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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
氷の精霊編
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第116話 冒険者だけでなく商人も

毎度の事ながら、サブタイトルにも悩まされます・・・・・・・・・。

森の中でグレイウルフの討伐を終えた俺は亜空間内で魔物を捌いていた。

まずは討伐した証明となる角を全て切り取り道具袋の中へと収納する。


(全部で8本か。 単純に考えれば、此れだけで銀板8枚の報酬ということになるな)


次いで何時買った物かはよく憶えていないが、倉庫内に置かれていた小型のナイフで器用に魔物の毛皮を剥いでいった。


(それにしても『グレイウルフの毛皮の採取』って依頼だけど、討伐しないと手に入らないよなぁ~採取依頼と討伐依頼に区別する必要があるのかな?)


ホロビットの時のような毛皮目的の採取ではなかったので所々に赤い染みがあるグレイウルフの毛皮を採取し終えたが慣れない仕事で時間が掛かってしまい、気がつくと空は夕暮れになっていた。


(もうこんな時間か、急いで街に帰るとするか)


森を出て街のある方向へと歩いていったが、雪山の天候は変わり易いとはよく言ったもので気がつけば、辺りは真っ暗な上に猛吹雪に見舞われていた。


「まいったな。 これじゃあ前回と同じじゃないか」

デジャヴを感じるほどに前回のホロビット討伐時と同じ環境に溜息を洩らしつつ、亜空間内へと避難した。

空間内に保存してある残り僅かの果物と毛皮と角を取り終えたグレイウルフの肉を火魔法で丸焼きにして腹に入れつつ、精霊と会話して朝を待つことにした。


薬となる『バクストの実』も幾つか置いてあったが、前に齧った時にあまりにも不味かったため流石に食べる気にはならなかった。

(朝には天候が回復してくれよ・・・・・・もう食料は残ってないんだからな)

(お言葉ですがマスターは不死の存在です。 餓死するなんて事はありませんよ?)

(それは分かっているんだが、人間の最大欲求の一つでもある食欲は中々止める事ができなくてな。 万が一にも『腹が減って力が出ない』ってなったら危ないだろ?)


何処かのアニメのフレーズじゃないが。


(マスターの場合、そのような事は絶対にありえないと思いますが。 それに致命傷を負っても瞬間的に回復しますし、体力も人間とは違い無尽蔵なのですから)

(そう言うと、まるで俺が人外みたいじゃないか)

(忘れているかもしれませんが主様は神様なのですよ? 人間とは其れこそ天と地ほどの差があります)


こうしてルゥを始めとする精霊たちと会話をしながら朝を迎える事となった。

『朝には晴れて欲しい』という願いが神(俺か?)に通じたのか、この世界で初めて見る太陽が一部厚い雲に遮られながら頭上に輝いていた。

俺は果物を入れてあった袋にグレイウルフから採取した毛皮と討伐証明である角と序にバクストの実も10個ほど入れて街へと戻った。


傍から見れば大きなズタ袋を担いだ不審な男に見られるだろう。

日本であれば、良い意味でサンタクロース、悪い意味なら堂々とした泥棒的なものかな?

街の門を潜る時にも、何時もの兵士が苦笑しながら挨拶してきたが何だったんだろう。

街の住民からの奇異の目に晒されながらギルドに足を踏み入れた。


「あら? ミコトさん、その格好はなんですか?」

「何って依頼書にあった物を採取してきたんだよ。 事前に袋を用意しといて良かったよ」

「しかし、その格好だと盗賊シーフと間違われても文句は言えませんよ?」


丁度掲示板に新規依頼書を貼っている職員と会話していると、なにやら武装しているガルフォードがギルドへと入ってきた。


「失礼する! 街の住民から不審者がギルドに入って行ったとの報告があったのだが」


ガルフォードは俺の姿を見るなり目を大きく見開いて、次の瞬間には大きな笑い声を上げていた。


「ガァーハッハッハッハ!! 街の者が言う“不審者”というのはお前の事だったのか。 道理で門兵が止めなかったわけだ」


ガルフォードは盛大な笑い声を上げながらギルドの外へと出て行った。


「だから言ったじゃありませんか『盗賊と間違われても仕方がない』って・・・・・・」

「身に沁みて理解したよ。次からは注意する」


そして一息入れたあとギルドの窓口に採取してきた物を並べた。


「えっと、討伐依頼にあったグレイウルフの証明になる角が8本と取れたてで新鮮(?)なグレイウルフの毛皮が8枚に序に採取してきたバクストの実が10個だ。 検品を頼む」

