⭕ わらいもの 3
──*──*──*── 小学校
──*──*──*── 校庭
親切で優しいいっちぃとバイバイして[ 正面玄関 ]を目指して[ 校庭 ]を歩いていた間、ずっと最悪だった。
雲が1つも無い晴天の下で、僕は大人用の傘を持って歩いている。
長靴とカッパと折り畳み傘の入った手提げ袋を持って歩いている。
登校している学生達に笑われながら歩く羽目になっていた。
指を差されて笑われたり、抜いたばかりの草を投げ付けられたり、砂を掛けられたり、小石を投げられたり、野次を飛ばされたり……。
男子からも女子からも笑い者にされながら[ 正面玄関 ]に到着した。
大人用の傘を傘立てに置いてから、下駄箱の前で靴を脱いでいると、後ろから背中を押された。
バランスを崩して簀の上に転んだ僕を見て、男子や女子が面白可笑しくケラケラと笑う。
最悪だ…………。
何でこんな嫌な思いを朝っぱらからしないといけないの?!
皆酷いよぉ~~。
僕と目の合ったクラスメイトが居たけど、バツの悪そうな──明らかに関わりたくなさそうな顔をして廊下を駆けて行った。
ヨロヨロとしながら立ち上がった僕は、下駄箱から上履きを出して、履いてから脱いだ靴を下駄箱の中へ入れた。
廊下を歩いて[ 教室 ]へ向かっている間、悪口を言われたり、からわれたり、ぶつかって来られたり、通せんぼで邪魔をされたりした。
こんな仕打ち、最低過ぎるぅ~~~~!!
神佛は僕に何を教えたいんだろう……。
こんなに嫌な事を相手にさせて、悪行紛いな事をさせて、功徳の貯金を減らさせて迄……、僕に教えたい事って何なの??
嫌な事を使って教えるの、止めてほしいよぉ~~~~。
僕は3年生だから階段を上がって、2階に在る[ 教室 ]を目指して歩いた。
──*──*──*── 2階
──*──*──*── 教室
嫌がらせを受けながら何とか[ 教室 ]に着いた。
ガラッと戸を開けて[ 教室 ]に入ると目の前から何かが飛んで来て、顔面に当たった。
千晴
「 ぶへっ── 」
何か冷たいし、くっさい?!
顔に当たった “ 何か ” が、ボトッと床に落ちる。
床に目を向けると濡れた雑巾だった。
通りで臭い筈だよ……。
でも何で雑巾が飛んで来たんだろう?
あぁ……そうか、「 ナイスショットぉ~~★ 」なんて言いながら笑ってふざけている稻羽君が僕に向かって投げたからか……。
もう3年生なのに幼稚な事をして喜ぶなんて、頭の方は大丈夫なのかな?
病院に行って脳検査とかしてもらった方が良いんじゃないかな?
言わないけどぉ~~。
「 拾えよ、千晴ぅ~~ 」なんて、ニヤニヤした顔で梅浦君が言う。
「 千晴、めっちゃ牛乳くっさぁ~~~~ 」って、梅浦君とコンビを組んでいる西口君が言う。
へ……牛乳臭い??
床に落ちている雑巾を良く良く見てみると白い液体で濡れている。
もしかして──、態々牛乳を買って来て(?)雑巾に染み込ませてから、僕に目掛けて投げて来たって事ぉ?!
………………神佛ってば、子供に其処までさせるのぉ??
こんな事されて迄、“ 義を善意に解す ” なんて出来ないよぉ~~!!
小学3年生の僕にはハードルが高過ぎるよぉ、神佛ぁ~~~~。
ノリノリで嫌がらせをしてる3人を見て、“ させられてる ” なんて思えないよぉ~~~~。
僕には怒る気力も無ければ、文句を言って反抗する気力も無い。
僕は溜め息を吐いて首を左右に振った後、稻羽君,梅浦君,西口君をスルーして自分の机に向かう。
朝っぱらから幼稚3組の相手なんてしたく無いよ……。
机の上にランドセルを置いて、机の引き出しを開ける。
流石に引き出しの中に迄は────甘かった。
引き出しの中には僕の私物は入っていなくて、代わりに果物の皮が入れられていた。
登校して来てから入れたんだろうなぁ……。
果物の皮は未だシャキシャキしている様に見える。
小学3年生だよねぇ、此処迄するもんなの?!
