第10話 初めてのA級依頼
今のところは目的も無く依頼をこなしていく話なので面白くないと思いますが、この物語は途中の20話くらいから方針を変えていこうと思いますので気長にお付き合いしてください。
朝、セリアの動向をローラに聞いて安心した俺は気を取り直して依頼を探す事にした。
採取依頼はランク的に経験値にならないと判断した俺は、上位ランクである討伐や護衛依頼を徹底して受ける事にした。
「これは、またディル村近くの魔物のB級討伐依頼か。お?こっちもディル村近くの森での討伐だな」
今、目の前にあるのは2枚のB級討伐依頼でどちらにしようか迷っていた。
俺の性格は幼少の頃より優柔不断で今現在に至っても治ってはいない。
欲しいものが複数あった場合、金がある限り買えるだけ買っていた。
少し話は逸れたが、この討伐依頼も同様でどちらもディル村の近くと言う事で2枚の依頼書を持ってギルドの窓口へ行くと・・・?
「ミコトさん、申し訳ありませんが依頼は一度に一つしか受ける事が出来ません。」
どうやら片方一枚しか受けられないようだ。理由を聞いてみたところ
「一度に何枚もの依頼を受けられると複数人いる冒険者に仕事が回りませんし、依頼を失敗する確率が増大するため、国の一大事や魔物の大量発生などの余程の理由が無い限りは複数受諾はできません。」
仕方なく掲示板に依頼書を戻し、再び悩んでいると新しく一枚の依頼書が職員の手によって掲示板に貼られた。
逸早く掲示板に目が行った俺は新規の依頼を手に取ると内容を読んでみた。
A級討伐依頼:マルベリア城後方に聳える山脈の洞窟に潜む魔物、ロックレイルの討伐。
報酬は銀貨40枚、期間は7日間。追伸、洞窟内に魔物の卵があった場合は残らず殲滅すること。
この依頼ならA級だからランクアップの経験値に最適だし、報酬も魅力的だった。
早速、他の冒険者に先を越される前に依頼書を窓口に持っていった。
「あ、ミコトさん。決まりましたか?」
「貼られた直後の依頼で悪いが此れを受ける事にした。」
俺が依頼書をローラに手渡すと心なしか笑みがこぼれていた。
「ミコトさん、この依頼を受けてくださるんですね!ありがとうございます。」
「どういうことだ?この依頼は最新のものではないのか?」
「はい、この討伐依頼は元はB級討伐依頼だったのですが、山の斜面にあるといわれる洞窟の危険性から何人もの冒険者が失敗し続けているため報酬がその度に上乗せされ、遂には先程冒険者が討伐に失敗して大怪我を負ったとの報告を受けた事により、B級からA級へとランクアップした矢先でした。」
「そんなに危険な場所なのか?」
「ギルドの探索要員の話によりますと、切り立った崖の中腹に存在している洞窟に通じる足場などはなく、辿りつくには登山道から山の斜面を登るか山の頂上から紐で降りるかしかないそうです。」
なるほど・・・しかし、そんな場所の情報をどうやって知ったんだ?ローラに聞こうとしたが・・・
「町の外壁にある物見塔から特殊な望遠筒でギルド職員が周囲を確認したところ、魔物が洞窟内になにやら白くて丸いもの運び込んでいるのを発見したとの報告が今朝、齎されました。」
その白くて丸いものを魔物の卵かもしれないと推測したわけか。
「さらに大怪我をした冒険者に話を聞いたところ、山の斜面はとても脆く重装備ではとても登ることは出来ないという事です。さらに木などは生えていないため、魔物の襲撃には注意してください。」
では、物陰に隠れながら近づくという行為が取れないわけだな。
「分かった。この依頼、俺が受けよう。」
「ありがとうございます。今回の依頼は特別にギルドからロープを譲渡いたします、山に置いてきたとしても構わないので頑張ってください。」
ローラに手を振って答えた後、以前のように魔物辞典で確かめる事にした。
山の斜面に位置する歩いては入れない洞窟に生息する魔物で卵らしき物体が見受けられたことから鳥類の図鑑を調べていたのだが、どこにも載ってはいなかった。
「おかしいな、鳥類じゃないのか?」
延々30分ほど図鑑を読んで4冊目に差し掛かった時、ようやくロックレイルが見つかった。
図鑑を見た感じでは容姿は緑色の蜥蜴のような魔物で討伐証明部位は足の先に一本だけ存在する虹色の爪。注意事項として口から吐き出す火のブレスに要注意との事だった。
「そうか、蜥蜴も爬虫類だから卵だったな。」
辞典を見終えた俺は一旦宿屋へと戻り、客室においてある鎧と細剣を装備した。
未だに大剣の活躍はないが、足場の脆さなどの事情から持っていくのは危険と判断した。
それにロープを使わずにジャンプして洞窟に行くつもりだから、少しでも身を軽くしないとな。
ローラの情報により多少危険性は増すが、俺が例の裏通りで盗賊の頭を倒した場所から真っ直ぐ進んだところにある町の裏門を通るのが近道だ、と言われた俺は何時かの道順を思い出しながら盗賊の襲撃に注意しながら歩いていくが、俺の姿を見た途端に屯していたガラの悪い男達は一目散に悲鳴を上げながら逃げていった。
路地裏から姿を見せずに声だけが聞こえて来たため、耳を澄ますと・・・。
「頭をのした男だ。」
「殺るか?」
「やめとけって!頭の状態を見ただろ!?殺されるぞ」
「頭が何かを言った瞬間に性格が変わったかのように頭を叩きのめしていたしな。」
「奴には絶対に手出ししないように皆に伝えろ!場合によっては皆殺しにされるかも知れん・・・。」
俺はどんな怪物だよ。それにしても、あのときに何があったというんだ?
そうこう考えているうちに裏門へと辿りついた俺は、気をいっそう引き締めて山へと入っていった。
前書きで書いた詳細については活動報告にて説明するつもりです