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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
土の精霊編
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第125話 魔道具屋店主の魔術

漸く魔道具を取り扱う店を探し当て、幾つかの魔道具を買取してもらおうと店主と交渉をしていた俺だったが、店主の提示した額に納得が行かずに喧嘩腰になっていたところへ髭面の男が現れた。


話の内容や店員の態度を見る限りでは、この髭面男が真の魔道具屋の店主らしい。

では、この男に殴られて気絶している、俺が店主だと思っていた男は一体誰なんだろうか・・・・・・。


「まったく、ちょっと小突いたぐらいで気絶すんじゃねえよ! おい、誰か水持って来い」

「はい」


別の若い店員が桶に水を入れて持ってくると男は其れを受け取り、倒れている男に浴びせかけた。


「ゲホッ! ゴホッ! い、いったい何が・・・・・・」

「目を覚ましたか? この魔道具を青銅貨7枚とはテメエの目は節穴か!?」

「い、いえ其れには訳が」

「くだらねえ仕事して言い訳か? 俺も随分と舐められた物だな」


と其処へ図ったかの如く、数人の衛士が飛び込んできた。


「此処に不審者がいると聞いてきたのだが?」 

「ん? 此処には俺と客人以外いねえが。 何かの間違いじゃねえか?」

「おお、ガンツァルト殿! 戻られていたのですか。 と、そんな事はどうでも良いですね。つい先ほど此処の坊主が飛び込んで来まして『急いで店まで来て欲しい』と切羽詰った口調で申していたので何事かと思い、こうして来てみたのですが・・・・・・」


衛士がそういうと地面に蹲っている、びしょ濡れの男が身体を震わせた。

水を掛けられた事による寒さのためか、目論見が失敗した所為かは定かではないが。


「どうやら何かの間違いだったようですね。 ガンツァルト殿が居られれば大抵の厄介事は回避できますからね」

「人を化け物みたいに言いやがって! こっちは忙しいんだ、ほら帰った帰った」

「分かりました。 たまには顔を見せにいらしてください。隊長達も寂しがっていましたよ」

「けっ、気持ち悪い事を言いやがって。 俺はもう退官したんだ。ほっといてくれ」


衛士はガンツァルトと呼んだ男の返答を予測していたかのように微笑を浮かべると、一緒に来ていた衛士に手で合図を出し、撤収していった。


「衛士隊のことも含めて、あとでゆっくりと話を聞かせてもらおうか! さてお客人、待たせてすまないな」

「いえ、それよりこの男は店主では無いんですか?」

「コイツが店主? コイツはただの留守番だよ。俺が帰ってくるまでは買い取りはするなと言っておいたのに! あの馬鹿は」

「それで本当の買取額は幾らなんです?」

「おっと、そうだったな。 すぐに終わらすから、そこ等辺で待っててくれ」


髭面の男はそう言うと、魔道具を一個一個手に取り何かを調べている。


(マスター、どうやら魔力を検知しているようですね)

(あの男も魔術師なのか? 全然そうは見えないが)

(いえ主様、この世界では魔術師でない者を探す方が難しいですよ。 それにこの世界では1人につき、1もしくは2属性が当たり前なので気をつけてくださいね)

(あの男は何の属性だと思う?)

(魔道具の魔力検知を出来る事から、おそらくは土属性だと思われます。 錬金の使い手と考えていいでしょう)

(『錬金』って錬金術の事か? 土の魔法でそんな事も出来るんだな。今度試しにやってみよう)


