第11話 驚異的な魔物の身体
お待たせしました。
四苦八苦しながらも、なんとか更新する事が出来ました・・・。
町の裏門から山へ出発して十数分後、周囲を注意しながら山道を進んでいた。
しかし、山の斜面を見れば見るほど樹木は一本たりとも見当たらず、あるのは岩石のみだった。
ギルドでの情報の通り、山の斜面を手で触れてみるが乾燥した砂のように触った先から崩れていった。
「これはまた・・・、ロープがあっても登れないんじゃないか?」
俺以外の冒険者なら足場を掘って登るか、頂上からロープを垂らして降りるかしないと駄目だな。
そう考えながら歩く事さらに十数分・・・頭上に洞窟らしきものが目に入った。
「この辺りだけ凄惨な風景だな。」
山道から洞窟の入口までは何本ものロープが垂れ下がり地面には折れた剣や槍が突き刺さっていた。
「どうやらこの洞窟で間違いないようだな。」
俺は周辺に人の気配がない事を確認すると、その場でジャンプして洞窟へと一瞬で飛び上がった。
洞窟は滑り台のような形状で奥に続いており、入口から約10mほど歩いたところで行き止まりになっていた。
予想では洞窟内は暗闇だと思っていたが、運が良かったのか日の光が真っ直ぐに中へと入っていたおかげで、道具に頼らなくても目だけで洞窟内を見回す事が出来た。
其処には情報にあったとおり魔物の卵と思われる白い物体が数十個存在しており一部は既に羽化している様だった。さらに卵の周りには此処で力尽きた冒険者の亡骸だろうか一部が白骨化しており、腹部には齧られたような痕が見受けられる。
「この洞窟の主は今のところ留守のようだな。羽化した子供のために餌でも取りに行ったか?」
何の抵抗もできない者を殺すのは忍びないが、これも依頼のうちだ許せ!
俺は腰に装着している剣を引き抜き、片っ端から卵を叩き割り、まだ羽化したてで目も開いていない幼獣を皆殺しにした。
殲滅したあと、志半ばで散っていった冒険者の亡骸に手を合わせ、討伐対象のロックレイルを待ち構えるために洞窟の入口へと向かった。
暫く待っていると、遠くの山肌で図鑑に載っていた絵と同じ姿をした魔物が口に鹿のような獲物を咥えて此方へと走ってくる姿を目撃した。
迎え撃とうかとも考えたが、入口では地形的にも不利だし、万が一に逃げられる可能性もある。
俺は咄嗟に持っている剣で洞窟の壁を掘り横道を作った後、息を潜めて魔物が戻って来るのを待った。
数分後、戻ってきた魔物は形は絵の通りだが体格は3m近くもあった。
魔物は一瞬俺の隠れている場所に目を遣ったが首を傾げた後、洞窟の奥へと進んでいった。
完全に奥へと姿を消した事を確認し剣を抜いて臨戦態勢を整えた時。我が子を殺された怒りか悲哀の声か分からない絶叫が洞窟内に鳴り響いた。
暫く待ち、声が鳴り止むと同時にドスドスという音とともに魔物が突進してきた。
洞窟の入口に俺の姿を確認すると、口を開けて襲い掛かってきた。
俺は魔物の反応にカウンターで剣を突き出すが、まるで石に打ち付けたかのように1mmたりとも魔物の肌には食い込みはしなかった。
「何だコイツの身体は!?剣が通らない!!」
このまま剣を突き出していては折れてしまうと判断した俺は剣の角度を緩めて後方に切り払った。
魔物は外へ逃げるかと予想したが、卵を叩き割ったのが俺だと確信したかのように体の向きをかえて再び俺の方へと襲い掛かってきた。
「身体の表面が石のように硬いとしても此処なら!!」
そう思った俺は出目金のように外側に迫り出している目玉に剣を突き立てようとするが、体表面と同じく剣は刺さることなく跳ね返り、無防備だった俺は洞窟の壁へと吹き飛ばされた。
「グハッ!!まさか、目玉ですら攻撃が通らないとは!?」
吹き飛ばされたて壁にめり込んだ瞬間、数本の肋骨が砕けたような感触があったが数秒後には、いつものように跡形も無いほど完璧に治癒した。
「この能力がなければ死んでいたのは俺だったな。」
魔物はまるで我が子の仇を討ち取ったかのように俺のほうへと顔を向けたが、苦も無く余裕の表情で立っている俺を見て顔を強張らせた。
もしも魔物が人の言葉を話せるとしたら、きっとこう言うだろう。
「あれだけの衝撃を受けて何故立っていられる!?」と・・・。
「それにしても、何処がコイツの弱点なんだ?」
身体の表面は最初の攻撃で通らなかった事は実証済み、かといって柔らかいと思った目玉も剣を弾かれた。あと狙っていない場所といえば・・・!! 試してみるか。
魔物は少しの間、呆けていたものの一気に勝負をつけようと思ったのか鰐のような巨大な口を開きブレスを吐こうとしていた。喉奥には火の塊のような物が渦巻いていた。
「これはチャンスだ。少々の火傷は負うかも知れんが、試してみる価値はある。」
剣を構えた俺は一瞬で魔物との距離を縮め、魔物の喉奥へと剣を突き刺した。
ブレスの影響で火傷を負ったが、剣はそのまま魔物の頭を串刺しにしたところで根元から砕け散った。
魔物は断末魔を上げながら倒れて行き、地面に突っ伏して動かなくなった。
「ようやく死んだか、俺は怪我を負う心配はないがコイツの相手は二度と御免だ。」
火のブレスで負った火傷は瞬く間に痕を残さずに治癒していた。
「さすがに剣は耐え切れなかったか・・・。まぁ後は証明部位を取る事だけだから構わないか。」
図鑑にあった虹色の爪は右前足の先にあったため、取り外そうと頑張ってみるが一向に外れなかった。
剣で斬ろうかとも考えたが既に粉々に粉砕しており役には立たなかった。
「何か武器は無いのか? ん!?あれは・・・」
洞窟から山道に目を向けると冒険者の墓標とも言える剣や槍が地面に突き刺さっていた。
「それなら、コイツを背負って飛び降りるか!」
俺は魔物を背中に背負うと地面目掛けて飛び降りた。
地面に10cmほど足が、めり込みはしたが怪我も無く着地できた。
「さて、冒険者には悪いが使わせてもらうぞ!」
俺は居もしない冒険者に頭を下げ、武器を使って爪を剥がそうと頑張ってみるが剣を使っても槍を使っても斧を使っても剥がす事は出来なかった。