閑話① ミコトと出会う、少し前のセリア
第8、9話をセリア視点で見た内容になっています。
第8話の前書きにも書きましたが、8話での鬼畜なキャラが更にLvUPして登場します。
そういうものに嫌悪感を抱く方は見ないほうが良いかも・・・。
書いてる本人の作者も嫌悪感を抱くため、苛立たしい気分になっていました。
私はギルドDランクの魔術師のセリアと言います。
数ヶ月前にリンドとイラウと言う2人の冒険者に誘われてチームに加入しました。最初は冒険者たちと組めた事が運が良かったと思っていましたが日にちが経過するにつれ、リンドが本性を現してきました。
彼らは私の事を旅の仲間ではなく、荷物持ちや給仕などで私を酷使し始めました。
ただでさえ魔術師は体力が乏しいため、重いものを持って歩けないのに随時荷物持ちとして働かされました。
ある日、ギルドにて依頼を掲示板で選んでいた時の事・・・
「おい、俺達はDランクだから上位ランクの討伐依頼を成功させれば一気にランクアップできるぞ!」
・・・とリンドは何を言っているのでしょうか、普通の採取依頼でさえ、碌にこなせない素人の冒険者が討伐依頼なんて死にに行くようなものです。
「ねぇ、止めたほうが良いんじゃない?危ないわよ。」
「お前の意見なんざ聞いてねえんだよ!!人様に意見するんじゃねえよクソが!」
パーティーに誘ってくれた時は紳士かと思うぐらい優しかったのに・・・。
「おいリンド、これなら良いんじゃないか?」
私がリンドに罵られていた時、イラウが掲示板からB級の討伐依頼を剥がして持ってきました。
「お?ポークベア1匹討伐しただけでCランクに昇格じゃねえか!!」
リンドたちは戦ってもいないうちから、夢見心地になっているようです。
「おい!何をボケッとして居やがる!?さっさと準備して町の外に行くぞ!!」
「セリア、俺達の荷物持ってさっさと追いついて来いよ!!」
何時の間にか受付を済ませた2人は、自分達の剣だけを腰に挿して悠々と町の外へ歩いて行きました。
ギルドに残っているのは、私と3人分の薬草や食物が入っている9個の道具袋だけ。
私個人の装備品も当然の事ながら装備しなくてはならないため、体力のない魔術師なのに荷物持ちにさせられています。
かといってノロノロと歩いていてはイラウに口で罵られ、リンドに足で蹴られます。
やっとの事で私が草原に辿りつくと、其処にはポークベアと対峙しているリンドの姿が・・・。
リンドが剣を上段に構えた直後、ポークベアがイラウを跳ね飛ばし前方へと逃げて行きました。
「おいセリア、お前は魔法で援護するとか考えなかったのかよ!この役立たずが!!」
リンドは私の居るほうに向くと私の襟首を掴んで今にも殴りかかりそうな勢いでした。
「リンド!そんな屑に構っている暇は無いだろうが、さっさと奴を追うぞ!!」
「ちっ!分かったよ。セリア、次は無いと思え!!」
そう言うや否や、2人は全速力で逃げたポークベアを追って行きました。
既に疲労が限界に達していた私は回復魔法を自分自身に掛けながら必死にリンド達が走っていった方向に歩いていくと、リンドとイラウは大きな剣を背中に背負った見たことも無い黒髪の剣士に話しかけていました。
「・・・・・・・・が殺した奴かもしれんな。」
「倒したんか!?」
「少し戻・・・体がある・・だが。」
「すまん、案内頼めるか?」
「構わないが、今すぐか?」
「ああ直ぐだ。」
疲労のせいか会話が途切れ途切れにしか聞こえてこない・・・。
私が地面に手を突いてへばっているとリンドとイラウが前方へと歩き出した。
そんな・・・少しくらい休ませてくれたって良いじゃない!!
「セリア!何をしてるんだ、さっさと来いよ!!」
「ちょ、ちょっと待ってよ!この荷物重くて・・・ハァハァ」
「ホント、魔術師は体力がねえな。」
「ほら、さっさとしねえと日が暮れちまうだろうが!」
あんたたち、そう思うなら少し荷物持ってくれてもいいじゃない!?
