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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
水の精霊編
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第99話 光の精霊、仮の実体化

書きたい事を全て書いたところ、いつもよりも長くなってしまいました・・・

妖精族の長老に手を引かれ1時間ほど歩いたところでドームのような丸い建物に辿り着く事が出来た。


「此方の建物が我々、長老が集まって会議を執り行う会議場です」


長老の丁寧な物言いを聞きながら建物内に足を踏み入れ、暫く歩くと異様に広い空間に到着した。

其処には巨大な円卓を半分に切ったような形状のテーブルに大小あわせて4個の椅子設けられていた。

4個の椅子のうち2個には既に亜人の姿が見受けられた。

2個の椅子には其々、蝙蝠の黒い羽根を持つ初老の男性と何の種族かは分からないがフードで顔を隠した者が座っていた。


「おお妖精の、如何したんじゃ? 定例会議は明日だった筈じゃが? それに横に居る人間は?」


先の2人のうち、ザンカールの街で見かけたような背中に黒い羽根を持つ初老の亜人が話しかけて来た。


「確かに定例会議は明日じゃが、急ぎ最長老を呼んではくれないか? 緊急事態が起きたのじゃ!」

「それは隣に居る人間が関係している事かのう?」

「その通りじゃ! なるべく早く最長老を此処へ」


その後、2時間が経過して3人の竜型亜人が姿を現した。


「おおっ最長老様、お待ちしておりました。 臨時召集であった事、お詫びいたします」


その内の2人は一際貫禄のある、もう1人に深く頭を下げ、出入り口付近に剣を手に持って警備についた。


最長老と呼ばれている割には、それほど歳を取っていないのが気になったが・・・。

妖精族の長老も俺の正体は皆が揃ってから話すと言ったもんだから、全員が集合するまでの間、裁判所で判決を待っている被告人のような針のムシロ状態となっていた。


「どうやら最長老もいらっしゃった事だし・・・では此れより緊急議会を開始するものとする!」


竜型亜人を除く3人の長老達は一糸乱れずに立ち上がると一斉に最長老に頭を下げ、元通りに着席した。


「さて妖精族の長老よ、我等を緊急招集した理由と隣に居る人間のことを聞かせてもらおう」


まず一番先に口にしたのは蝙蝠のような黒き羽を持つ長老だった。


「驚かずに落ち着いて聞いて欲しい。 此方に居られるこの御方は光の精霊様に導かれし神で在らせられる」


妖精の長老の“神”という発言で一瞬静かになったが、直ぐに罵声のようなものが浴びせかけられた。


「『神』とは恐れ多いにも程がある! 衛兵、この人間を捕らえろ!」


長老の命を受け、議場の出入り口付近で警備していた、最長老とともに入室した竜型亜人が俺の方へと剣に手を添えて近寄ってくる。

そして俺に手を伸ばそうとした次の瞬間、此方を終始見ていた最長老が声を発した。


「皆のもの静まれーーー!」


最長老が騒ぎ捲くっている、ほかの長老や警備を担当している竜型亜人達を手で制し、長老以外の者に退出を促した。


「お言葉ですが最長老様、怪しげな者を残して我々が退出するわけには・・・」


最長老は竜型亜人の言葉に目を細めると声を大にして言い放った。


「それは我が弱いと言いたいのか?」

「いえ、とんでもありません。 では失礼致します」


衛兵の竜型亜人は一礼をすると議場を後にした。

 

「妖精族の長老よ、そなた如何してこの人間が神であると思った?」

「畏れながら申し上げます。此方の神様・・・名前をミコト様と申されますが、本来人間には備われない魔力という力、更には人間であるにも拘らず結界を越えて此処にいるという事実であります」


罵声を浴びせていた長老は『結界』のことには気づかなかったようで、驚愕の表情を見せていた。


「皆も知っての通り普通の人間では結界を潜り抜ける事はおろか、近づく事さえできません。 その身が人間ではなく、邪悪な存在ならば結界に手が触れた瞬間に塵も残らずに消滅するでしょう」


他の長老や警備の亜人達は「人間でも邪悪なる者でもない?」と口々に呟いている。


「・・・続けろ」

「はい。皆様知っての通り、結界を通り抜けるには我々のような、精霊の加護を受けし存在でないと不可能です。 それなのに何故ミコト様が結界を越えてこの地に居られるのか考えてみてください」


妖精族の長老が此れだけの事を言っても「でも」や「だが」「しかし」「たかが人間が」といった声が長老や亜人達の口から発せられていた。


(主様、これでは中々話が纏まりませんね)

(ミラか・・・何か決め手となる言葉が欲しい所なんだがなぁ。 何か良い手はないか?)

