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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
水の精霊編
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第98話 亜人達との出会い

お待たせいたしました。



難なく結界を突破した俺は暫く黄昏たそがれていた。

光の精霊王である、ミラの事を信じていないわけではなかったが、あまりにも呆気なさに固まっていた。

数分後、なんとか立ち直った俺は辺りを見回した。

亜人以外立ち入る事が出来ない北の大陸なのだから、当然の事ながら地図なんて物は存在しない。

ルゥに魔力の気配を感じ取って貰おうとも考えたが、大陸の至る所から強力な魔力を感じられるとの事で精霊の居る方向までは把握できなかった。

何時までも立ち竦んでいるわけにもいかない為、適当な方向へと足を進める事にした。

辺りに意識を集中しながら歩き続ける事、およそ30分。

ようやく明らかに人工である建造物が目に入ってきた。


「やっと亜人達の住む集落にたどり着いたか」


なんとか到着する事が出来た安心感からか周囲を警戒する意識が途切れてしまった。


(マスター、気をつけてください!こちらに何者かが近づいてきています)

(何だ!?敵か?)

(それは分かりませんが亜人達にとって、マスターは侵入者でしかありません。 注意してください)


ルゥと会話している間に空には弓を構えた羽翼族、周辺にはミノタウロスやケンタウロスが周りを取り囲んでいた。

まさに絶体絶命かと思ったとき、俺を取り囲んでいた亜人の一角から杖をもった、背中に蜻蛉とんぼのような羽根を持つ初老の男性が俺に近寄ってきた。


「そなたは人間ですかな?」

「長老、危険です。 お下がり下さい」

「そうです。 この者が何者なのか全く分からないのですよ?」

「静まれい!」


長老と呼ばれた初老の男性が一喝すると騒いでいた者が静まり返った。


「皆も知っておろう。 この大陸に展開されている結界は精霊に加護されし者のみが通り抜けられるという事を・・・。 邪悪なる遺志を持つものは結界に触れた時点で消滅し、只の人間であった場合は近づく事さえ出来ぬといわれている結界ぞ?」


長老の発した一言で亜人達は口々に『確かに・・・』と口ずさんでいた。


「それなのに人間が此処にいるのは何故か。 

まず第1に考えられる事は結界が破られたという事だが聖なる泉に異変が起こっていない事から、この考えは却下される。 

第2に誰かの手引きで結界を潜り抜けたと考える者も居るだろうが、その場合も加護を受けている亜人だけが結界を抜けられ、加護の無い人間は結界に弾かれる事となる。

最後に考えられる事は何らかの精霊の加護を受けし者という訳じゃ分かったか?」


長老の声を聞いた者たちは其々に会話し頷き合うと1人また1人と来た道を戻っていった。

そして最後まで残ったのは上半身が竜で下半身が人間という剣を持った亜人だった。


「お見苦しいところをお見せいたしまして、申し訳ありませんでした」

「お言葉ですが、正体不明の侵入者である俺に対して何故そんな簡単に信じられるのですか? もしかすると亜人達を皆殺しにするべく派遣された人間かもしれないのですよ?」

「先程も皆の前で申し上げましたが、邪悪なる遺志を持つものに対しては例外なく結界が反応し消滅させます。 それが何らかの対策を施された人間であっても同様です。したがって貴方が此処にいるという事実自体が貴方の正体を証明していることになるのです」


言おうとしていたこと全てが、まるで心を読まれたかのように発言されてしまった。


「では改めてお聞きします。貴方は何者ですかな?」


言い逃れ出来ない状況へと追い込まれ、素直に白状する事になった。

警戒して集まっている亜人達に聞えないように声を小さくして長老と呼ばれた初老の男性に声を掛ける。


「私の名はミコト。 光の精霊王に導かれ神になるべく、各種精霊で出会うため異世界を旅する者です。 此方の世界には水の精霊が存在すると聞き及び、参上した次第でございます」


俺は其れだけを言い、長老に頭を下げた。

が、剣を持つ竜型亜人は『戯言を!』と言って剣を突きつけてくる。

長老と呼ばれた初老の男性は竜人を手で制すと、俺の前へと近づいてくる。

暫く経過して下げた頭を元に戻すと長老が方膝をつき俺に対してこうべを垂れていた。


「恐れ多くも神とは知らず、失礼を働いたことを此処に謝罪いたします」

「こんな突拍子のないことを信じてもらえるのですか?」


何時までも跪いている長老を立たせ、訳を聴いてみることにした。


「確信できませんでしたが、貴方様の周りからは目には見えませぬが幾つかの精霊様の気配が感じられていました。“神”と仰られた事で私の考えが正しかった事を実感いたしました」

「俺が神であるという事実が明らかになると大騒ぎになることは目に見えているので、俺と長老との秘密にしておいて貰えませんか?」

「分かりました。しかし集落には私を含め4人の長老が居ります。 その者達にのみ事実を話すことをお許し下さい」

「その長老達は口は堅いほうですか?」

「仮にも部族を纏めし長たちです。 それは大丈夫かと」

「分かりました。 それでは俺と4人の長老だけの秘密という事でお願いいたします」

「心得ました。 早速ですが、長老会議を開きますので此方へおいで下さいませ」


俺は集落に向かう長老の後を追って長老達の住まう住居へと足を運んだ。

途中、『人間が何故此処にいる!』と言いたげな視線を終始浴びていたのは言うまでもない事だろう。


まぁ、そのたびに長老から言葉にならない厳しい視線が投げ掛けられていたのだが・・・・。



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