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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
土の精霊編
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第139話 錬金資格証獲得

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ありがとうございます。


これからも頑張ります!

グレイアスとナジェリアを昔読んだ小説の一文を利用して言い包めた俺は宿屋の一室でこれからの事を考えていた。


(錬金も覚えたことだし、そろそろ土の精霊探しを再開するとしようか)

(一体、何処にいらっしゃるのでしょうか? 土の精霊様は)

(土って言うぐらいだから、地面の下とか洞窟の中とかじゃないか? ミラは何か知らないか?)

(私も全ての精霊の事を知っているわけではありませんが、主様の仰られている事もあながち間違いとは言い切れませんね。 精霊の波動が感じられることから近くに居る事は分かりますが、どの方角に居るかまでは、残念ながら)

(そうか。俺が行っていたノスフィルド鉱山、南のサウシュルド鉱山、東のイストライル鉱山か。 どれかに居てくれると良いんだがなぁ)

(そういえばマスターと一緒に試験を受けていた、ルナという女性はどうなったのでしょうね?)

(今頃は何処かの鉱山で錬金してるんじゃないか? 期日は確か明日までだろ?)


精霊との念話を終えた俺は、色々な事があって気分的に疲れていたため、何時もの様に酒場へ行かず、亜空間倉庫に置いてある果物を食べて早めの就寝となった。


そして翌朝、俺は亜空間倉庫から20kgの錬金した鉄を取り出すと、小脇で抱えて城へと向かった。

城門に到着するとほぼ同時に朝を告げる鐘の音が鳴り響き、槍を携えた衛士が姿を現した。


「おっ? 早いな。今日も錬金講習か? 頑張れよ」


何時もの様に城門の衛士に通行証を見せると、城内の教室に向けて歩き出した。

数分後、ルナとともに錬金の授業を受けていた教室に辿りつき、更に十数分後には現代では既に使われなくなったレトロな計量器を抱えたグレイアスが足で引き戸を開けるという行儀が悪い格好で入ってきた。


「おはようございます」

「お? あ、ああ、おはよう」


突然、挨拶をした俺に対してグレイアスは手に持っていた計量器を落としそうになり、慌てて持ち直していた。


「さて、昨日も言ったとおり、錬金本試験の合否を確認するぞ」

「はい」


グレイアスは教壇の上に秤を置き、目盛りが正確に0と重なるように微調整をしている。

俺はあらかじめ亜空間倉庫から取り出しておいた、約20kgもの鉄塊を教壇の前にある机に置いた。


「それでは、まず最初に質量からの計測だ。 20kgあれば文句なしの合格、1gでも足りなければ、その時点で不合格となる」


グレイアスはそう言うと、鉄塊をゆっくりと秤の上に載せはじめた。

塊を全て載せ終わると、秤についている目盛りは18~22kgの間を行ったり来たりしている。

緊張しながら待つこと数秒後、秤の目盛りは20kgと21kgの中間で微動だにしなくなった。


「ふむ、第1の審査は合格だな。 それでは続けて第2の審査に移行する」


グレイアスは秤の20kg~21kgの中間で停止している針を固定すると、鉄塊を秤から下ろし、何故か錬金術を施している。


グレイアスの手から放たれた土属性の光が鉄塊を包み込むと、その数秒後には鉄塊の横に土気色の石や細かい砂が散らばっていた。

そしてグレイアスが鉄塊を再度、秤の上に載せると固定されていた針が2目盛りほど20kgの方に移動した。


「ふむ、鉄塊に含まれていた不純物も範囲内だな。 第2の審査も合格だ」


俺はこの『審査』が何処まで続くのか不安になり、グレイアスを心配そうに見つめていると。


「ミコト、心配しなくても次の審査で終わりだ。 それでは最後の審査として素材の鑑定を行なう」

「鑑定ですか?」

「うむ。 俺としては生徒を信じたいところだが、毎回ズルをする奴等が後を絶たなくてな」

「ズルとは?」

「職人ギルドで入坑許可証を渡す時に言ったと思うが、鉱山の中は時として魔物が蔓延る危険な場所だ。 そのため、敢えて危険な鉱山に入らずに、そこらに落ちている鉄屑をあたかも鉱山で採掘してきたかのように練金して、持ってくる奴が毎回数人はいるんだ」


