✒ おまけ 1 / 神佛に相談しながら打とう
──*──*──*── 囲碁教室
今日はプロ棋士の先生が一押ししている院生と対局をする事になって、御互いに向かい合っている。
僕と向かい合っている院生は女子で、中学生くらいだ。
僕は0組でプロ棋士の厳蒔弓弦先生から直々に指導を受けている。
とは言え、弓弦先生は本当に多忙みたいで、僕は殆んどをキノコンと一緒に打っている。
キノコンは教え上手で、分からない事は僕が理解したり納得が出来る迄、根気強く教えてくれる。
親切で丁寧で可愛くて──キノコンと触れ合えるのが楽しくて仕方が無いんだぁ(////)
実はキノコンにだけ、「 神佛にお聞きする事が出来る 」って事を話してある。
今ではキノコンと話し合った後、神佛にお伺いしながら物事を進める様にしている。
囲碁を打つ時も先ずは自分が打ちたい場所を神佛へ教えてから、打っても良いかお聞きをして、駄目なら何処に打つかをお聞きして打っている。
左手の人差し指と小指がピクピクと動くから、相手には気味悪がられたりしちゃうけど、神佛から閃かせて頂く為には霊観を高める必要が有るから、お伺いする事を止めたりは出来ないんだ。
時々神佛が教えてくれた場所に碁石を打たなくて、コテンパンに負かされちゃう事も有る。
ツケって大きくなって返って来るから気を付けなくちゃだ。
相手の女子が黒石で先手、僕は白石で後手になった。
相手から「 君は小学生低学年だから、ハンデをあげる 」って言われたけど、神佛にお聞きしたら〔 いいえ 〕って教えられたから、角が立たない様になるべく丁重に御断りしたんだけど──、相手の御機嫌を損ねて怒らせちゃったみたい。
女子の気持ちって難しいね……。
久賀瀬千晴
「 お願いします 」
御互いに挨拶を済ませると、相手の女子が黒石を盤上に打つ。
盤上にパシッと音が響く。
堂々として強気な打ち方だ!
カッコいい!!
僕も真似したいけど──、恥ずかしいから止めとくぅ~~(////)
対局が終わったらカッコいい打ち方の練習をしようと思う。
久賀瀬千晴
「( 天元に打っ来た!
僕は──彼処に打ちたい!
神佛、僕は彼処に打ちたいです。
打っても良いですか? )」
僕のお伺いに対して、左手の小指がピクッと動く。
〔 いいえ 〕の合図だ。
思いもしない場所が視界にバッと入って来た。
〔 彼処に打ちなさい 〕って教えられているんだ!
あんな所に打って大丈夫なのか今の僕には分からない。
でもでもでも、神佛が態々教えてくれている場所だし……。
久賀瀬千晴
「( 神佛、教えてくださった場所に打ちますか? )」
左手の人差し指がピクッと動く。
〔 はい 〕の合図だ。
僕は教えられた場所に白石を打つ。
相手の女子は如何にも意外そうな顔をして僕を見て来る。
「 何で? 正気?! 」って顔をしている。
僕もそう思ってるよぉ~~。
相手の女子が再び黒石を盤上に打つ。
打ちたい場所を見付けた僕は神佛にお聞きをする。
左手の小指がピクッと動いて〔 いいえ 〕の合図。
次も打つ場所が視界に入って来る。
神佛にお聞きすると左手の人差し指がピクッと動いて〔 はい 〕の合図。
神佛が教えてくれた場所に白石を打つ。
またまた相手の女子が意外そうな顔をして僕を見ている。
「 アンタ、本当に私より強い院生なの?? 」って顔をしている。
はっきり言って、自信は無いですぅ~~。
相手の女子が黒石を打つ。
僕は神佛にお聞きしながら打つ。
その繰り返しが繰り広げられる。
今回は悉く僕の打ちたい場所は〔 いいえ 〕って教えられちゃう。
神佛が教えてくださった場所に素直に打てば打つ程、相手の女子の表情が徐々に般若の様に変わって行く──。
こ…怖いよぉ~~~~!!
見学者
「{ おぃ、なぁ──。
あの小学生さ、顔色が悪くないか? }」
見学者
「{ 確かに!
今にも倒れそうな顔色してるよな。
このまま打たせて大丈夫なのかよ? }」
見学者
「{ 相手の子、小学生4年生になったばかりの子だってぇ }」
見学者
「{ えっ、そうなの?
可愛いから1年生かと思ってたぁ~~ }」
見学者
「{ 相手は中学生だろ。
1組で強い女子!