「たった2日で此れだけの物を揃えられるなんて。 直ぐに検品しますので暫くお待ち下さい」


ギルドの受付は手の空いている他の職員に声を掛け、数人がかりで採取してきた物の検品を行なっていた。

そして隅で備え付けの暖かいお茶を飲みながら待つこと十数分後。


「お待たせいたしました。 検品が終了いたしましたので窓口までお越し願えますか?」

「分かった。 今行く」


俺は手に持っていた湯呑を『使用済み』と書かれている篭の中にいれて窓口へと向かって歩いていった。


「それでは結果をお知らせします。 グレイウルフの討伐完遂によりミコトさんはCランクに昇格しました。 此方が報酬の銀板8枚です。

そしてグレイウルフの毛皮の採取ですが、若干の汚れが目立つため全部で銀板3枚と銀貨4枚という結果になりました。 バクストの実は全部で、銅板4枚で引き取らせていただきますが宜しいですか?」


俺は声に出さずに頷く事で肯定の意思を受付に伝えた。


「ありがとうございます。 それでは合計して銀板11枚と銀貨4枚と銅板4枚です、お納め下さい」

財布代わりとなる道具袋に報酬を無造作に放り込みながら気になっていた事を聞いてみることにした。


「なぁ、一つ聞きたい事があるんだけど」

「何でしょうか?」

「依頼書にあった『グレイウルフの毛皮採取』のことなんだけど、毛皮なんて討伐しないと手に入らないだろ? 討伐依頼と区別する必要があるのか?」

「依頼を受けに来るのは皆が皆、ミコトさん達のような冒険者の方々ではありません。 中には交易を生業なりわいとしている商人の方もいらっしゃいます。 彼等は別の街や村で依頼された品々を事前に安く仕入れておき、報酬と仕入れ金を見比べ利益があれば売却してお金を稼ぐという方法をとっています」

「なるほど」

「此処とは違い、暖かい地域では毛皮なんてあまり高い値段ではありませんから」


確かにな、暖かい地域で毛皮を身に着けるなんて貴族や金持ちくらいしか思い浮かばないよな。

聞きたい事を聞くと俺は窓口を離れ、本来の目的であった精霊の情報を収集するべく冒険者の集まる酒場に行こうとしていたところギルドの出入り口近くで声を掛けられた。


「其処に居るお前! 黒髪のお前だよ、コッチを向きやがれ」


声のしたほうに顔を向けると胡散臭そうな大男が斧を背中に担いで話しかけていた。


「さっきのこと見てたぜ! それなりに腕っぷしが強いみたいだな、俺と組まねえか?」

「俺1人で充分だ。 悪いな」


俺は軽く後ろ手で手を振りながらギルドの扉に手を掛けたのだが、大男に強引に振り向かされた。


「テメエ! Aランクの俺の誘いを断るっていうのか!?」

「アンタが例えSランクだろうが俺には関係ない。 俺は1人で充分なんだ」


そう応えた瞬間、後方にある出入り口の扉が開いたかと思うと一瞬顔を覗かせた、ギルドの職員と同じ制服を着た女性が踵をかえして走り去っていった。

願わくば守護隊の元へ行って兵士を連れてきてくれると有難いのだが。


「なんだと? この野郎! 舐めやがって」


大男はそんな事など露ほども気づかずに背中に背負っている斧の柄の部分を握り締めながら脅すように話しかけて来た。


「此れが最後の通告だ! 俺と組むか? それとも此処で死ぬかだ」

「ふぅ、何度も言わせるな。 俺は・1人・で・充分だ。物覚えの悪い奴だな」

「もう許さん! この俺様の誘いを無碍にした事を後悔するがいい!!」


大男はギルドの建物の中であるにもかかわらず背負っていた斧を俺に向かって振り下ろしてきた。



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