なるほど、鉱山の内部のような暗闇で錬金中に背後から魔物に襲われれば、護衛がいかに熟練の戦士でも危険だということか。

それに護衛代も節約できるから一石二鳥というわけだな。


「それで見分ける方法なんだが、上手い事に街の近くにある3箇所の鉱山で採取できる鉄には少量の微弱な磁気が含まれていてな。 熟練の錬金の使い手でなければ、探知すら出来ないほどの極微量なんだ」


グレイアスはそう説明すると、上着のポケットから約10cm四方の物体を取り出した。


「此れは鉱山で取れた鉄を錬金で圧縮した物だ。 此れを今からミコトの持ってきた鉄塊に融合させる」


圧縮? 其れが如何いうことになるんだ??


「意味が分からないといった顔だな。 此れを融合することにより、素人目で見ても鉄塊が磁気を帯びているか、帯びていないかを判断する事が出来る。 もし仮に鉄塊に磁気が無ければ、融合することなく剥がれ落ちる」


そう言いながら、鉄塊の上にポケットから取り出した物体を置くと、掌から土属性の魔力を放出して鉄塊全体を覆いつくした。


その時間は第2審査の時ほど長くは無く、一瞬で終了した。

肝心の結果はと言うと、磁気を帯びた物体は何処にも不自然な所はなく、鉄塊にタンコブでも出来たかのように融合していた。


「よし! 最終審査も合格だ。この結果により、ミコトを錬金術士と認め、錬金証を授与する」


グレイアスは懐から八角形の中央に何か鷲が翼を広げている絵が描かれているバッチのような物を取り出すと、俺が着込んでいる衣服の右胸へと取り付けた。


「おっと、そうだ!合格祝いとして珍しい物を見せてやろう。 その前に磁鉄は剥がさせて貰うよ」


グレイアスは再度、鉄塊を土属性魔力で包み込むと、磁鉄を引き剥がした。


そして徐に鉄塊に手を置くと、先程の審査の時とは比べ物にならない量の魔力で鉄塊を包み込んだ。


顔からは苦しいのか脂汗が滴り落ちて、足元に水溜りが出来上がっていく・・・。


(マスターほどではありませんが、かなり強力な魔力が放出されていますね)

(俺的に言うと、クラス何ぐらいだ?)

(そうですねぇ~~クラス20と言ったところでしょうか)


普通の人間でクラス20の魔力を放出しているのか。 流石は隊長格といったところか。


鉄塊がグレイアスの魔力で包み込まれてから数十秒が経過した頃、土気色の光は少しずつ収まり始め、完全に光が消えた頃には鉄塊の置いてあった場所には1本の剣が置かれていた。


「ハァハァ・・・・・・こ、このように一定時間、大量の魔力を送り続けることによって、特定の道具を使わなくても武器を精製することが出来る。 俺もまだまだ精進が足りないな」


次の瞬間にはグレイアスは椅子に倒れ込むようにして座り、肩で息をしていた。


(確かに便利と言えば便利だけど、これだけ疲労困憊しては戦いどころじゃないのでは?)

(マスターのように魔力が無限な場合は別として、一般人にとっては問題ですね)


グレイアスの息遣いが安定してきたところで気になることを聞いてみる事にした。


「ところでルナの方はどうなったんです? 合格したんですか?」

「ハァ、ルナはミコトが合格した二日後にギリギリではあったが合格し、南のサウシュルド鉱山に向かった。 期限は今日の日没までだから、もし戻ってこなければ不合格ということになる」


良かった合格したのか。 あとは無事に帰ってくるだけだな。


「ミコトはこの後、如何するんだ? 俺としては土術士隊に入ってほしいんだが」

「まだ決まっていませんが、もう暫く各地を旅しようかと思っています。 その後は決まってませんが」


と言うより、土の精霊が見つかれば次の異世界に旅立つから俺の記憶は皆の中から消えるんだけどね。


「そうか残念だ。それで? 直ぐに旅立つのか?」

「いえ、身支度を整えてからですので、最低でも明日出発することになりますね」


俺はその後、残念がっているグレイアスと城門前で別れ、商店街へと足を進めた。


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