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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
剣の精霊編
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第14話 夢の中で・・・

この話から、ほんの少しだけ流れが変わります。

武器防具屋から戻ってくると、宿屋と併設して建てられている酒場で客を捌いているレインに話しかけられた。


「おや?昼過ぎまで寝ていたと思ったら、御飯も食べずに何処に出かけていたんだい?」

「ちょっと討伐依頼で剣を折ってしまって武器屋に買いに行ってました。どれにしようか迷ってしまって今まで掛かってしまいましたが。」

「少し早いけど御飯食べていくかい?」

「お願いします。」


時刻は夕方にもなっていない頃だったが朝から何も食べてなかったため、少し早めの晩御飯になった。

その夜、宿屋の自室にて・・・。


「腹が減っていたとはいえ、流石に食べ過ぎたな。」


宿泊費に含まれる食事では飽き足らず、酒場で更に食べ続けた結果、満腹で動けなくなった。


「それにしても武器屋で聞こえた声は本当に空耳だったのかな?」


ベッドに横になりながら買ったばかりの剣を握って考えていると突然、強烈な睡魔に襲われた。

気を失うように眠り、夢の中にいざなわれた俺は信じられないものを見ていた。

なんと宿屋のベッドで眠りに就いたはずが目を開けると異世界に来る前に住んでいた自分の部屋のベッドに寝転んでいた。


「此処は・・・俺の部屋か。俺は現実世界に戻ってきたのか?」


当然、両親は既に他界して返事をしてくれる者は居ない筈なのだが・・・。


「ううん違うよ。ここはマスターの夢の中だよ。」

「誰だ!?」


俺が部屋の隅にある勉強机に目を向けると真っ白な服を見につけた少女が椅子に座っていた。


「へぇ~此処に住んでいたんですね。結構いい世界じゃないですか」


両親が生きていた頃は父さん、母さん、俺の3人暮らしで妹なんて居なかった筈だ。

そう考えると、この少女は何者だ? 真っ白な服に銀髪の少女。パッと見ではまるで幽霊・・・

「マスターって失礼ですね、私は幽霊なんかじゃありません!!」

「あれ?俺、声出してた?」

「最初に言いましたよ?此処はマスターの夢の中、言葉に出さなくても心の中で会話できるんです。」

「お前は誰だ? マスターとは何だ?」

「一度に疑問を投げつけてこないでください!順番に答えますから。 まずは私が誰かですが、私はマスターが購入した剣に宿りし精霊、名前はマスターが決めてくださいね。」

「精霊?それじゃあ武器屋で買った白銀の剣にお前が宿っていたと言うわけか?」

「そうですよ。 他の人とは波長が合わなくて傷つけちゃったけど、マスターなら大丈夫みたい。」

「武器屋で聞こえた声って・・・。」

「あれ、聞こえたんだ!? 精霊の声って普通は聞こえないものなんだよ?」

「今、会話してるけど?」

「此処は私が力を使ってマスターを呼び寄せたからだよ。でも、ちょっと待って・・・夢の中以外で会話が出来るという事はマスターって剣士なのに魔力持ってるって事になるんだけど。」


俺は剣士ではなかったのか? それとも、オールラウンダーって奴か?


「じゃあ今までの持ち主とも夢の中で会話してたって事?」

「ううん・・・さっきも言ったけど、波長が合わなければ夢の世界に呼ぶことも出来ないからマスターと顔を合わせて喋ったのは此れが初めてだよ。 ところでマスター、ちょっとゴメンね。」


そう言うと自称:剣の精霊は俺の手を握り締めると指先に口付けをした。


「やっぱり、マスターって魔力持ってるよ。ただ微量しか感じられないから魔法は使えないけどね。」


それじゃ、ファンタジーに出てくるような魔法剣士にはなれないか・・・。


「でも此れだけ波長が合う人も珍しいから、夢の中以外でも会話できるかもしれないね。」

「どうすればいいんだ?」

「目が醒めたら剣の柄を握って話しかけてみて。 言葉に出さなくても心の中で思うだけで会話できるから・・・剣を握って独り言を言ってたら、危ない人になっちゃうよ?」


剣を握って心で会話か・・・。


「剣を握ってる時しか会話できないけど、私は何時も聞こえているから聞きたいことがあったら遠慮なく聞いてね。 あともう一つ、今日みたいに剣の柄に手を置きながら寝ると、この場所に来られるように設定しておいたから是非、活用してね。」


なるほど、そういえば握ったままだったな。


「分かった。これからも宜しくな」

「はい、お願いしますね。マスターの夢を通してマスターのもと居た世界の情報を、取り込ませてもらいましたから、分からない事があったら何時でも私に聞いてくださいね。」

「分かった。頼りにしてるぞ精霊。」


今度、此処に来る時までに名前を決めておかないとな・・・

何時までも“精霊”じゃ可哀想だし。

そう考えていると、剣の精霊の顔が見る見るうちに赤く染まっていった。


「マスター、いい名前を期待してますね。そろそろお目覚めの時間です、さぁ起きてください。」


そうか、考えるだけで会話になってしまうんだったな・・・。

夢の中で起こされるという、訳の分からない出来事から数分後、目が醒めると俺の部屋ではなく元の宿屋のベッドの上に寝ていた。

手には鞘に納まった状態の剣の柄をしっかりと握り締めていた。

夢で言われたとおり、柄を握りなおして心の中で会話する。


(剣の精霊、聞こえるか?)

(おはようございますマスター、よく聞こえます。私の言葉も聞こえていますか?)

(ああ、問題ないようだな。)

(マスター、廊下から昨日のレインさんという方の気配を感じます。)

(そんな事まで分かるのか。)


会話をしていると不意にドアをノックされた。


「ミコト起きてるかい?朝ご飯出来てるから降りといで!」


精霊の言ったとおり、レインさんが呼びにきた。

御飯を食べながら聞いてみると宿代を前金で貰ってるので食事を食べないと勿体無いという事らしい。



精霊との会話は()で記載していきたいと思います。

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