(ありますよ?)

(そうだよなぁ・・・ってあるのか!?)

(はい。 ただ主様に少々負担が掛かりますが、宜しいでしょうか?)

(ああ構わない。 それで混乱が収まるなら、お安い御用だ)

(分かりました。 それでは少し魔力をいただきますね)


ミラから『魔力を頂く』という言葉が発せられた途端、エルフの集落で魔吸石を握った時に感じられた『魔力を吸われる』という感覚の強力版が襲い掛かった。

そして膨大な魔力の流れは未だに言い争いを続ける長老達にも感じられた。


「!! なんだ!?この魔力は?」

「このような強大な魔力、誰から発せられた物だ!?」


先程の言い争いなど、何処吹く風のように長老達は右往左往していた。

そんな中、竜族の長老だけは眼を極限まで見開いた状態で俺の方を見据えている。

俺の横に居る唯一の味方である妖精族の長老も慌てふためいているそのとき、不意にミラの声が議場に響き渡った。

『亜人の長老達よ・・・私の声が聞えますか?』

ミラは声とともに光り輝く人型となって、俺の頭上高くに姿を現した。


「!?この神聖なる響き、あなたは神様であられますかな?」

『私は其処に居られる、ミコト様を守護する精霊の1人、光の精霊王』

「精霊王様!?」

『人間の姿であるミコト様を神と信じられないのも分かりますが紛れもなく、その御方は

我等精霊が守護する神で間違いありません』

「「「ははぁぁぁぁーーーーー!!」」」


先程まで言い争っていた、竜型亜人を除く3人の長老は驚愕の事実を前に椅子から転げ落ち、土下座のような格好で俺に頭を下げてきた。

散々俺のことを「たかが人間」と見下ろしていた長老達は掌を返したように謝罪の言葉を述べていた。


「恐れ多くも神様とは知らず、大変失礼な事を申し上げました。どうかお許し下さい」

『それでは主様、私は此れにて・・・』


ミラも長老達の表情から満足したのか、まるで何も無かったかのように姿が掻き消えた。

実は眼に見えないだけで俺の傍に漂っているんだけどな。


「失礼致しました。 神様、此方にはどのような御用件でいらしたのですかな?」


未だに固まっている2人の長老+妖精族の長老に成り代わり、竜族の長老が話しかけて来た。


「神様って言ったら固いイメージがあるからな、ミコトでいいよ」

「それではミコト様とお呼びする事と致します」

「う~ん、まぁいいか。 俺が此処に来た理由なんだけど、正式な神となるために各世界に居る精霊に合わなくてはならないらしくてな。 此処の結界が水の精霊に寄るものだと聞いたもんだから」

「そうですか、しかし神様とはいえど亜人ではない見た目は人間の貴方に、おいそれと聖域への扉を開くわけには参りません!」

「どうしてだ?」

「理由をお聞かせする前に一つお聞きしたい事があります。 ミコト様の存在は皆の者にはお話されるのですかな?」

「それは駄目だな。 要らぬ混乱を招く事になるからな」

「それでは尚更の事、簡単に通す事は出来ません」

「だから、如何して?」

「ミコト様も知っての通り、この大陸には我々亜人以外が近寄れぬように結界が施してあります。 同様に水の精霊様が住まうと言われている聖域にも、より強固な結界が施されております」


最初は何を言いたいのか分からなかったが、段々と気がつき出していた。


「此処まで言えばお分かりになると思いますが、神であると言う事を秘密にするという事はミコト様のことを普通の人間であると亜人達は思うわけです。 只でさえ結界に近寄る事が出来ない人間が此処に居ること自体、不思議なのに結界内に入ろうものなら、人間族の侵略と思われても仕方ありません」


確かに竜族の長老の言うとおりだ・・・。

水の精霊は俺が会いに行くことを望んではいるが、集落の亜人からしてみれば侵略行為以外の何者でもないだろう。


「私の言いたい事をお分かりになられた様ですね」

「俺は如何したら良いんだ?」

「まずは亜人達の警戒を解く事から始めねばなりませんので、ミコト様には暫く集落で暮らして頂きたいと思います。 幾期間過ごされれば、亜人達もミコト様の事を信用するでしょう」


こうして俺は神であるという事実を亜人達に知られないようにして集落で過ごす事となった。




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