僕は机の中から引き出しを出すと、引き出しを持ってゴミ箱へ持って行く。
もしかして、ゴミ箱の中に僕の私物を入れてる──なんて事は…………。
僕は引き出しを床に置くと、ゴミ箱のフタを取って中を確認してみた。
どの道、フタを取らないと引き出しの中に入れられている果物の皮を捨てられないからね。
ゴミ箱の中に右手を入れてガサゴソと探してみる。
幸いな事に、僕の私物は入れられていないみたいで安心した。
引き出しを持ち上げて、果物の皮をゴミ箱の中へ入れたら、軽くなった引き出しをロッカーに立て掛けて、ゴミ箱の上にフタを戻す。
引き出しを持って机に戻ったら、ランドセルの中からウェットティッシュを取り出して、汚れてしまった引き出しの中を拭き拭きする。
ランドセルからタオルを出して、引き出しの中を拭き拭きする。
神佛が[ 持って行け ]と教えてくれたウェットティッシュとタオルが役に立って有り難いけど、使わなくても良い状況だったら良かったのに──と思えて止まない。
使用済みのウェットティッシュはゴミ箱へポイするとして、神佛が[ 持って行け ]と教えてくれたビニール袋にタオルを入れた。
何故か中だけピカピカになった引き出しの中にランドセルの中に入れていた教科書,ノート,筆記用具を入れて、机の中へ入れる。
空っぽになったランドセルの中にビニール袋と手提げ袋を入れる。
神佛は手提げ袋を先に入れる様に教えてくれたから、手提げ袋の上にビニール袋を置いて、ランドセルのフタを閉めた。
未だ朝の会も始まってないのに、どっと疲れちゃったよ……。
はぁ~~~~[ 保健室 ]のベッドで6時間目まで寝たいよぉ~~。
窓から[ 校庭 ]を眺めながら、一連の好まない事象を通して、神佛は僕に何を教えようとされているのか──、僕に気付かせたい事は何なのか──、何を悟らせようとしているのか──、色々と悶々と考えていると女子に声を掛けられた。
大湊さんだ。
クラスで1番可愛くて男子が憧れる女の子。
稻羽君が片想いしている女子でもある。
「 大丈夫? 朝から大変だったね…… 」って心配そうな顔をして話し掛けて来るけど、全然大丈夫じゃないし、こんな嫌がらせを僕が受ける様になったのは、一重に大湊さんの所為なんですけどぉ!!
なんて事を正直に言っちゃうと、女子を敵に回しちゃう事になりそうだから、言いたい気持ちをグッと堪えて呑み込む。
僕って優しいよね??
大湊さんが本当に心から僕を心配してくれているのかは分からない。
だって、大湊さんは稻羽君の目の前で僕に告白をして来たとんでもない子ちゃんだからだ。
稻羽君の気持ちを知ってるのに態と目の前で「 私ね千晴君が好きなの。千晴くんも私が好きでしょ? 両想いだよ! 私と付き合ってくれるよね♥️ 」なんて笑顔で言って来るんだもん。
迷った僕は神佛に「 大湊さんと付き合っても大丈夫ですか? 」って聞いちゃって、小指がピクッて動いちゃったから、「 神佛から大湊さんと付き合うのは駄目って教えられたら、無理かな。ごめんね 」なんて返事しちゃったもんだから、大湊さんは泣き出して[ 教室 ]から飛び出して行っちゃったんだよねぇ……。
うん、僕が悪かったですぅ~~。
もっと別の言い方が有ったと思いますぅ~~。
自業自得って言うのかな。
こんな事になっちゃった原因は、大湊さんの告白を断っちゃった僕に有りますぅ~~~~。
次の日から、稻羽君,梅浦君,西口君が僕に嫌がらせをして来る様になったんだよね……。
想いを寄せてる大好きな大湊さんが、冴えない僕に振られただけじゃなくて、恥まで掛かされたんだから、片想いをしている稻羽君が面白く思う訳がないよね。
僕の断り方も悪かったけど、“ 神佛 ” を出した事が悪かったし、失敗だったかも知れない。
「 ヤベェ奴だから関わるの止めようぜ 」って、クラスにハブられて集団無視される方が幾分もマシだよぉ~~。
稻羽君に付き合わされる取り巻きの梅浦君,西口君も違う意味で大変だと思う。
お祖父ちゃんから教えてもらった “ 四知の法 ” を教えてあげた方が良いかも知れない。
前世から繰越した黒字の残高を今から減らし続けていたら将来どうなる事やらだし……。
信じてくれるかどうかは知らないけど、人間の力では変えられない絶対的な法則が大自然には存在していて、知らないまま生き続けるのは不幸な事だって思うから……。
態々親切に教える義理なんて、苛められてる側の僕には無いんだけどぉ~~。
神佛にお聞きしてみてから考えよっと──。
◎ 訂正しました。
3階に在る[ 教室 ]を ─→ 2階に在る[ 教室 ]を
聞いてみてから ─→ お聞きしてみてから