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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
氷の精霊編
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第118話 物知り爺さんを訪ねて

酒場の自称『お姉さん』のマスターからビクトルという名前の物知り爺さんが街から小高い丘一つ越えた先にあるウィレンドという大きな街に居ると言う情報を得た俺は翌日、ギルドでウィレンド方面に行く依頼は無いか聞いてみることにした。


「聞きたいことがあるんだけど良いかな」

「はい? どのような事でしょうか?」

「用事があってウィレンドって街に行こうと思ってるんだけど、その方面での依頼ってないかな?」

「確認してみますので暫くお待ち下さい」


そして待つこと数分後・・・・・・。


「お待たせいたしました。確認しましたところ、酒場の主人であるライトさんからウィレンドにある酒場まで酒の樽を届けて欲しいとの依頼がありました」

「酒場のライトさん? もしかして厳つい女性店主のことですか?」

「そうですが、あの方の前で『厳つい』なんて言っては駄目ですよ?」

「分かりました。それで? 酒場で樽を受け取ってウィレンドまで運べば良いんですね?」

「依頼内容はウィレンドまでの配達で報酬は銀板1枚です。 この依頼で宜しいでしょうか?」

「あ、お願いします」

「それでは依頼受諾の前金として銀貨1枚を頂きますが宜しいですか?」

「分かりました」


俺はそう言って財布代わりに使っている道具袋から銀貨1枚を取り出しながら気になることを聞いてみることにした。


「依頼を完遂した場合の報酬は何処で受け取れば良いんだ? この街に戻ってこないといけないのか?」

「この受諾書をウィレンドの街にあるギルドに提出してください。 街に入って直ぐの建物ですのでわかり易いと思いますよ」


手渡された受諾書には『シャノルクギルド』という判子が押されている。

その判子の横には他に2箇所の判子を押せるスペースが空けられていた。


「それではウィレンドまでの道程は遠いですが、お気をつけて行って来て下さい」


ギルドでの手続きを終了させ、配達する樽を受け取るべく酒場へと足を運んだ。


「すいませ~ん。 ギルドで配達の依頼を受けたんですが」

「ああ待ってたよ。 ああアンタが受けてくれたのかい! それじゃあコレを頼むよ」


そう言って手渡された物は両手で抱えられるほどの樽だった。


「あ、そうそう依頼書の受諾書を出してくれないか?」


俺は如何するのかと思いながらギルドで受け取った受諾書をライトさんに手渡すと。


「街から街に配達される品物にはギルドの判子と依頼者のサインが必要になるのさ。 っと此れで良い」


返された受諾書をみるとギルドの判子の下にライトさんの名前が荒っぽい字で書き殴られていた。


「昨日の話じゃウィレンドの場所を知らないだろ? 街の裏門から出て小高い丘の街道沿いに歩けば2、3日ほどで辿りつくと思うよ。 命を落としたくなければ、くれぐれも道を外れないようにね」

「分かりました」


樽を受け取った俺はそのまま街の裏門から外に出て、ライトさんに言われたとおり街道を歩いてウィレンドの街を目指す事にした。


街から離れ、山の中腹まで来たところで樽を亜空間倉庫に収納するべく、人目のつかないところに移動するために街道を離れたのだが此処で思いも寄らなかった出来事に遭遇した。

魔物に襲われたのか盗賊にやられたのか、赤い染みが付着してボロボロの衣服を身に纏った一部が白骨化してしまっている遺体が雪原に横たわっていた。


俺は遺体にそっと手を合わせ、その場を後にした。

その後大きな混乱も無く、2日後にはウィレンドの街に到着できた。

俺の身体能力を使えば半日も掛からずに到着する事が出来たのだが、依頼受諾書にはギルドの判子とともに日付と思われる数字が書かれているため、言い訳できる範囲の日数で辿りつかなければならなかった。

シャノルクの街を出た時と同じ様に人目につかない森の中に移動すると配達する樽を取り出し、肩に抱えて街の門を潜りぬけると整然された街並みが広がる空間があった。


ウィレンドの街に一歩足を踏み入れて最初に思ったことといえば『広い』という事だった。

何時までも呆けては居られずに荷物の受け渡しをするべく、酒場を探す事にする。

そして広い街中を歩くこと数分後、木で作られた看板にジョッキのような絵が描かれている酒場と思われし場所にたどり着くことが出来た。

まだ真昼間だからか酒場の中にはカウンター内で準備をしている巨漢の男しか見当たらなかった。


「ん? 客か? すまないが酒場は夕方からなんだ。出直してくれないか?」

「いえ客じゃないんです。 シャノルクの酒場から依頼された樽を配達してきたのですが」

「おっ? そうか、すまねえな」


俺はカウンターにライトさんから手渡された樽と依頼受諾書を酒場のカウンターに載せた。


「これが依頼された物とギルド発行の受諾書です。 ご確認をお願いします」

「え~と、確かにライト姉ちゃんの字だな。 ご苦労だったな」


そう言って巨漢の男は受諾書に押されているギルドの判子の横へ受け取りのサインをして手渡してきた。


「で、次はギルドか」

(マスター、ビクトルという方の情報を聞かなくても良いのですか?)

(そうだったな、序だから聞いてみる事にするか)


俺は目の前で怪訝そうな顔をしている男にビクトル爺さんのことを聞いてみる事にした。


「すいません。 一つ聞きたいことがあるのですが」

「なんだ? 店の準備があるからな、短時間なら構わないぞ」

「この街にビクトル爺さんという物知りな方が居るとライトさんから聞いたんですが、何処に住んでいるのか知りませんか?」

「ああビクトル爺さんか、そういえば最近見てねえな。 家は酒場の裏手にある建物なんだが最近帰ってきたって噂は聞いてないぜ? 帰ってきたなら真っ先に俺のところに飲みに来るはずだからな」

「そうなんですか、分かりました。 ありがとうございます」

「いやいや、其れぐらいならお安い御用だ」


俺ははやる気持ちを押さえてギルドで依頼完遂の手続きをすることにした。


(ギルドの受付の女性は街に入って直ぐだからと言ってたけど・・・・・・確かにわかり易いな)


ギルドの建物を探すために再度街の門へと戻ると壁一面に『ギルド本部』と書かれた建物が目に入った。

『幾らなんでも此れは目立ちすぎでは?』と思いながらもギルドの扉を開けて中に入ると、少なくてもシャノルクのギルドの倍はあると思われる広さに大勢の冒険者たちが所狭しと犇めき合っていた。

更に建物の2階へと続く階段には重厚な鎧を身に纏った女性が周囲に目を光らせながら、立ちはだかっていた。


色々と気になる点はあるもののギルドの受付に行く事にした。


「いらっしゃいませ。 本日はどのような御用件でしょうか?」

「シャノルクからの配達依頼を完了したので手続きをお願いしたいんですが」

「分かりました。 それでは身分証明証と依頼受諾書の提示をお願いします」


そう言われ道具袋内に入れてある証明証とさっきの酒場でサインしてもらった受諾書を窓口へと提出した


「はい確認いたしました。 それでは報酬の銀板1枚です」


受付から差し出された銀板1枚をさっと道具袋の中に仕舞い込むと、酒場で教えてもらったビクトル爺さんの家へ行く事にした。



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