精霊とそんな事を話していると、如何やら魔道具の査定が終了したようだ。


「待たせてしまって済まなかったな。 しかしコイツはとんでもない魔力含有量だな、たまげたぜ」

「それで? 幾らになりますか?」

「大甘に見積もって金貨14枚と銀貨8枚といった所だが、うちの馬鹿が迷惑を掛けたみたいだし、金貨15枚で買い取ろう」


前の店員が言っていたのは青銅貨7枚で、本当の店主が言っているのは金貨15枚か。

青銅貨とか銀貨、金貨とかはどういう価値があるのか知らないけど、店主の態度を見る限りでは嘘は言ってないようだし、此れで良いかな。

もし此れが俺を騙そうとして口から出任せを言っているのなら、こんな目つきはしないだろうし・・・・・・。


「分かりました。 その金額でいいです」

「ようし商談成立だな。 ところで金貨だと使いづらいだろ? 金貨1枚を銀貨10枚に両替してやろうか?」

「あ、お願いします」

「ああ分かった」


そう言って店主から金色に輝く丸い硬貨を14枚と、銀色の8角形の硬貨を10枚の合計24枚のコインを手渡された。


「序と言っては難ですが、聞きたいことがあるんですが良いですか?」

「なんだい? 何でも聞いてくんな」

「査定の時に使っていた魔力の波長から言って、貴方は土系統の魔術だと思うのですが、先ほどの術のことを教えて貰えませんか?」


俺は精霊に教えてもらった土属性の魔力の事を『錬金』も含めて聞いてみる事にした。


「おお、良く分かったな。俺は一応、土の術士だぜ! 『錬金』の認定証は持っているか?」

「認定証ってなんですか?」

「持って無いなら悪いが、教えてやる事は出来ないな。 規律の一つでな、国に認められた者以外に許可なく他人に教える事は禁止されてるんだ、悪いな」

「それじゃあ、何処に行けば教えてもらえますか?」

「う~ん、今でもやっているか如何か分からねえが、まぁ聞いてみるか。 おい店番は任せたぞ!」


髭面の男は腕を組んで眉間に皺を寄せながら少し考えた後、俺を連れて衛士が戻って行った方向へと歩き出した。


そして男について歩いていくと、何故か城に辿りついた。


「ん? ガンツァルト殿ではありませんか」

「その堅っ苦しい呼び方は辞めてくんな! 俺は『ガンツ』で通ってるんだ」

「そうは申されましても・・・・・・・いや、分かりました。 ガンツ殿、今日はどのような御用でしょうか? 隊長達に御挨拶ですか?」


俺を連れてきた男が衛士に睨みつけると、顔を引きつらせながら応対してくる。


「いや、俺じゃねえんだ。 俺んとこの客が錬金を習いたいって言ってきてな、今でも講習しているかと思って聞きに来たんだよ」

「タイミングが良いですね。 錬金講習は明日から開催する予定で、本当は昨日の日没が応募締め切りだったんですが、ガンツァ・・・・・・いえガンツ殿のお知り合いでしたら、特別に、参加枠に入れておきますね」

「悪いな」

「其方の方が参加希望者ですか? 名前を聞いても宜しいでしょうか?」

「ミコトです」

「ミ・コ・トと。 はい受付しました、明日の朝にまた此処に来てください。 講習期間は最高10日で、参加費用は銀貨5枚になりますが構いませんか?」

「分かりました。 ガンツさんも有難うございました」

「良いって。 うちの若いモンのお詫びといっては失礼だが、気にしないでくれよ」


俺はガンツさんと一緒に戻ろうとしていたのだが、不意に衛士がガンツさんに話しかけて来た。


「それはそうとガンツ殿、土術士隊に戻られないのですか? 隊長も寂しがってますが」

「またその話か。 前にも言ったとおり、俺はもう引退したんだ。今はただの魔道具屋の店主さ」


そういうとガンツさんは寂しげな足取りで商店へと歩いていった。


「あれだけの他に類を見ない実力を兼ね備えているのに、魔道具屋の店主とは・・・・・・」

「あの~ガンツさんって術士だったんですか?」

「ん? まだ居たのか。 すまないが規則だから教えられないよ、悪いな」

「いえ、失礼します」


色々と納得がいかないが、まずは今日の宿を探すため城を離れることにした。



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