寝を取った。




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