「リンド、イラウもう少しだけ休ませてよ・・・。」
「しょうがねえな、セリアは後から追いついて来いよ!スイマセン案内お願いします。」
「ちょっと待て!仲間を置き去りにするつもりか!?」
へぇ~この黒髪の人、いい人じゃない。こんな人と一緒に冒険したかったな~~。
「いつものことですから。」
リンドの所為じゃない!!
黒髪の人は私の前にしゃがみこむと、次の瞬間には私はその人の胸元へと恥ずかしい格好で持ち上げられていた。
「え!?えっと・・・な、なんでこんな!?」
恥ずかしさで言葉にならない私は腕の中で暴れてしまった。
「あまり暴れるなよ。落ちるぞ?」
久しぶりに感じた人の温かさに感無量になった私・・・。
「・・・はい。////」
数分後、私を抱えているにも拘らず通常よりも早く現場に到着しました。
「確かにポークベアだな。イラウ、牙を。」
え!?ちょっと待ってよ貴方達、魔物を倒してもいないのに証明部位だけを持っていくつもりなの!?
「此れで俺達の討伐依頼は完遂だ!マルベリアに戻るぞ!!」
リンドは自分達の手柄にしてしまったようだ。リンドを見ていると私を抱きかかえている男性が小声で話しかけてきた。
「なぁ、あいつ等のやり方って認められるのか?」
こんな事を聞くって事は初心者の冒険者でしょうか?
聞かれたからには答えないと失礼に当たるよね。
「魔物の一部を持って帰れば、たとえ討伐して無くても判定で依頼を完遂したとギルドに容認されてしまうんです。」
「何か変な話だな。それにあいつ等はお前のことなんて、これっぽっちも考えてないみたいだぞ?」
「私もそろそろ見限ろうかと思っています。」
会話をした途端に疲れのためか安心感からか、黒髪の冒険者の腕の中で意識が途切れた私は気が付くと町の門の近くに居ました。
「え!?スイマセンスイマセン!寝てしまって・・・。」
その人は私を見て微笑むと、そっと地面に下ろしてくれました。
私はその方とともに町に入ると既に空は真っ暗になっており、先行していたリンドたちの姿は何処にもありませんでした。
ギルドは閉まっているのだから行き着く先は一つだろうと酒場に行って見ると案の定、2人は飲み食いしていました。
「お?セリア、やっと到着したのか。報酬で飲み食いしていたが、もう料理も金も残ってないぞ。」
「遅れてくる奴が悪いんだ。気にするな!」
そんな・・・私だって疲れているのに御飯さえ貰えないの?
次の瞬間、我慢が限界に来ていた私は大声で叫んでいた。
「もう我慢できない!私、このパーティー辞めさせてもらうわ!!」
「おぅ、お前の代わりなんて幾らでも転がって居るんだよ!不満があるなら辞めてしまえ!!」
その言葉を聴いた瞬間、目から涙が溢れ出し宿の部屋へと走って行き私は号泣してしまいました。
旅の疲れと泣き疲れからか、ベッドを涙で湿らせた状態で朝を迎えた私は宿の女将さんのレインさんに挨拶をしたあと、ギルドへと足を向けてパーティー離脱の事を受付のローラさんに話した後、リンド達の今までの悪事を暴露した。
「あいつら!そんな事をしていたのね!!」
「止めれなかった私も悪いのですから処分は如何様にも。」
「セリアは悪くないわよ!暴露してくれたセリアは寧ろ被害者だし罰則はなしよ。」
良かった~お金は持ってないから罰金なんて言われたらどうしようかと思ったわ。
そういえば黒髪の優しい方の事、ローラさんなら知っているかなぁ?
「あの昨日、私を助けてくれた黒髪の冒険者の方の事を何か知りませんか?」
「黒髪なら多分ミコトさんの事だと思うけど?」
ミコトさんか~~私もいつかミコトさんと肩を並べられるような強い冒険者にならなくっちゃ!
そのあと私はローラさんにミコトさんへの託を頼むと採取依頼を受けて町の外へと旅立ちました。
いつかまたミコトさんに出会えることを信じて・・・。