⭕ わらいもの 7
──*──*──*── 廊下
先生が[ 正面玄関 ]に在る下駄箱まで着いて来てくれる事になった。
先生が僕の隣を歩いてくれるから、朝みたいに生徒から嫌がらせをされる事はなかった。
当たり前に安心して廊下を歩けるって事は、こんなにも有り難くて幸せな事だったんだね──。
先生と話していて、幾つか気付けた事が有った。
下駄箱で誰かに背中を押されて転んじゃった知らせの意味は分からないままだけど──、[ 教室 ]へ向かう為の道順を神佛にお聞きする事を忘れて、廊下を歩いていた。
何時もと同じ最短ルートで[ 教室 ]へ向かって良いのか──、何時もと違うルートで遠回りをして[ 教室 ]へ向かうのか──って事をだ。
後は、廊下を歩く速度とか生徒が明らかに近付いて来ていると感じた時、どんな行動を取ったら良いのか──。
歩き続けたら良いのか──、止まった方が良いのか──、しゃがんだ方が良いのか──、走った方が良いのか──、右側じゃなくて左側に移動するのか──とか、他にも色々と神佛にお聞き出来る事が有った事。
[ 教室 ]に入る時、僕は普通に後ろの戸を開けて入っちゃった訳だけど、前の戸を開けて入るのか──、直ぐに入るのか──、誰かが来るのを待ってから入るのか──、神佛にお聞きする事も出来た筈だった。
僕はウッカリと人知で行動していたんだね。
ちゃんと神佛にお聞きして戸を開けていたら──、もしかしたら牛乳くさい雑巾が僕の顔に命中する事はなかったかも知れない。
全部、後付けになっちゃうし、今更な事では有るけど、明明後日からは同じ失敗をしない様に気を付けようと思う。
目には見えないけど、寄り添ってくれている神佛と同行二人して行動を出来る様に頑張ろう──。
何はともあれ、明日が第2土曜日で良かったと思う。
──*──*──*── 下駄箱
無慈悲さを感じる様な土砂降りな雨を見ながら途方に暮れている生徒達が、下駄箱で足止めを食らっている。
このまま濡れて帰るのか──、雨が止むまで時間を潰して待つのか──、迎えに来てもらえないか《 自宅 》へ電話を掛けている生徒もチラホラ居る。
今は共働きの親が多いから、学校に迎えに来てもらえそうなのは、お母さんが専業主婦をしている生徒くらいかな?
僕は靴を脱いで、長靴に履き替える。
気休め程度の事だけど、雨に濡れない様に靴をタオルにくるんでからビニール袋へ入れて、持ち手を縛った。
傘立てを見ると僕が持って来ていた大人用の傘が無くなっていた。
千晴
「 嘘でしょ!?
お祖父ちゃんの傘が無くなってるぅ!!
無くしたなんて知られたら──、こ…殺されるぅ~~~~!!!! 」
学校保健師
「 それは困ったね。
でも、無くした訳ではないから大丈夫だよ。
これは明らかに窃盗だからね。
不可抗力な事件だから、千晴君には何の落ち度も無いし、責任も無いよ。
傘立てに傘を置くのは当たり前の常識だし、悪いのは人様の傘を無断で持ち去った泥棒さんだからね。
厳しく罰せられるのは、傘を無断で盗んだ窃盗犯の方だよ 」
千晴
「 …………明らかに犯人は生徒だと思いますけど……窃盗犯は言い過ぎかも?? 」
学校保健師
「 人様の大事な傘を盗んだ “ いけない泥棒さん ” の事は校長先生に報告しておくよ。
お祖父さんから借りている大事な傘なら尚更だよ。
見付け出した犯人を全校生徒の前で晒し者にし、吊し上げないといけないからね 」
千晴
「 …………吊し上げはやり過ぎな気もするけど……。
でもでも、お祖父ちゃんの傘だから返してもらいたいです!
返してもらえるかなぁ…… 」
学校保健師
「 帰宅したら正直に事情を話したら良いよ。
話を聞いたら、千晴君に非が無いは一目瞭然だからね。
大目に見てもらえる筈だよ 」
千晴
「 うん…… 」
学校保健師
「 結果はどうあれ、折り畳み傘も大活躍が出来る訳だ。
神佛は凄いよね。
こうなる事を前以て見越しておられた訳だから── 」
千晴
「 そ…そうですね……。
僕もまさか傘を持って行かれるなんて予想もしてなかったし……。
想像力が足りないのかな…… 」
学校保健師
「 酷い雨だから視野も狭くなる。
車には十分に気を付けて帰るんだよ。
安全に帰路に着ける様、道順を神佛にお伺いしながら帰る様にね 」
千晴
「 はい!
先生、今日は有り難う御座いましたぁ! 」
学校保健師
「 また月曜日、会おうね 」
千晴
「 はぁい(////)」
僕は先生に手を振って[ 正面玄関 ]を出た。
ズブ濡れを覚悟して[ 校庭 ]を走って[ 正門 ]から出て行く生徒も居る。
神佛が教えてくれた手提げ袋の持って来なかったら、僕も全身ズブ濡れになりながら《 家 》へ帰る事になっていたかも知れない。
僕の《 家 》は両親が共働きで留守だし、お祖父ちゃん,お祖母ちゃんも《 碁会所 》へ行っていて留守だから、迎えには来てもらえないんだよね……。
仮に、お祖父ちゃん,お祖母ちゃんも《 碁会所 》へ行っていなくても、こんな酷い雨の中、迎えになんて来てもらえないよぉ~~。
お祖父ちゃん,お祖母ちゃんが風邪でも引いたら大変だもん。
一体誰が、お祖父ちゃんの傘を持って行ったのか分からないけど、傘だけでも戻って来てほしいなぁ……。
盗んだ生徒は、どうなっても良いですから、どうか傘だけは返してください、神佛ぁ~~~~!!
お祖父ちゃんに、定規で “ お尻叩き ” なんてされたくないよぉ~~~~。
◎ 訂正しました。
歩けって事は、─→ 歩けるって事は、