何で小4と打ってんだよ? }」
見学者
「{ 小4の子が黒石かな?
中学生が相手だし、劣勢なのは仕方無いわよね…… }」
見学者
「{ 中学生を相手に頑張ってるよな。
負けるのはしゃあない }」
見学者
「{ でもさ、何で優勢なのに険しい顔してるんだ?
余裕で勝てそうなのにさ }」
見学者
「{ 男の子、顔色が悪いね……。
対局が終わったら、水あげない? }」
見学者
「{ 冷えたタオルも用意しとく? }」
見学している院生達がヒソヒソ話をしてるぅ~~。
何を話してるんだろう??
相手の女子は険しい顔してるしぃ~~~~。
初めて神佛が僕の打ちたい場所に〔 いいよ 〕って言ってくれた!!
やったぁ!!
ついつい嬉しくて笑顔になっちゃったよぉ~~(////)
僕がウキウキしながら白石を打つと、相手の女子の両目から涙が溢れたのが見えちゃった。
僕には何で泣き出しちゃったのか分からない。
両手で両目を拭いている。
久賀瀬千晴
「 あの……大丈夫ですか?? 」
僕はオロオロしながら声を掛けるしか出来ない。
相手の女子
「 ………………く…悔しい……!!
小学生に負けるなんてぇ~~~~~~!! 」
久賀瀬千晴
「 えっ??
勝負…付いたの??
え……?? 」
相手の女子
「 ……………ありません…………投了です…… 」
久賀瀬千晴
「 え…………あ……有り難う御座いました…… 」
相手の女子
「 小学生に指導碁を打たれるなんて、こんな屈辱は初めてよぉ~~~~!! 」
相手の女子は椅子から立ち上がると泣きながら《 囲碁教室 》の1階から出て行ってしまった。
「 指導碁を打たれるなんて 」って、どういう事だろう??
そう言えば、何処に打つかばかり考えていて、盤上を把握してなかったかも……。
僕は改めて盤上に並べられている棋譜を見た。
黒石が劣勢で、白石が優勢なのが一目で分かる。
確かに白石は黒石を導く様に打たれていた。
久賀瀬千晴
「 ………………僕が中学生に指導碁を打っちゃったの?? 」
実際には僕じゃなくて神佛になるんだけどぉ~~。
でもでもでも、そんな事は言えないよね。
仮に言ったとしても「 頭がオカシイ 」って言われたり、キチガイ扱いされたり、精神病院へ連れて行かれちゃうかも知れないしぃ~~~~。
唯一、僕が自分の意志で打ったのは最後の黒石だけで、残りの黒石は全部神佛が選んだ場所だ。
これって “ ズッコ ” って言うのかなぁ……。
見学してる先生達や院生達には、僕が打ってる様に見えてる訳で──。
これってまるで囲碁漫画の主人公みたいだ!
僕には囲碁の強い幽霊は憑いてないけど──。
僕の場合は神佛になっちゃうけど……。
お祖父ちゃん,お祖母ちゃんも僕みたいに神佛にお聞きしながら打ってたのかな??
それでプロ棋士になれたのかな??
何で今まで気にしなかったんだろう??
厳蒔弓弦
「 千晴、疲れてないか 」
久賀瀬千晴
「 弓弦先生!
大丈夫です(////)
中学生に勝っちゃいました…… 」
厳蒔弓弦
「 そうだな。
見事な指導碁だ。
キノコンも喜んでいるぞ 」
久賀瀬千晴
「 てへへ…(////)
まさか、指導碁を打ってたなんて気付きませんでした(////)」
厳蒔弓弦
「 千晴の実力が知られてしまったな。
これから周囲が騒がしくなるだろう。
キノコンが千晴の護衛兼警護をしてくれるそうだ 」
久賀瀬千晴
「 キノコンが? 」
厳蒔弓弦
「 記者を追い払ったり、危険から衛ってくれる。
安心して暮らすと良い 」
久賀瀬千晴
「 はい(////)」
今日からキノコンと過ごせるって事ぉ??
嬉しいよぉ~~(////)
薔薇色の人生が始まっちゃうって事かな♥️
盤上の棋譜を記録したコピーをキノコンがくれる。
碁盤には先生達や院生達が群がっている。
何か凄い騒ぎになってて怖いよぉ……。
「 神佛は凄いエリ 」って、キノコンが小声で言ってくれた。
神佛の御蔭だって言ってくれるのはキノコンだけだよぉ~~(////)
僕は嬉しくて、キノコンに抱き付いちゃった♥️




