第101話 不可解なアルフェクダの結界
未だスランプを脱する事ができず・・・。
今の亜人の集落の話を何話作るかにも迷っています。
あんまり長くしても読みにくいし短すぎるのも如何かと思うしで・・・板ばさみの様な状況ですね。
集落での1日目が終了して外に出た時、昨日キイラさんから言われた事を思い出した。
『この集落では人間の町で売る御守りで収入を得ています』
『では俺も其れを手伝えば良いのですね?』
『いえ、ミコトさんには最初の数週間は何もせずに集落を歩くだけにしてください。 基本、我々亜人は人間と友好関係にありますが、ごく一部の亜人は人間を毛嫌いしています。 そういう者に下手に近寄っては自分が怪我をしますよ?』
『分かりました』
キイラさんの言葉の通り、人懐っこく近寄ってくるのは物心ついていない子供の亜人のみで大人は歩いている俺を横目でちらちらと見ているだけで声すらも掛けてくることはなかった。
そんな目も気にせずに周りを見回してみると常に何処からともなく視線を感じていた。
視線は色々な場所から歩くたびに感じていたので特に気にしてはいなかったのだが・・・・。
(マスター、50mほど後方から此方をつけてくる存在があります)
(この集落では、みんなそうだろ?)
(いえ、如何やら昨日から感じていた視線と全く同じで気配も同様のようです)
(俺に何か用でもあるのかな? キイラさんは『歩くだけにしておけ』と言っていたけど声をかけてみようか)
俺が不意に振り向くと俺の後をついてきていた謎の人物は咄嗟に木の陰に隠れたのだが、はっきりと白い翼が見えていた。
(この場合は“頭隠して尻隠さず”と言うより“頭隠して羽隠さず”かな?)
俺はそっと忍び足で近づくと隠れている人に声を掛けてみることにした。
「失礼だけど、俺に何か用でもあるのかな?」
「ひゃ!?」
此方の様子を伺っていたのは背中に白い羽を持つ天使のような女性だった。
「えっと・・・・君は?」
「私はユリメスと言います。よろしくお願いします」
「あ、ああ、よろしく。 で?何か俺に用があったのかな?」
「あの・・・私を覚えていませんか?」
暫く考えてみたところ、見知らぬ女性の筈なのに何処かで逢ったような気がしてならなかった。
ちょうど其処へ起きてきたキイラさんが家の中から出てきた。
「おや?ミコトさん? 元気ですね、朝からナンパですか?」
「ち、違いますよ! 俺に用があるようなので声をかけただけです」
「冗談です。 おや?貴女はユリメスですね、こんなところで如何しましたか?」
「あ、キイラさん。 命を助けてくれたミコトさんにお礼をと思いまして」
「命を助けた?」
目の前の女性から命を助けられたと聞いても何のことかサッパリ分からなかった。
「憶えていませんか? 森の中で山賊に襲われて翼を損傷し、飛べなくなっていたところをミコトさんの魔法で助けてもらった・・・」
其処まで言われて漸く思い出す事が出来た。
ザンカールの街から暫く歩いて飛び立とうとしていた時に悲鳴が聞えてきて・・・。
「ああ、あの時の襲われていたのが君か」
「やっと思い出してもらえましたか。 あの時はありがとうございました!」
「ちょっと良いかな? 話が見えないんだけど」
途中から参加したキイラさんだけが何の事なのか分からずに首を傾げていた。
「あれ?キイラさんに報告しませんでしたっけ? 薬草を取りにザンカールの街の傍にある森に入ったのですが、運悪く悪い人達に見つかってしまって翼に怪我を負って飛べなくなってしまったんです」
俺はユリメスと名乗る女性から話を聞きながらあの時のことを思い出していたが、対照的にキイラは顔が気難しそうな表情へと変化していった。
「それで『もう駄目だ』と思ったときにミコトさんが颯爽と現れて悪い人間達を打ちのめした後、回復魔法で傷を治療してくれたんです」
「そうだったのか。 で、何故その事を黙っていたんだ?」
キイラは腕組をしながら黙って聞いていたが、睨みつけるような表情で女性を見つめていた。
「えっと・・・・・・集落に帰って来たのが夜だったので『報告は明日で良いか』と思っていたら、そのまま忘れていまして、昨日ミコトさんを見て思い出しちゃって。 すいませんでした!」
女性は羽翼族のリーダーであるキイラに必死に弁解するも時既に遅く、キイラに襟を捕まえられながら何処かへと飛んでいってしまった。
「キイラさ~~~ん、許してくださ~~~~~い」
その後、ユリメスを見た者はいない・・・・
という訳ではなく、長老にコッテリと絞られているユリメスの姿が見受けられていたという。
「さて此れから如何しようかな」
そう思いながら集落の中を何気無しに歩いていると不意にミラから念話が届いた。
(主様、残してきた精霊達からアルフェクダの情報が届いていますが・・・。)
(フレイとシルフから? 分かった。話してくれ)
(はい。 今変わります)
暫く待っているとミラとは違う落ち着いた声が聞えてきた。
(主様、お忙しいところ申し訳ありません)
(いや構わないさ、如何したんだ?)
(主様を召喚したアルフェクダの状況です。 まずはメルディン姫のことなんですが、主様に何の罪もない魔族の討伐を依頼した事を後悔して嘆いているようでした。 とりかえしのつかないことをしてしまったと)
(まぁそうだろうな。 亜人達のことを誤解している国だもんな)
(その事を国王に進言して亜人達との戦争を止めさせようとしたみたいなのですが、国家反逆罪として塔に幽閉されてしまいました)
(幽閉って、仮にも一国の皇女だろ? 国王は亜人達をどう思っているんだ?)
(其れなんですが、国王は亜人の事を悪とは思っていないようなのですが、人間以外の種族は大陸には必要ないとして滅ぼす気のようです)
(なんてことを・・・)
(しかし結界がある限り近づく事さえ出来ないため、地団駄を踏んでいるようですが。)
(なら一先ず安心か。すまないが、また何か変化があったら教えてくれ)
(其れなのですが、何故か城内に私達精霊が入れない場所があるようなのです)
(なんだろう? 何かの結界でもあるのかな)
(分かりません。 何分初めての経験でしたので)
(無理はしないで危険だと思ったら入らないで良いから。 気をつけて情報収集にあたってくれ)
(分かりました。それでは・・・)
(主様、大変な事になっているようですが如何なさいますか?)
(一応此処には何人をも寄せ付けない結界があるんだから、大丈夫だとは思うんだけど)
(そうですね)
色々と気になることはあったが、今は亜人達と仲良くなって水の精霊に逢う事を第一に考える事にした。